大野舞のレビュー一覧
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1.表紙をみて何となくの気持ちで購入しました。
2.歴史学者として名を馳せている著者が自身の思考についてどのように考えているかについて書かれた本です。著者は学者として数々の論文を執筆してきたり、メディアに出演してきましたがあくまでも自分の成果について述べたものです。しかし、今回は自身の思考についてです。普段はどのように思考をしているのか、習慣化しているものは何なのかなど、今までとは違った視点が書かれた本です。
3.一般的な学者世界からは敬遠されがちの著者がどのような思考をしているのかが気になりましたが、根本的には過去のデータを検証すること、日ごろからストックを増やしておくこと等を習慣化していることに変わりはありませんでした。ただ、一点違うところは過去の先輩たちに負けないところです。自身の論理をしっかりと自信をもって言語化していることでここまでのことが出来るのだと思います。 -
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エマニュエル・トッドの日本限定の本で、彼の思考プロセスについての本。
エマニュエル・トッドは、日本では有名(?)だけど、どうもフランスではあまり評価されていない、あるいは批判の対象になってしまうような存在のようです。
日本では、ソ連の崩壊を始め、さまざまな予言のヒット率で評価されているようだけど、フランスでなにかと騒ぎを起こしてしまうのは、彼の思考のプロセスによるものが多いようだ。
この本によると彼の思考は、イギリス経験主義的な方法で具体的な事実、数字を丹念にもていくことを通じて浮かび上がる直感的な仮説をまた丁寧に実証していくというもの。ある意味、当たり前といえば、当たり前の方法論。
が、これがフランスの演繹的な思考法とはなかなか合わないらしい。
さらには、トッドの世界を見る目のベースは家族構造と人口統計。そうしたことから、国や地方ごとの文化や宗教的な傾向、イデオロギーを解釈していく。
人間の活動の「深い」ところをそういう構造で説明されると、なんだかちょっとバカにされた気がしなくもない。
そういう説明に対して、「個人主義」の強いフランスは気分を害するだろうし、そこまで個の主張の強くなく、なんとなくまわりとの関係で自分の考えを調整する日本では、そんなに違和感がないのかもしれない。
というエマニュエル・トッドの受容度の差も、家族構造で説明可能ということなのかな?
そんなエマニュエル・トッドは、同時代的に進行している事柄に対してコメントをするのだが、とくにそういう発言は今生きている人たちに関わることなるので、非難の対象になりやすいのだと思う。さらに、それは、個人の心情を超えて、集団としての目に見えない、無意識的な反応を含むものなので、個々人は、「自分はそうでない」と思ったりするし、無意識的なことは因果が証明できない、ということで、眉唾に思われるのだろう。
エマニュエル・トッドのコロナやウクライナに関するコメントについては、わたしも読んで、ちょっと苛立ちを感じた。
なんか、道徳的、倫理的に、なんだか違うんじゃないかと感覚。
この本を読んでわかったのは、エマニュエル・トッドの良い / 悪いの判断は、なんらかの倫理的な基準にもとづくものではないということ。現実を分析して、それがどういう方向に動きそうなのか、という分析にもとづいてのものである。
わたしは、現実の分析はそれはそれであって、それとは別に倫理的にどうあるのが望ましいのかという理念のようなものはまた別にあって、この2つを組み合わせたときに、どういうことが機能しそうなのか、というふうに考えるわけだが、トッドは、もっと現実派なのかな?
