高樹のぶ子のレビュー一覧

  • マルセル

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    新聞記者の娘が父の遺したノートから自分のルーツを辿っていく。
    ロートレックのマルセルにまつわる物語。
    ミステリー仕立てで謎めいているので私には読みにくかったが、力作であることはまちがいない。
    絵画の真贋をめぐる話としては原田マハの『楽園のカンバス』もおもしろかったが、この作品もテーマは同じだ。

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    2012年05月04日
  • トモスイ

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    トモスイってなんだー??
    手に取ったきっかけは、週刊ブックレビューを見ていて高樹さんご本人がこの本について、語られているのを見たからです。
    思えばその時は、亡くなられた児玉さんが出ていらっしゃいましたね。
    アジアを旅して書かれた短編集だからか、どの作品も湿度が感じられました。
    トモスイってSFに出てきそうですね、、私も吸いたい!

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    2011年10月11日
  • トモスイ

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    『作家、髙樹のぶ子が九州大学アジア総合政策センターの特認教授として、五年の歳月をかけアジアの十カ国を訪ね歩いて各国の作家や市井の人々と交流し、その成果を様々なメディアを通じて発信するというプロジェクトSIA(Soaked in Asia)の記録』、『アジアに浸る』からできた短編集、『トモスイ』。
    『アジアに浸る』はどうも中途半端な印象をうけて、あまり好きではなかったのだけれど、SIA(Soaked in Asia)の活動からうまれたこの作品は、まったく違うものとなっている。


    全体的に、死のイメージがつきまとう。

    現実と虚構。
    現在と過去。
    死者と生者。
    相対立するふたつの存在が1つの短編

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    2011年08月19日
  • トモスイ

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    年間で10カ国を訪ねるたびに書かれた短編集。 どの短篇も予想通りアジアンな熱気や湿度を醸し出す。 喪失感や孤独感を書いているものもあるけど、どれも前向きな力があって暗くはない。女性の持つたくましさ、しぶとさが見え隠れする。 とはいえ、お話のテイストはさまざまだ。 予想通り、短篇「トモスイ」は川上弘美に近い。 とらえどころのない漂うおかしみって好きだ。 旅情や思慕が立ち込める「ジャスミンホテル」、「芳香日記」は円熟した女性の書き手らしい話だ。 静から動への意外な結末の「投」もいい。 土砂降りの台風の映像が浮かんで印象的なのが「天の穴」。この本の中での私のベスト。福岡の話だしね。 あ、今気づいたけ

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    2011年08月06日
  • トモスイ

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    「トモスイ」って何?と思って手に取った1冊。冒頭に据えられているが、不思議で官能的な作品。川端康成文学賞受賞というのも頷ける。
    アジア10か国を訪ねた際に書かれた10編の作品集。あとがきにも書いてあるが、重いどろどろしたものと突き抜けた境地の作風とが半々。命の狭間でのできごとが綴ってある。

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    2011年05月09日
  • 光抱く友よ

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    09/8/05〜09/8/16    ゆっくり読んだ。「光抱く友よ」が一番鮮烈な印象。(読んでいて、灰谷さんの、『少女の器』を思い出した) でも好きなのは、「揺れる髪」。

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    2009年10月12日
  • 光抱く友よ

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    外見的には取り立ててとりえがないけど、知性があってかつ温厚な父親と家庭的な母親に包まれて幸福に暮らす主人公。
    彼女の同級生である、アル中の母を抱えて貧しい中生きている、美人で早熟な松尾。その二人の友情物語。
    こういう、間に男性登場人物を介在しない、「女の友情モノ」って、意外と見たことないですね。距離を詰めるとお互いが傷つく。あのあと二人が並んで語り合うことはもうないのでしょうし、「心通い合う友」にもなれなかったわけですが、けれど二人の心の一番深いところは、一瞬確かに重なり響きあったのだと思います。ラストを読んでいるときはもう涙目でした。
    この作品だけなら間違いなく★5なのですが、同時収録の母娘

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    2009年10月04日
  • 光抱く友よ

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    タイトルにひかれて手に取った。
    表題作「光抱く友よ」は優等生の涼子と不良の松尾、全然違うタイプの出会いと別れ。ずっと涼子のほうが追いかけてたし好きって言ってるし恋愛でなくとも二人の関係は特別。でもハッピーエンドにはならない。そこがよかった。
    全体的に昭和ノスタルジックだが、本筋はそれを気にせず読める。表題作が1番好みだった。

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    2023年01月20日
  • 光抱く友よ

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    今は離れてしまった郷里防府の地が舞台だ。作中、郷里の情景描写が巧みで味わいがあった。
    そして女の友情の物語、作者は二人の女子高生に限りない優しさをもって描いている。大学教授を父に持つ相馬涼子は早熟の不良少女松尾勝美に言う。「うちは、なんで松尾さんみたいな皆がよく言わんひとに近づいたのか自分でもわからん。ただ松尾さんは、これまでの十七年間、うちの心がきちんと片づいとったところを引っくり返したんよ」と。青春の中での友人の位置をどのように評価しているか作者の心中を推し量れる。

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    2022年11月09日
  • 私が愛したトマト

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    不思議なお話。世にも奇妙な物語。
    現実から、いつの間にか妄想、非現実の世界へ足を踏み入れている。
    ゾッとする内容なのに、澄んでいてきれいな文章。
    全てにおいて不思議な感覚。

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    2022年09月23日
  • 明日香さんの霊異記

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    奈良、薬師寺に勤める女性が主人公で、不可解な出来事の謎解きをしていくという歴史ミステリー好きとしてはわくわくする設定。日本霊異記に謎解きの鍵があるというのも面白いのだが、主人公のバックグラウンドに物語性が強いためか、短編形式で話の移り変わりが早いからか、あまり読んでいても埋没できなかった。情報が多すぎて感情移入しにくかったので、一冊かけて一つの謎を解く、という感じだったら面白かったのかなとも思う。

