浜矩子のレビュー一覧
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タイトルと著者を見ると、日米の通貨戦争の問題点をチクチクとやって、円高万歳、という内容かと思いきや、最終的な着地点はともかく、全体的には通貨の歴史の本だった。
和同開珎なんて久しぶりに聞いた言葉だ。藩札やら軍票やらといった勝手なカネや、お上が考える以上にしたたかに立ちまわる庶民たち。
やがて円が生まれ、外国との交易が本格化し、行ったり来たりの相克関係を経ながら、円は大人になっていく…かと思ったが、円はピーターパンシンドローム、一ドル360円だったころの、子どものままでいたい! という現在。
通貨を通じたお上の成熟(あるいは未成熟)具合を味わえる本。いろんな竹馬を履いて高くなりすぎると、落 -
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ビットコイン騒動のおかげで’通貨’に興味を持ち本書を手にしたが、基軸通貨を巡る近現代史が詳しく興味深かった。確かに今後基軸通貨という概念は、従来のそれとは異なってくるのかも知れない。ある覇権国が軍事的、経済的パワーを背景として、世界中から信用を勝ち取り、実質的にその通貨を世界の共通通貨にしてしまう。こんな世界はもう終わりを迎えるのだろう。ビットコインのような仮想通貨も信用が低すぎて通用性がなく、基軸通貨にはなりえそうもない。
なりそうもないといえば、1ドル50円も一向に起こらないね。著者は未だにこの主張を続けているのだろうか?経済の世界での未来予測は信用を一気になくすから恐ろしい。 -
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浜女史による日本の通貨である「円」について書かれた本です。その中で、金本位制だった時代に、1円=0.5ドル=0.75グラムのゴールド(p23)という記述があり、これが日本の通貨の原点だと私は認識しました。
金の価値から換算すると、円の価値はだいぶ下がったというような考察がこの本によってできたのは収穫でした。
以下は気になったポイントです。
・円という通貨がはじめて登場したのは1871年だが、当時の日本は金欠状態であり、金貨との交換性をもたない不換紙幣であった(p14)
・1967年という、ドルを軸とする固定為替相場制度が続いていた時代(1ドル=360円)に、イギリスが守るべきポンドの声 -
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グローバル化の波は過去にもあり、アダム・スミスが「国富論」を書いた1776年も産業革命をはじめ、世界が大きく動いた時代だった。そして現代、正真正銘の国境なき時代を迎えている。
ヒト・モノ・カネは自由に国境を超える今日、しかし、国々とその政策がグローバル化するまでには至っていない。
モノとカネのグローバル化により、引きずり回されるヒト。問題の多くは経済に起因するが、その解決は政治的な力を必要としている。そして、その行方を左右するのは、人々の考え方だ。
この本をテキストとして、浜先生からの講義を受けた。経済や金融の政策の在り方も重要なポイントだが、市民社会の在り方、人々の共同やつながりについても、 -
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やや大味
現在の世界情勢を踏まえて、アジア、アメリカを中心としたシナリオを論説しているが、若干煽っている部分もあり、楽観派・悲観派含めて、開設してもらうと、よりリアリティーを感じることができたのではないかと思う。
いずれにせよ、現在の状況を考えれば、最悪の事態は想定されるわけで、最悪を避けるためには日本を含めてどうすればよいのかということを考えさせるような問題提起もあるとよかったと思う。 -
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中国の舵取りの難しさの根底には、新興国だった頃の日米欧には今ほど問題とはならなかった、グローバル経済化した現代特有の条件をこなしていかないといけないところにある。逆に言えば、中国を知ることは、同時に、中国を通して見えるグローバル経済の実体を知ることに繋がる。例えば、著者があげるように、バラマキ政策が世界金融危機対策の有効手段となり得たくらい、不足しているインフラという自国の古典的問題に対処しつつ、環境という現代の問題にも並行して取り組むことを求められる。その一方で、大きな成長を求めようにも、「世界の」工場である中国は、自力だけでは及ばず、外国資本に頼らないといけない側面がある。
それでも、その -
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アダムスミスの「国富論」は読んだことがありませんが、1700年代当時に書かれた本がいまだに利用価値があると言うのもすごいことだと思います。
国富論では、諸国の富は必ずその国に帰属するものであり、現在の様にグローバルに国を超えることは想定していない。また、スミスの時代には労働価値がそのままモノの値段に反映されていたけど、現在はモノの値段が決まり、そこに労働力を投下していると言う事。結果、比較優位の理論を越えて、企業は安い人件費を求めて、中国やアジアの国へ展開して行き、企業栄えて国滅ぶということになるのですね
ただ、個人的には安くなると言う事は、なにがしかの品質や安全が失われていると考えることが -
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ユーロ。得体の知れない通貨統合のテーマパーク。かつてユーロランドと揶揄された。基本的に現実からかけ離れた世界であり、その根底においてそもそもリアリティが欠如している。夢見る少年少女の世界であったのが、財政危機の渦中できりきり舞いになっているギリシャを目の当たりにし、ようやく現実から目を醒まし大人の世界へと立ち戻ろうとしている。恐るべきドイツを封印するため、経済の力学を完全に後景に追いやったツケが回ってきているのだ。今、ユーロはユーロランドからの脱皮が求められている。著者は処方箋らしきものを描いているが、著者自身が消火不良で無謀な机上の空論と言っている。せめて、世界は同じ過ちを繰り返してはならな