太田光のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
太田さんが抱く違和感は、きっと多くの人が感じていて、コロナウイルスという存在が違和感をさらに浮き彫りにさせたと思う。
特に、笑いという諸刃の剣なコミュニケーション手法について、全く同意する。
いじりはコミュニケーションの中で利用することが多いが、それはいじめの派生系ではなく、いじめとイコールである。いじりというツールを使う際には、相手を慮って自分たちで自制する力を持たなければ、笑いという刃が牙を剥き、人を殺す。SNSによって、いじりの持つ殺傷能力は飛躍的に上がってしまったこともあり、一人一人が言葉の持つ力を一段と理解した上でコミュニケーションをとるべきだ。 -
Posted by ブクログ
すごくよいなぁと思った。岩田さんのところで購入した本。
世代的に向田邦子は知らなくて、太田さんとうちの親が同じくらいみたいだった。ドラマというのを確立した人なんだなぁと思う。いわゆるお茶の間テレビの最盛期、日本人に希望と笑いを届けた人たちのなかに、向田さんはいたのだなぁと思う。
本書は、そんな向田さんの人間くさいドラマに子どもの頃あてられて、すごく好きだった太田さんが熱烈に愛をつたえるファンブック&考察エッセイ。
構成はとてもシンプルで、まず太田さんが好きなシーンや文章、作品について語る。
そのあとに実際に抜き出した向田さんの原文が載っている。というのが、2往復ある。
おしゃべりはしない向田さん。大事なところではしゃべらず、登場人物の所作や動きに想いをこめた向田さん。それと対照的に、その向田さんの魅力をしゃべりまくる、おしゃべりな太田さん。
戦争の経験というのが根底にあるにせよ、向田さんはしゃべらない、という道具をうまく使う人だったんだなぁと思う。そもそも、物書きというのはしゃべるのが下手、伝えたいことがあるのにうまく伝わらない、という人が多い気がする。
とくに向田さんの作品のなかで描かれる『男眉』の主人公のような、男にうまく媚びられない、不器用な女性が、向田さんと自分に重なった。ついつい、わかっているのに可愛いげのないことをしてしまう。そういう、男女の、あうんの呼吸のなかに入り込めない目線がやさしく感じた。
お茶の間のシーンとか、観てはないけど、わたしは寅さんが好きで、もしかして、向田さんの作品は女はつらいよっていう感じなのかもしれない。
エッセイも小説も、ちゃんと読んでみたい。あとはドラマも一度観てみたいなぁ。男のおしゃべりもちゃんと役に立ってるよ、と著者に言いたくなる本でした。 -
Posted by ブクログ
―――それでも僕は語りたい。向田邦子の何処が特別なのか、何処が他と違うのか。―――
太田光の惜しみなく注がれる愛がすごい。
すきなものをかたるひとのきれいなことよ。
この本はまず構成が素晴らしい。
初心者にとっては、と前置きをつけておく。
向田邦子プレゼンが巧み。十分読みたいなという気にさせたあとに、短編の小説、エッセイをドドンと全文のっけちゃう。
個人的には、「ぼくはこんなふうに向田邦子を読んできた」でちょうどよく読みたくなってきたところ、小腹がすいた感のまま作品に没入したかったので、それぞれの小説やエッセイの直前の短文レビューは不要だったかな。
作品の感想すこしだけ。
備忘録程度に。
『かわうそ 』
亭主病気で妻活気づく話
包丁のくだり、秀逸。
『三枚肉』
不倫相手の結婚式に妻と出席する
「ダダダダ」はたしかに、すごい。
『男眉』
地蔵まみえの妹と男まみえの姉
トイレのくだりは何回か思いだした。
『大根の月』
庖丁を研ぐ癖が大事なものを傷つけてしまった
この話の恐ろしさ。
いやーーー、こわい。
『ごはん』
空襲、家族、さつまいもの天ぷら、孤児とカンパン、土足の畳
この本を読むと太田は女のなんたるかをすごくよくわかっているみたいに見える。
男と女の構造をよく理解しているようにも。ただ、理解しているから理想の関係が築けるかというとそれはまた別のお話なのだなあとも思うわけで、男女というものはなんとまあ複雑でムツカシイんだろ。
「少ないように思えるが噛みしめるほどに十分な作品を書いてくれた」と感謝して太田の向田邦子論は終わる。
「飾られ、眺められるだけの、“名器”になることを拒否し、毎日使われる“食器”になることを選び、その通りになった。どれほど美しくても、そこに生活がなければつまらない。」 -
Posted by ブクログ
憲法九条を世界遺産に
精神土壌の、無思考、思考停止、
素直に自分が思ってることを表現すると世の中からバッシング抹殺されかねない、いじめ、
西欧の合理主義やモダニズム→田中智学→危機的な日本の新しい方向性を示そうとした、
虐げられているもの弱いもの声を出さないものの声を聞き取らなければならない25
作者の意図と違うところで感動が生まれることの幅は芸術作品の力である
同じ場所にいても違う世界をみている、
誤解を伴ったディスコミュニケーションで世界は成り立って豊かになっている、
宗教法国家による単一の意味付けは世界との間に齟齬を生じる、
戦争の大きな概念正義こそが結果として人を
宮沢賢治
ディスコミュニケーションを乗り越えたい、
宗教的情熱に自分の理想を見いだしたい、
戦前の戦争的思考と戦後の平和的思考をつなぐ存在、
愛が深く擬人化
●なめとこ山の熊、●月夜のでんしんばしら、●シグナルとシグナス、レーニンによるシベリアの電子化、スターリニズム、ハイデッガーの哲学
愛は未熟で危うい、
見えないふり忘れたふりふたをして隠し問題がみえなくなってる
ネオテニー(幼形成熟)、
諸刃や矛盾を受け入れる、
●ジョン・ダワー敗北を抱き締めて岩波書店
宮沢賢治の作った童話、アメリカ主導の日本国憲法