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    2022年05月16日
  • 私が愛したトマト

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    ネタバレ

    11の短編。

    家族写真に昔から写っている火鉢。
    火鉢はどこからやって来たのか、記憶と心の冒険。

    老人の妻と老人を殺して崖に落としたこと。

    アラスカの自然と厳しい土地で、
    かつて冒険の途中で死んだ英雄たちの姿を見るとき。

    散歩で出会った蝉の幼虫にこめられた怨念。

    ポンペイの発展した街と火山灰で消えた闇。
    あの赤に染まった椅子と儀式。

    思い出にはトマトがそばにいた人生。
    一つ一つそれらを思い出しながらトマトを育てる老女。

    彼との別れで行ったベネチアリド島で買った蜜蜂とバッタの置物。
    30年を経て2つの置物の再会。

    病気で入院している少女に渡された蚕。
    繭に包まれた温かな世界とこの世

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    2020年12月27日
  • 明日香さんの霊異記

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    久しぶりに高樹さんの作品を読んだのだが、こんな元気なヒロインは初めて。高樹作品をそれほど読んでいるわけではないので実際のところは分からないが、解説にも新鮮な作品のようなことを書いてあったのでやはり珍しいタイプなのだろう。

    奈良の薬師寺で働く明日香は地名オタクで説話集の『霊異記』が愛読書、さらに懐いているカラスに編纂者の景戒の名を付けるほどハマっている。
    そんな明日香に次々奇妙な事件が起こる…。

    『母は殺された』という不穏な絵馬、『日本霊異記』に奇妙な書き込みを残して失踪した少女、落雷事故で父を亡くした少女の奇怪な言動などなど。
    まるで『霊異記』をなぞるような展開だったり、ヒントを与えるかの

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    2020年08月25日
  • 明日香さんの霊異記

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    ネタバレ

    『日本霊異記』が愛読書で地名オタクの明日香さん。奈良を舞台に、現代に起こった不思議な出来事を千二百年前に起こった出来事と重ねて、その謎を解く。『日本霊異記』のことも少し知れて、筋書きとしては面白かった。が、オカルト寄りになったり、恋愛も絡めてライトな感じ。主人公が同じ若い女性でも、北村薫の『空飛ぶ馬』シリーズの「私」とは全然違う。そこが私の好みと異なり、ちょっと残念。せっかく筋書きが面白いのにもったいない気がした。

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    2020年07月04日
  • 明日香さんの霊異記

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    ちょうど奈良に興味を持っていたので面白かった。
    話によって好きな話とそうでないものと少し差はあるけれど。

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    2020年06月13日
  • 飛水

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    美しい文章にその情景に取り込まれる
    風景描写がすごい
    水や風の音やにおいまでこちらに
    恋愛、すごい恋愛
    家庭のある男女、死別、そして40年
    小説の視点が分かってハッとなる
    たおやかで強い女性

    ≪ 忘れない それが復習 運命の ≫

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    2019年09月21日
  • トモスイ

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    いろんなものが在りすぎて、何も知らないままでもいられるインド。あらゆるものが諦めを迫ってくる国。
    (P.155)

    「思い出すためには、忘れる必要があるけれど、忘れたことがないので、思い出すことが出来ない」
    (P.172)

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    2019年09月05日
  • マルセル

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    1968年、日本で起きたロートレックの名画『マルセル』盗難事件。新聞記者だった父が事件を追い続けていたことを、遺された父の取材ノートから知った千晶は、未解決の謎を辿り始める。
    死ぬまで執着したこの事件を通して父を理解するため。
    「死んだ」と聞かされていた母を探すため。
    自らも新聞記者となった性から、未解決事件への興味。

    ただ単純に『マルセル盗難事件』について描かれた作品と思い読み始めたけれど、どちらかというと父・母を追い求める娘の物語という面が多いのかも。
    最後には、盗難事件が大きな組織犯罪へも繋がってくる。
    「あれ、ここで終わっちゃうの?」感も残るけれど、この先を続けるとなると上下巻の分量

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    2019年02月21日
  • 光抱く友よ

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    全体的に昭和のノスタルジーを感じました。木造校舎のにおいがしそう。
    『光抱く友よ』おとなしめの優等生涼子と出席日数不足で一年遅れの不良少女松尾の女子高生の友情物語。心理描写が細やかで繊細にていねいに書かれていて、でもくどくないところがいいですね。ハッピーエンディングではないけどしんしんと切なさが染みてきて余韻が残ります。『揺れる髪』母と娘がすれ違った後で和解する話。かえるのエピソードはちょっと気持ち悪い。母親がヒステリックに感じるところがあったけど丸く収まったのでほっとしました。でも普通あんなこと言われたら子供は傷つく。この親子この後も大丈夫なのだろうか?『春まだ浅く』心から惹かれ合いつつも結

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    2017年11月12日
  • トモスイ

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    ネタバレ

    アジア10ヶ国訪問をきっかけとした短編。

    タイ、小舟でトモスイを吸いながら交じり合う。
    台湾の離島、海の中、時計。
    フィリピン、台風の目を見たとき。
    マレーシア、写真と娘との記憶。
    韓国、日本との歴史と唐辛子の思い。

    上海、そっと盗み見てしまう老人と金魚。
    モンゴル、高原な大地、子供だけの村。
    ベトナム、かつて起きていた戦争。
    インド、亡くなった同級生、ニーム。
    バリ島、弟を思って、香りに包まれる。

    不思議な世界で、今はもういない人たちを思ったり
    その土地の雰囲気)^o^(

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    2016年09月18日