正直に言えば事前に障害がある少年の話と聞いて「お涙頂戴ものか」と批判的に構えていた。
内容は1人の少年と彼を取り巻く家族や友人の群像劇である。
やや最終章ありきの強引さやまとまりのなさを感じるが物語として程よい読後感がある。
子ども達は子ども達の世界で傷つきながら成長していく。いや成長というのは大
...続きを読む人が自分の経験と重ねて決めつけているものであって、私たちと同じように、その時その時でのどうなるか分からない不安な中での判断の連続に過ぎない。ただ大人はこうすれば安パイという振る舞いを経験的に知っているだけだ。それゆえに安パイから外れたことが起こった時、大人というロールから外された時、彼らは…私たちは脆くも崩れていく。
人であることに大人も子どももない。そう感じさせる。
最終章。彼の選択が正しいのか、そうすべきことなのか、それでいいことなのか、誰にも分からない。守る星と信じたものがものの数ヶ月で変わり得ることを私たちは知っている。堅く誓ったことごとが社会の残酷さの中でいとも簡単に打ち砕かれることを私たちは知っている。
それでも、私たちは信じたい。その信じたい思いに年齢もロールも関係がない。信じること、傷付きながらも信じたいと思うこと、とりあえずでも信じて意思決定すること、そしてまた裏切られること。
人の業と言えるかもしれない。しかし、そこに美しさを感じるのも、また人なのだろう。