水月昭道のレビュー一覧
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【制度に乗れたか否か】
高学歴貧困女子とそうでない人の違いは何か。「制度」に乗れたか否か、この一点だ、と。乗った人は、それがコネであったとしても自分の実力と考え、乗れなかった人は仕方がない理由をこじつけられる。
何も女子に限ったことではないのでは、とも思うのだが、しかし女子教育という制度がまた、女子をある枠に当てはめようとする。高学歴はあるとき場違いにもなり、ますます居場所が狭くなっていく。
高学歴貧困になるかもしれない娘を持つ身としては、冒頭からしばらく続く愚痴というか弱音というか、喜べないそれにジットリとした気持ちで読み進める。
救いがない。
最後の「アート系高学歴女子のなれの果て」 -
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ここで出てくる高学歴とはAランクの院生。40近くになっても非常勤講師等の不安定且つ低所得の女性達。特に人文・社会系を専門としている女子は理系と比較して教授への道は絶望的であり、なのに多くの女性は理系にいかずに・・・(ま、理系にいっても厳しいんだが)
娘2人をもつ私とすれば間違っても『パパ、あたい言語学者になるでー!』なんて言い出したら死にたくなるような悲しい現実。ま、ビッチだから心配ないわw
で、一番印象に残ったフレーズが
『磨き過ぎた女子力はもはや妖刀である』
磨き過ぎた女は、自分はもはや抜き身の刀が持つ妖しい光しか放っていないことに気付いていない・・・・
あっ、そういえば私の同級 -
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ネタバレ「高学歴ワーキングプア」の作者監修の高学歴シリーズ第2弾。
非正規(非常勤講師)となってしまい不安定極まりない環境におかれ、研究上、職務環境上、生活上問題を抱える女性高学歴研究者の内状が大変勉強になった。
私も女性ではないが、元高学歴ワーキングプア状態を5~6年経験したものから言わせていただくと
「事実は、ご縁とタイミングが良かっただけある。しかし、専任教員になった人間は決してこのことを認めたらがない。」(p43)
これに関しては同意できませんね。特に私のまわりにいる人々(研究者)は不遇の期間が長かろうが短かろうが皆さん同じように「ご縁(運)とタイミングだよね!」って言ってます。
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女で未だテニュアのないPDの研究者(のたまご)である私は、まだ「実力があればテニュアは得ることができる」という理想世界を信じている方です。
でもたとえ今後テニュアという特権を得たとしても、それを自分の実力のおかげだと正当化して得られなかった人を仕方ないと考えるような、排除の論理を振りかざさないようにしたいと改めて思いました。
あと、今のように私が非常勤の立場を楽しめるのも、今は一時的に学振のおかげ、そしてそれが切れたあとも楽しめるとしたら、旦那や比較的余裕のある実家の存在や自分が女であることの「おかげ」であり、それは裏返せば自分の首を絞める甘い蜜であることを再確認しました。 -
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大学院博士課程を修了しても仕事がない、そんな人が多いらしい。修了したあとの正規雇用への就職率がだいたい半分くらいと、半数の人しか就職できず、残りの人たちは一時的にフリーターとして働かざるを得ない。そんな状況であるらしい。
博士課程とは、学部を卒業したあと修士課程として2年間勉強し、それが終わったあとに始まる課程(最低3年間)である。博士論文を提出し修了すると、○○博士との肩書きがつく。
こんな何年間も勉強ばっかりして研究してようやく終わっても、半分の人には就職先がないというのは酷な話だ。
なぜそんなに就職先がないか。
就職先の一つとして大学の助教授、准教授、教授へと続く道を考えた場合だが -
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大学院重点化というのは、文科省と東大法学部が知恵を出し合って練りに練った、成長後退期においてなおパイを失わん都執念を燃やす"既得権維持"のための秘策だったのである。
折しも、九〇年代半ばからの若年労働市場の縮小と重なるという運もあった。就職難で行き場を失った若者を、大学院につりあげることなどたやすいことであった。若者への逆風も、ここでは追い風として吹くこととなった。
成長後退期に入った社会が、我が身を守るために斬り捨てた若者たちを、これ幸いとすくい上げ、今度はその背中に「よっこらしょ」とおぶさったのが、大学市場を支配する者たちだった。
先輩が研究室においていった本。大学経 -
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博士号を取ってもなかなか就職先が見つからない先輩。
やたら大学院進学を勧める教授陣。
コネで論文をアクセプトしてもらう人。
研究ってもっと純粋なものだと思っていたのに、大学で見た現実は少し違った。
もちろん純粋に社会貢献や真理追及を目指す人はたくさんいるのだが。
疑問を持ちつつこの本を読むと、がっかりした。研究と教育の場にそんな事情があったのか、自分が食べていく為のビジネスだったのか、と。全ての教員がそうだとは思わないが、そんな人もいる、という現状を大学院進学前に知っておくにこしたことはない。「先生」という立場の人の言葉を信じ、勧められるまま大学院に進学する人もいるだろう。その前に一度、現 -
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博士号を取得しても大多数の人が正規の就職を得ることができない。それは、大学教育機関の仕組みそのものにゆがみがあるからである、という主張の本。日本という国の国益を考える際、技術や知識に優れる博士号取得者を量産し、彼らに適切な仕事をしてもらう、というのはとても合理的なことだと思う。しかし、量産するだけして、生活を保証するようなまともな仕事はないといういびつな構造になっていることにはっとさせられる。そのことに気づけたのは本書を読んでよかった点である。第一部は上記のような感じなのだが、第二部からちょっと語り口が変わってしまったような気がする。まるでお坊さんが説法するかのようだ。「ご縁」という言葉が多用