ドンキホーテ、桜、世界遺産、修道院
突然変異、珍品、無垢、奇蹟的な瞬間の輝きと共に世界に出たもの、無邪気な理想論、
仏教のように合作だからこそ価値がある、イロコイ連邦憲章、フリーメーソン
●星川淳、魂の民主主義、築地書館
物事の浮かぶ海の上で、波が立っていることばかりに気を取られていると、その底流で動いているものが見えなくなってしまう
厳しい条件のなかで理想や夢を実現させようとしている場所があるというだけで世界の姿は変わる
●ロッセリーニ神の道化師フランチェスコ
アボリジニのドリームタイム
ドンキホーテとサンチョパンサ
桜
かつて日本人が表現していた死
美しい散り際、戦の象徴、
狂気も毒もその美しさのなかに含んでいてその表現はかくしている
恍惚、冒険心
言っていることは鋭いが一般には伝わらない。
正義を信じる美しい武士道精神と、その危うさ茶化す落語文化
武士、伏し、職人、自分の命に執着しない、
愛嬌、懐の深さをもつ落語、笑いのめした人たちの碑をたてる
●安楽庵策伝の醒睡笑せいすいしょう
不戦ではなく非戦
精神としての平和主義には伝統がある、一万年規模
世界遺産は、壊してしまうかもしれない自分たちの愚かさを知るためのもの
神の子イエスと神社は落書きされるお笑いの対象にされる、手をつけてはいけない場所との区別、見極め
九条を抱えていることで、今自分が信じている正義は違うかもしれないと自分を疑ってみる、矛盾をはらむことで自分自身を疑い迷い考え続けるヒントになる
環太平洋の平和思想の最高表現、懐が深い
平和を維持するのは殴らない立場でケンカする人間
テロに屈するな→戦争の論理発動
転向、吉本隆明
川端康成
インテリの言葉は皮膚感覚で伝わってこない、理解させる芸がない、
平和憲法を守る覚悟、
軍隊をもっても戦争なんてできないしむしろ巻き込まれていく
★軍隊をもたない価値を守るには、下手をすれば殺される下手をすれば殺す覚悟や犠牲を必要
憲法はあくまで国のコンスティチューション、国の制約と個人の問題は別
感動は善悪を超越したところで起こる
日本国憲法は政治と芸術の合作
感受性や想像力がもっと鋭くないと理想から離れていく
●藤田嗣治の戦争画
いまいる人といると年を取り、死んだ者とともにいようとし対話し蘇らせる努力は生命の蘇りを感じる
●ミラン・クンデラの不滅、集英社文庫、菅野昭正訳
SMAPのトライアングル
平和を表現することがいかに難しいか
九条は国家の免疫機構解除、
母体が子供を慈しみ育てるように、神話が人間と動物とのコミュニケーションの遮断を思考で乗り切るらせるように -
Posted by ブクログ
実に、日本国憲法とは、一瞬の奇跡であった。それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、奇跡の合作だった。しかし今、特に九条は次第に輝きを奪われつつあるように見える。この奇跡をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。
芸でそれを表現しようとする太田と、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢。
宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は…。
中沢)宮沢賢治はディスコミュニケーションを乗り越えたいと思っていた。
他人の苦しみが自分の苦しみである状態を造りあげたいと思っていた。
世界を一つにするという田中智学の危険な政治思想に共感していった。
太田)宮沢賢治の抱えていた矛盾とは何だろう。
彼の作品には正義や愛があふれているけれど、
正義こそが結果として人を殺す思想にもつながっていく。
● 10人集まれば10個の正義があり、相反する正義は喧嘩する。
中沢)自分の中に矛盾したものを、平気で受け入れていく。
それに従って現実の世界でも生きていこうとすると、
しばしば未熟だといわれます。
太田)最後に必要なのは、理想を追う恍惚の中で、
賢治も智学も持てなかったもの、自分を否定する勇気だ。
● 答に迷い続ける事も大事かも。見付けた答を自ら疑う姿勢も大事。
中沢)憲法九条は修道院みたいなものなんですね。
現実を考えればとても無理じゃないかと思える理想や夢を、
まがりなりにも実現させてみましょう、という人たちがいると、
その周りの社会まで変わってきます。
● ”リンカーンにも敵は大勢いたわ。正義の人に敵は付き物よ。でも彼らのようなバカ正直が頑張って世の中をよくしてきたわ。信じるならもっと大きなものを信じなさい。“
太田)憲法九条を持ち続けている日本は、ドン・キホーテのように滑稽で
しっちゃかめっちゃかに見えるかもしれないけど面白い。
正気を失ってる時の方が元気でエネルギーがあるし絶対面白い世界
中沢)ドン・ホーテのそばに
「ミサイル撃ち込まれたらどうするんですか、旦那」
と言い続けるサンチョ・パンサがいる事がまた大事な事なんですね。
日本がなかなか賢いサンチョ・パンサと一緒に歩んできたという事実を忘れてはいけません。
● 日本国憲法はドンキ・ホーテとサンチョ・パンサの二人組で60年守ってきた稀有な存在。
中沢)国家が国家である自分とは矛盾する原理を据えているわけで、
日本国憲法が世界遺産に指定されるに値するポイントですね。
現代の価値観ではあり得ない場所を持続しようというのが世界遺産の考えでしょう。
太田)人間とは愚かなものだから、これだけは守ることに決めておこうというのが、世界遺産の精神ですよね。
中沢)日本国憲法は矛盾をはらんでいますから、護憲、改憲と迷って当然です。
太田)矛盾を正せば迷わなくなるんでしょうけど、迷わなくなるほうが危ないと思う。
● 憲法改正したら日本を、家族を守れるのか?
