西村賢太のレビュー一覧
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西村賢太作品5冊目を読み終えた。芥川賞受賞作『苦役列車』よりも後に出版されたものなので、話題も比較的新しい。
以前読んだ作品にもちょくちょく登場していた恋人秋恵との同棲生活が話のメインになる。相変わらずの貫多の性癖、嫌いだわ。秋恵もよくこんな奴と付き合って、1年半以上も辛抱したなと思う。でも、男って未練タラタラなんですよ。好きな女が離れていけば、どんな愚か者でもなかなか立ち直れない未練の生き物なんですよ。そんな俺も未練タラタラなタラ男です。「腐泥の果実」では離れていった秋恵への未練タラタラ感が、情けなさと共に何故か共感できてしまう男の性が表現されていて、タラ男の私、読んでいて切なかったですわ。 -
Posted by ブクログ
僕が読んだ西村賢太の小説は、『苦役列車』『二度はゆけぬ町の地図』『暗渠の宿』であり、さらに今回これが加わる。同棲していた女性の話すなわち「秋恵モノ」は『暗渠の宿』しか読んでいないのであるが、それなのにこの『どうで~』における秋恵話のごり押しに、読者としての失速、ありていに言えば食傷を感じてしまったことをまず記しておきたい。
表題作においては藤澤清造の逸話と秋恵の話がふんだんに盛り込まれている。著者は上手く女性と藤澤清造についての話を絡ませているが、もともとその二つは相いれないというのか、やはりどうしてもバランスの悪さが目立ってしまうように思う。
著者の手腕は短編集『二度はゆけぬ町の地図』の高クオリティの出来によって既に知るところではあるのだが、その腕をもってしてもこれら二つの滑らかな混交は難しいようだと言わざるを得ない。日常から離れたやや高い位置にある藤澤清造、そしてそこにごく普通の女性である秋恵を混ぜることがいかに難しいのか、素人目にも判るところだ。あるいはこれら二つを違和感なく結びつけることが著者の課題なのだろうか、そうだとすればまだしばらくこの秋恵モノは続くかもしれない。
著者はこの『どうで~』では芥川賞を逃すのだが、それはおそらく僕と同じことを選考委員も感じたからではないだろうか。
酷評してしまったが、最初の短編『墓前生活』は藤澤清造とその周辺のことのみに話が絞られており、面白みはあまりないがきれいに纏められている。僕個人としては表題作や、『苦役列車』のような比較的長い作品よりも、精々40~50ページぐらいの短編の方にむしろ切れ味の良さを感じる。
三つ目の短編『一夜』は、『どうで~』の後日譚のような短編であり、同じく藤澤清造と秋恵がちゃんぽんになっている。しかしこれは極めて短い作品であり、これら二者の混淆はその表題作よりも上手くいっていると思う。
藤澤清造について語られる場面が極めて多く、全体としてまるでお香の匂いが漂っているような作品集になっている。またこれは『二度は~』の変更前の表紙についても述べたところだが、この作品集も表紙が残念だ。この人の本の表紙は人間のいない荒漠とした風景または抽象画が似合う。 -
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ネタバレNHK週刊ブックレビューで紹介されていたので読んでみた。
他の人のレビューを見たら、シリーズ物らしい。
主人公は性格がクズな人間だけど、初めて同棲する相手を見つけた。
そのことに浮かれていたが、だんだん本性がでて、相手が去っていくという話。
主人公の性格はホント読んでいて理解出来ないレベルでダメだし、若干の不快感さえ覚えるのに、最後まで読むのは文章の上手さだと思う。
ただ、短編の連作だと思うけど、一冊の本としてみると、これで終わり?って思ってしまった。
最後まで書ききらず、読者に想像させる小説(教科書でいうと羅生門とか)はあんまり好きじゃないので・・・ -
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ネタバレようやく出来た彼女 秋恵と同棲を始めた貫多。
その約1年の同棲生活を綴った短編集。
秋恵の実家に借金をし、秋恵のレジ打ちのパート収入で生活。
自身は固定収入にならない小説を書き、陶酔する作家の高額な古本を買う。
言ってみれば、秋恵に食べさせてもらっているのだ。
だからと言って彼女を大事にするかといえば、まったくその逆、自分の欲望通りに扱うのみ。
引っ越したマンションの管理人に言いがかりをつけられたと怒り、
それを丸く収めようとした秋恵の常識的な態度にキレる。
帰宅した秋恵の肩先に付いていた香りから、彼女に疑いを抱き、
後日、自分に付いた他人の整髪料の匂いに気付かぬ彼女にキレる。
大晦日、年越しそばの出汁が薄かったというだけでキレる。
キレたら最後、ありったけの屁理屈を彼女に浴びせまくる。
どうしてそうなるのか、私には全然理解できないけど、
出てくる出てくる言葉の数々・・・ボキャブラリーの多さには感服。
決して笑う場面じゃないんだけど、笑ってしまった。
第144回芥川賞受賞「苦役列車」も読んでみようと思う。
この作者は私小説を書くので、この主人公はこの作者なんだろう。
ああ、想像しただけでも、うっとおしい。
そして、秋恵さんは最後には出ていくのだが、すごい人だと思う。
食べさせて、尽くして、キレた貫多をなだめ、悪くないのに謝る。
実在する女性なんだろうけど、今は幸せになっているかな。 -
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目前に迫った諸々の締切からの現実逃避もあってか、一気読みした。
西村賢太の作品は、「苦役列車」と「腐泥の果実」しか読んだことがなく、購読したのは今回が初めてであったため、わくわくして読んだが、これがなかなか面白かった。
特に「一夜」が僕は好きだった。短編だということもあるのか、「腐泥の果実」に通ずるものがあるように思われた。どちらの作品も、彼の文体と屁理屈によって彼女との逼迫した状況がギャグめいて見えている気がした。女性との立場に立って見ると、全くもって不快な作品であるとは思うけれども、それでも、なんだか面白かった。
「墓前生活」は、筆者も言うとおり、小説と言うよりも、赤の他人が読むことを想定して書かれた日記のように感じた。なんとなく事実が淡々と時系列順に書いてあるように感じたからだ。そのため少しだけ退屈にも感じた。けれども、挫折することも、読書を中断することもなかったので、やはり彼の作品は面白いし、その文体と感性には何処か引きつけられるものがあるということなのかもしれないと思った。
「どうで死ぬ身の一踊り」は最後に読んだのだが、これを読み終える頃には、彼女に対して同情の気持ちしか湧いてこなかった。なのに! どうして! 面白いと感じたのか! わから! ない!