永井均のレビュー一覧
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永井先生の本はいくつか手にとつてきたが、どこかで池田某とは語り方は異なるものの、同じベクトルをもつてゐるやうには感じてゐた。それは哲学、存在についての真理を求めてやまない不思議な熱情と呼ばれるものだと思ふ。
無敵のソクラテスであつたか、なんであつたかは忘れてしまつたが、何かの巻末に池田某の薦める本のページがあつて、そこに永井先生の本書が書かれてゐた。
日々に流されていく中で、学生の友人や立場の異なる人間と接すると、ひととの隔たりを強く感じはする。しかし、ことばや考へるといふことを知らないでいた<子ども>と呼ばれるときほど真剣に感じ考えてゐるかと言はれれば、ずいぶんおとなしくなつたとつくづく思ふ -
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『西田幾多郎』と題された本書の冒頭「はじめに」で、永井は「本書の内容は実は西田幾多郎とは関係ない」という衝撃的な宣言をする。本書で永井は西田哲学を援用して、実は自分の哲学を展開しているだけだ、というのである。もっともその一方で永井は「西田が言わんとしたことを私は西田よりもうまく言い当てている」可能性を認める。然り本書は、西田哲学と永井哲学の双方を楽しめる優れた哲学書となっている。
永井は川端康成『雪国』の冒頭の一文「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」をたたき台にして議論を開始する。この文章には主語がない。英訳では列車が主語になっている。あるいは主人公を主語にすることも可能だろう。しか -
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前半41章、後半41章の、計82章から構成されている。前半は特に、章ごとにクレッシェンドが激しい。後半は逆に、各章の全体がフラット気味になる。
哲学することは、自分を消すこと。一人称ではない、ということ。
例えば、本書の冒頭で、自殺する人がこんなに少ない、ということは、本人が自殺したいわけではないし、他人に自殺をすすめるわけでもない、という主旨がある。
一人称の自分の悩みを解決することは哲学ではない。解決するのは、それはおそらく宗教。しかし、宗教には嘘がある。これには共感できる。そして、私も宗教からは遠ざかっていたい。
あとは、「ほぼ」著者の今まで通りの独自の理論。みんなが並んでいる世 -
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哲学的な思想に興味を持っていたところ、美術館で発見。小中学生向けとのことできっと簡単に読めるかな、と想定して購入しました。
…非常に頭を使います。
そもそも、哲学とは思想や信条、とおりいっぺんの真理を示すものではないとのこと。この書では、あらゆる哲学的問題を使ってどのように思考を広げるか、猫のインサイトの誘いで考えていく本。「君は本当に馬鹿だねえ」「君は本当に頭がいい!」と、インサイトの翔太への評価がころころ変わるところも見物(笑)。
学説が体系だって「分かりやすく」説明されている訳でも、物語で「簡単に」理解できるようにもなっていません。
過去の哲学者が提示した様々な問題や説を理解したうえで、 -
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タイトルが不遜だとして批判している評を頻く見かけるが、誤読するを語るに落ちていることに失笑せざるを得ない。もちろんこのタイトルは意図的に一種のギャグであり、ニーチェ流デュオニソス的明るいニヒリズムの正鵠を得た表現である。ニーチェキーワードを時系列に並べながら、むしろ非論理的に、古い言い方ならスキゾ的に論を進めた挙句の最終章での「全否定という肯定」との結論に開いた口がふさがらなかった。だがむしろそれは、難解で長ったらしい数式の解がゼロになるような快さがある。感動的だ。ほとんど引かれていないが、本当に必要な個所でのニーチェ本人の境遇の記述により、本稿がむしろニーチェの人間像をも明確に浮かびあげさせ
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昔読んだような気がするが、なんとなく気になって読むことに。結果、大正解。誤解を恐れずに言えば、たいしたことは言ってないんだが、当たり前のことを回りくどく言う、いや示すのは気持ちいいなと。
もちろん完全に永井さんのことを理解はしてないが、この本から肉をそぎ落として骨だけにするとそうたいしたら、相対主義のパラドクスを道徳的な展開をしたということになるんではないかと。
あと、ニーチェを読んでいて存在と時間の実存主義に近いよな、と感じたがそれは中途半端なニーチェ主義なんだろう。むしろ突き詰めていくと、ハイデッガーの嫌ったダスマンの方が超人に見えてくるのは気のせいか?
導入の仕方が秀逸。なぜ人を殺し -
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ネタバレ筆者の解釈ではあるが、ニーチェ哲学の危険な面も含め、純粋に学問的に、容赦なく解説している書。(筆者の言葉を借りると)反社会的な内容が多分に含まれる。
社会人が読めば怒りを覚えるかもしれないが、学生が読めば一般にタブーとされる内容にまで踏み込んだ議論がされているのでスカッとするかもしれない。
また、筆者はニーチェ哲学に世の中的な価値はないとの立場だが、一概にそうとは言えず、ニーチェの結論である「人生の無意味さを楽しむ」という思想は、社会人にとって極めて実用的な考え方だと思う。
これを実践すると、些細な失敗や意見の相違が気にならなくなるので自然仏のような性格になってゆくだろう。ストレス耐性が高ま -
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「哲学を学びたいんですけれど何かいい本とかあるかな?」
と聞かれたら、真っ先に本書を読めと興奮して勧めるだろう。
作者自身が自画自賛している通り、「哲学」をするために(「学ぶために」ではない)最適な教科書に他ならない。
もう、誰かに読ませたくて仕方がない。
いきなり猫のインサイトが「今が夢じゃないって証拠はあるのか」とかいって翔太との哲学的対話篇が始まるところがなんとも滑稽だが・・・。
中学生高校生向きの哲学の本などと書いてあるが、内容はそのまま哲学科の卒論のテーマに使える深い深い問いかけである。
哲学を4年間やってきて、実は哲学をしていなかった自分に気がついた。
最初か -
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いまが夢じゃないって証拠は?ほかの人って自分が見ていないところでは楽屋で一休みなんかして、本当は登場人物てきな感じにしか存在しないのでは?他人にも自分と同じように心があるの? どれもこれもきっと多くの人が小学生の時考えたことがあるようなシンプルだけれども一人では答えが出にくい疑問を導入に、存在のかけがえのなさ、言葉はなぜ通じるか、自分は存在している、など哲学していく良書。
永井さんの本は本当に面白いし何より簡単。
すぐに壁にぶちあたって砕けるようなシンプルだけど哲学するには骨が折れる題材をここまで簡単にわかりやすく書いてあるという驚き。
私が小学校三年生のとき漠然と感じた「他者は自分ではな -
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先日、本屋の中を何の気なしにブラブラ散歩していたら、哲学関係の本なのになんとなく面白そうだし、タイトルもとっつきやすそう(内容も簡単そう!)な本があったので中身も見ずに衝動買い。そのまま喫茶店でコーヒーを注文したあと、軽い気持ちでページをペラペラとめくってみたら、鼻歌を歌いながら会計していた10分前の僕をグーで殴り飛ばしてやりたくなるような作者独特の言い回し、難しい哲学用語の雨あられ、というかもはや嵐。今まで哲学関係の本を全く読んだことがない僕は、本を読み終わる頃には、瞳孔は開き、全身を痙攣させながら泡を噴いていたといいます。嘘です。とにかく、内容を理解するには少し頭をひねりますが、作中で猫の