青木祐子のレビュー一覧
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“「なんだよ、それは!」
「あれ、違うの?」
「違うよ。……違うよ!ただ……」
「ただ、何だ」
かたん、とグラスをテーブルに置き、シャーロックはひとりごとのようにつぶやいた。
「……止まっていれば追いかけて来るくせに、こっちが追えば逃げるというのが、わからん。追ってくると思って待ってたって、絶対に一定以上はちかよってこないのは、なぜだ」
ケネスは数秒、黙った。
それから、爆笑した。
「なんだおまえ……それ、近所の野良猫の話か。それとも、寄宿学校の初恋か!」
シャーロックは、さきほどまでのうしろめたそうな表情が嘘のように腹をおさえてげらげら笑っているケネスを見たが、酔いのせいもあってなぜ笑われて -
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“「舞台の役をお願いしたいのよ、パメラ」
マーガレットが言った。ゆっくりとひびく声だった。声をはりあげているわけでもないのに、言葉が胸に落ちていく。強気を装おうとしているパメラでさえ、なんとなくききいってしまうようだった。
「役――ですって?」
パメラがつぶやいた。
マーガレットの右手がつと動き、帽子のヴェールをゆっくりとめくった。
「あなたのような人を待ったいましたのよ、パメラ」
満足そうに、マーガレットは言った。むきだしになった顔は驚くほど白く、少女のように邪気がない。
「あなたなら女優になれるわ。あなたのための役があるの。ディモス――悪魔の役ですわ。そう、あたくしの新作、『楽園』の、美し -
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“「今は、いいピンクの生地が入ってないんですよ」
「まさか!ピンクがないだなんて」
バーンズ夫人は大げさに首を振り、目を見開いた。
「それはないのじゃありませんか?わたくしが何のためにこのお店にきたと思っていらっしゃるの。もちろん評判をきいたからですわ。思っていたほど、大きなお店じゃないけれど、『薔薇色<ローズ・カラーズ>』といえば、そのう、その――」
「『恋をかなえるドレス』を仕立てる店ですって――?」
「そうそう、そのドレスですよ!恋のドレス。わたくしのかわいいミラルダのデビューにこれほどふさわしいお店があるかしら。だからわざわざ、二頭立ての馬車を仕立てて来たんじゃありませんの。それなのに -
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麗らかな日差しと暖かい紅茶のお供に。
控えめなクリスと華やかなパメラが営む店『薔薇色』。
本日届いた仕立ての依頼は、少女の閉じた心を包むドレス。
絡み合った茨を解くように、クリスは少女の心を解くことが
できるのだろうか。
「ヴィクトリアンローズテーラー」というシリーズ名に
全てが集約されていると言える。
ドレスや街の描写など、細かな世界観が丁寧に作られている。
また、その世界観がとても穏やかな風合いに仕上がっているので
読んでいて安心感がある。
ラノベ特有の連続どんでん返しや仕込みの多い設定に食傷気味だったこともあって、
癒される一冊だった。
紅茶とお茶菓子を用意して、何気ない時に読むの