高樹のぶ子のレビュー一覧
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アジアを題材にした短編集。
これはかなり好みが分かれる様だ。私は結構好きだった。特に「トモスイ」は初っ端からかなり癖の強い (文体はかなりあっさりなのだが) 作品なので、ここで分かれそう。こちらは第三の性に寛容なタイからインスピレーションされた作品。トモスイの描写はちょっと気持ち悪い感じはある、なんだか第三の性というかもう融合性ですよね。トモスイというのは筆者の作り上げた空想の生き物だが、明らかに性的。
他作品も非常に個性的。前半は常に「水」がキーになっている。また刹那を思わせる作品のように感じた。後半は「存在のしない者」と幻想・夢のような世界観。なんとなく仮想の世界観が宮沢賢治っぽいとも思っ -
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ネタバレ【美しさと緊張感が漂う女性同士の関係を描く名作】
大学教授を父に持つ、ごく普通の家庭で育った優等生の相馬涼子。一方、アル中で障害を抱える母親を持つ、不良少女の松尾勝美。二人の女子高生が微妙な距離を保ち、緊張感を持ちながら淡い友情を重ねていく過程を美しい文体で描いた『光抱く友よ』。美しい文体ながらも、学校でも、家庭でも緊張した空気を感じる。
淡くも儚い友情に終わる2人の関係だが、涼子の心境の変化がひしひしと伝わる。また、松尾と母とのやり取りにも緊張感が漂うが、母親に対する松尾の優しさも垣間見え、女性とは不思議なものだと考えさせられる。高樹のぶ子が芥川賞を受賞した作品ということで読んだが、彼女 -
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1968年12月といえば 何といっても府中の3億円事件。 個人的には地元だったので、もうその話題ばかりで このマルセル盗難事件が起きたなんて少しも知らなかった。毎日新聞連載中は 1-2回読んでみたことがあったけど 途中だったので良く分からなかった。やはりこの事件が1968年の 同じ窃盗事件で未解決で事項を迎えたという事を知った時に、無性に読みたくなった本。この著者の書物は初めてだったが、すんなりある懐かしさを持って入ることが出来た。
最後までミステリアスで あのダビンチココードを思わせるような係累探しも
興味深い。またロートレック展で マルセルに日本に来てほしいな.... -
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「私が一番知りたいのは、なぜ、何のために、山田花子はマルセルの贋作を描いてこの盗難事件に加担したかなんです。彼女つまり千晶さんを産んだ女性は、足が不自由でしたよね。それが動機でしょうか」
「山田花子が描いたマルセルの贋作、その習作をパリから持ち帰って来たのよ。本物の贋作を描くために随分修業してたみたい。ところで事件の概要って、茉莉さんはどこまでご存じなの?」
は山田花子を組織から連れ戻そうと説得をしたが失敗して、かっとなって傷害事件を起こした。そして阿久根か阿久根が属する組織にもみ消されて、すごすごと帰国した。
マルセルの絵葉書は阿久根賢三が書いたものに間違いない。父親の行動としては理解 -
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道徳的な問題が善悪の判断とすれば、表題作含む三作はどれも決定不能なものに対する主体的な判断があり、倫理的次元における少女の葛藤が、若者の青春という親しみやすさ、または俗っぽさとは一線を引いて語られ、そのエモーショナルな雰囲気に誘惑されていると、どっちつかずのような問題ではない、その判断で幸か不幸が待ち受けているのではないような、その判断を自らの手で引き受けるしかないような状況が訪れるため、
インフルかコロナか分からないが体調悪いため手っ取り早く読めるものをと思って開くようなものではなかった。こう書くと堅苦しい話かと思われるかもしれないが、特に二作目の「揺れる髪」にあるような母娘の可愛らしいすれ -
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初・高樹のぶ子。読んでもいないのに私の中で「女性向けの作家」という思い込みがあって手を出していませんでした。
芥川賞作品を受賞した表題作の他に「揺れる髪」「春まだ浅く」の2編。
「光抱く友よ」は良いですね。
大学教授のひとり娘である主人公・涼子とアルコール依存症の母親を抱え、水商売のかたわらに高校に通う松尾の友情物語。二人のキャラも、物語の流れも良くて、芥川賞らしい凝った見事な文体がむしろ邪魔になるほど。特に松尾は魅力的で、映画化すれば良いように思いますが(かつてTVドラマ化された様です)が、40年前の作品だからもうネタとしては古いかな。
母と小学生の娘を描いた「揺れる髪」も良い短編でしたが「