以前(今から2年前の2015年)古館一郎氏がキャスターをしていた報道ステーションに出演していた「古賀氏」によって書かれた本です。日本についても問題点が、7章に分けて述べられています。
日本のメディア(新聞、テレビ)の問題点については今までに他の論者からも聞いていたものでしたが、私にとって一番印象に残ったのは、第五章の内容でした。
エコカー制度の導入は、その対象者が9割以上になってしまうような、事実上の自動車業界を守るためのような制度であった、電気自動車時代に活躍するであろう「3Dプリンター」において、さらに電気自動車時代を見据えた法整備において、欧州や中国・インドよりも意識が低い点を指摘している部分でした。今まで「日本は素晴らしい」と主張している本を読んで良い気持ちになっていた私に冷や水を浴びされたような感じを受けました。
東日本大震災に続く原発停止、計画停電等の騒ぎがありましたが、原発が止まっていた期間、停電騒ぎもないように記憶していますが、本当に原発を再開・拡大していく必要があるのか、真剣に議論すべきなのだと改めて思いました。
以下は気になったポイントです。
・イスラム国が問題にしたのは、イスラム国と戦う周辺国への支援である、軍事的意味合いのある支援であるかのように発言した(p40)
・自民党の失敗は、1)900兆円超の借金大国にした、2)少子高齢化を放置して社会保障基盤を危うくした、3)原発安全神話をつくり福島事故を招いた(p42)
・安倍総理は、公務員改革を封印した。政府系金融機関のトップを民間人から、財務・経済産業省の次官級OBの天下りポストに戻した、政権協力のため。以前は、日本政策投資銀行・商工中金・国際協力銀行・日本政策金融公庫のトップが民間人であった(p50、117)
・国民はバカであるという法則、1)ものすごく怒っても時間がたてば忘れる、2)他にテーマを与えれば気がそれる、3)嘘でも繰り返し断定口調で叫べば信じてしまう(p57)
・人間については、性悪説でも性善説でもなく、性弱説があてはまるだろう。どんな人間も普段はおおむね正しい判断をしているが、自分の損得がからんでくると、それが難しくなる(p65)
・日本外国特派員協会での記者会見では、古賀氏の講演に真剣に耳を傾け、メモを取り、まじめな記事を書こうという熱意が伝わってきた、彼らは日本の報道の自由に対して強い危機感を持っていた、ジャーナリズムとは報じられたくないことを報じるもの、それ以外は広報(p86、99、112)
・日本における政治とメディア(特に、テレビ)との関係には日本独自の事情がある。テレビ局は総務省の管轄下にあり、放送事業を行うために総務省からの免許を受けている(p103)
・新聞への消費税軽減税率の適用は決まっていた、しかし常に政府に弓を引いている雑誌、夕刊紙の日刊ゲンダイは対象外(p105)
・いまや政府批判を堂々とできる番組は、TBSの報道特集、サンデーモーニングのみとなった、TBSの社長は、テレ朝・日テレ・フジと異なり、安倍総理と会食していない(p148)
・憲法改正の3分の2を取れないのであれば、憲法改正の発議に必要な両院議員の3分の2の賛成という憲法96条の改正要件を変更することを考えたが、国民にその意図を気づかれて止めた(p151)
・機雷除去は、国際法上の「武力行使」に当たる、機雷を敷設した国がこれに反撃する可能性がある(p181)
・緊急事態の場合は、閣議を開くまでもなく、最少4人の大臣(総理、官房長官、外相、防衛相)で審議できる(p198)
・ドイツでは、高い人件費を払っても儲かる仕組みへ転換を進めた、人件費だけでなく労働条件も向上、労働時間も非常に短くなった(p231)
・電力小売り自由化を行ったが、発送電分離をしていないので、自由化から1年経過しても5%程度の乗り換えしか生じていない(p245)
・ビジネス環境ランキングで日本の順位が低いのは、経団連加盟の大企業の支援が中心、ニュービジネスの起業や中小企業の事業環境整備への支援には無策であるから(p256)
・欧米では1990年以降、複雑な部品の製造方法を根本から変える3Dプリンターの開発競争が激化した。2010年代になると一気に花開き、エンジン重要部品もGE社では3Dプリンターで製造可能となる。部品点数も削減でき、耐久性向上・コストカットも期待可能。穴あけ・切削・溶接・旋盤加工(日本産業の強み)が不要となる、工作機械産業も不要となる可能性もある(p261)
・2016年度までのエコカー減税は、新車の9割を対象とするもの、平均よりも燃費が悪いものでも「エコカー」として減税措置を受けている。これにより各メーカーによる天下り官僚受け入れが行われた(p265)
・カリフォルニア州では州内の年間販売台数が6万台をこえる大手メーカーに対して、一定比率を排ガスゼロ車にするか、できないか罰金を支払うという厳しい規制をしてきた。2018年からは2万台以上に拡大し、マツダ・富士重工も対象。排ガスゼロ車の対象からは、ハイブリッドは外すので、EVかFCV、プラグインハイブリッドが必要、テスラは最近3年間で年2億ドル近い利益をクレジット販売で稼いだ、トヨタは2015年からクレジット買い手に転落(p266)
・欧州でも燃費規制を強化、中国も同様、いまでは中国はアメリカを抜いて世界最大の電気自動車大国となった、BYDと北京汽車の伸びが大きい。(p268)
・自動運転は、自動車製造ではなく、通信情報という異分野の技術が核となる、グーグル・アップル・マイクロソフトが主要プレイヤーが登場する。カーシェアリングでは、ウーバーが参入することで、自動車産業の在り方が根本的に変化する(p271)
・2016年11月に、トヨタが事実上の敗北宣言を出した、量産体制を整えた上で2020年までにEV市場に本格参入することを検討するとした。本命は燃料電池車と公言してきたので(p275)
・農協には、農家である組合員と、農家ではない准組合員がいて、その方が多い。この准組合員を対象にした金融・保険事業の収益が本来の収益よりもはるかに上回っている。なので、准組合員の利用に制限をかけることには大反対した(p280)
・現在の電力はジャブジャブに余っている、その原因は省エネである。事故前から2015年度まで、12%も減少している(p300)
・2016年4月から始まった電力小売化の自由化に合わせて、大手電力は新料金体系を発表した、省エネ促進のために電力使用量が大きくなるほど電気代の単価が上がる仕組みになっていたのを、新料金では逆にした。つまり余っているのでもっと使ってほしいとしている(p304)
・原発の避難計画を審査したら、日本中の原発が稼働不可能になるので、避難計画を規制から外した(p339)
・2016年3月の、エネルギー供給構造高度化法の改正において、非化石電源比率(原発+再生可能エネルギー)を44%とすることを義務付けた。再生エネルギーが伸びないときは、原発を増やせるようになった(p361)
2017年7月16日作成