改憲派は言う。
「彼女がレイプされても黙ってみているのか!」
じゃ、なにかい?
どっかの国の兵隊がパンツ脱いでわんさか押し寄せるってのかい?
レイプや殺人が目的で戦争仕掛ける国なんてあり得ない。
もちろん個人レベルではそんなの徹底的に叩きのめすに決まってる。
そもそも個人と国を同じレベルで語ることが間違っている。
戦争は政治の最後の表現手段で、本来国益を守るのは外交だ。
戦争しないっていう国に戦争しかけるのは国際世論を無視する相当な決断が必要になる。
でも戦争するって国になったら、戦争の可能性が今以上に高まるのは間違いない。
いずれにしても改憲派も護憲派も覚悟が必要だ。
戦地で死ぬか、座して死を待つか、最悪の事態の想定だ。
きっと政治指導者と官僚は戦地で死なない。
戦地で戦うのはそれ以外の国民だからだ。
国のために死ぬ事と家族のために死ぬ事は全く意味が異なる。
多くの人は、家族のためには死ねても他人のためには死ねない。と思う。
そもそも外交のあり方を議論せず、憲法改正を議論するのは乱暴だ
まずは戦争にならないような国際社会での日本の役割、立ち居振る舞いを国民全体で議論すべきだ。
中沢)日本国憲法が「世界遺産」に推薦されてしかるべき理由は、
どこの国の憲法にもない、他者たちを同胞として受け入れようという、
近代的政治思想では尋常ならざる原理をセットしている点にある。
対談を通して世界遺産的な憲法を戴く事の利益と不利益を考えた。
それがどのような結論であっても、他人に押し付けようと思わない。
しかし、この国のユニークさだけは、明瞭に示す事ができたと思う。
日本国憲法第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない。 -
Posted by ブクログ
憲法記念日なので、思い出して今さら読んだ。日本国憲法は66年前の今日施行された。
いちばん印象的だったのは、九条の理想を掲げるのは、軍隊を明文化するよりも覚悟のいることなのかもしれない、という部分。
自分は、ある種矛盾を抱えたこの憲法九条を大事にして、変えずにいたい。少なくとも、一時的な盛り上がりとか時代に合ってないとかの理由だけで、安易に改憲側になりたくないって思った。
あと印象的だった部分は、
・宮沢賢治が戦争に加担するかのような考え方を持ってたこと
・賢治は人と人だけでなく、人と動物との間の対立を乗り越えようと理想を追い求めたこと
・平和とは突き詰めると愛とはなにかという問題になること
・日本国憲法はアメリカ先住民から続く環太平洋的な思想を含んでること
・日本国憲法は矛盾を孕んでるからこそ、改憲派と護憲派からたくさん意見が出て来て議論になる。これはいいことだね。右とか左とか区別しすぎると偏りすぎるから。
とかかな。 -
Posted by ブクログ
過去の蔵書も登録しておこうと思って、風邪気味の三連休に再読。
小泉純一郎元首相の話題があるけど、「ああ、そんな前に出版された本だったんだ(2006年初版)」。
現行の日本国憲法九条のネタだけでなく、宮沢賢治、田中智学、ドンキホーテをはじめとして会話は転がっていくけど、それは会話が転がっていく証拠で、ちょっとヒネた対談本ファンとしては醍醐味を感じる。
しかし、総選挙前のこの時期に読んだからか、太田光に一番共感できたのは、小泉純一郎に関して感じた部分だったりして。
オレには相容れない部分はあるんだよな。
(いい意味での)ペテン師というか、扇動者的な素養は評価するんだけど。まあ、そんな人が一般的には人気あるもんね。安倍晋三とか。
まあ、とか言っているオレも、どちらかというと改憲論派なんだけど…。