トッドは、ある意味、古典的・科学主義的な方法論ともいえて、その後のポスト・モダーン思想からすると、なんだかプリミティヴな感じもうけつつ、この本を読んで、彼の思考を理解すれば、トッドの言っていることから、自分にとって大事なものをすくい上げることが容易になるかもしれない。 -
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人口学者であり家族人類学者によるウクライナ戦争論 ウクライナはすでにNATOに加盟していたようなものだった。それに危機感を覚えたロシアがウクライナに侵攻したというのが筆者の言いたいことだ。アメリカのミアシャイマーと同じ主張だ。
母国フランスでは、集団ヒステリー状態になっていて、冷静な議論ができない状況らしい。だから日本の文藝春秋でインタビューを受けたというのだ。
「この戦争は父権制システムと核家族の双系制システムの対立だ」という筆者。何と歴史的には、ロシアの「父権制システム」の方が、アメリカ、イギリスの「双系的な核家族」より新しいらしい。地図なども使用しわかりやすく説明してくれている。
単なる観念論ではなく、データを元に論じられていて説得力がある。乳幼児死亡率はアメリカの方が高い。自殺率はロシアの方が低い。つまり、ロシアは実は国力が高いというのだ。また、教育の質はアメリカよりも高いと。ジリ貧のロシアの狂った指導者プーチンが、訳もわからず戦争を仕掛けたというのとは違う。
ソ連ができる前まで、ウクライナは国家として成立していなかったというのは驚いた。3つの地域からなり、まとまりを欠いており、近代化は常に外からやってきた。ウクライナがロシアの軌道から抜け出すには、他の大国の軌道に飛び乗るしかない。それはどこか。アメリカは遠い。EUは本気で支援するつもりはない。その結果、ウクライナは崩壊するだろうと論じている。
この戦いは長期化する。
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著者の本は、いくつか読んできて、視点の鋭さと深さに感銘を受けてきました。
昨年は大分断を読み、次に読もうと思っていた本。
読者が本書を読んで、再現するのは難しいが、著者の考え方がよく分かる内容。
一般のビジネスパーソンにも必要な考え方が盛り込まれており、大局観や長期視点を得るために必要な要素が散りばめられている。
参考になった内容は下記の通り。
・直感やアイデアが浮かばない理由
①自分の中に無意識でランダムな考え方がない
②ある考えが許されない・出来ない社会となっている可能性がある
・グループシンク
小さなアトム化した信条を、拠り所にする人々が溢れている
・現実を直視する条件として「外在性」が必要
・マイケル・ヤング「メリトクラシーの法則」
・未来を見たいなら、歴史的な観察から考察するのは必要不可欠(長期的な傾向を捉える)
・相関係数が0.9となったら、重大な間違いを犯しているかもしれないと気づくべき
(社会科学では不完全な数値が含まれるため、相関関係を弱める)
・価値観ではなく、知性の戦いが重要(アウトプットでの戦い)
・大学では思考することを学ぶが、同時に、自由に思考することを阻止する
・人間というのは不穏な事態に目をそらす能力を備えている
・思考から予測のフェーズ
経験主義→対比→芸術
・知識人に必要なのは、プロフェッショナリズムである
・芸術的な学者の条件は、リスクを負う、思い切る勇気がある
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久しぶりの社会観や文明論といった大きな枠組みを論じた本。Globalization は不可逆な流れであり自由貿易は促進するべきである、保護主義は内向きな排斥主義であり移民の流入制限は排斥運動だ、という世の中の流れに対し、
過剰な自由化によりGlobalization fatigue(グローバリゼーション疲れ)が起きている、globalizationを抑制しても世界化(mondalisation)は消えないし、適切な保護主義は有用、移民の一定程度の抑制は国家という単位に帰属意識を持つ上で必要、等カウンターの意見を次々と提示する。
「フリードリヒ・リストの保護主義の定義によると、それは自由主義の一端でありながら、国家(ネーション)の存在を認めるもの」(p117)という保護主義の捉え方は、自由貿易を礼賛しトランプの関税戦争を馬鹿げていると一顧だにしない今日では偏見を打破する上で重要。
能力主義については階級化を招いているという主張はサンデルの本を最近読んだこともあり新鮮味はなかったが、国家という運営単位を維持する上で現在最有力になっている指針である、と考えると、国家の帰属意識の揺らぎを説明するピースになっている思う。
宗教論争に隠れて社会の本当の問題である階級格差の拡大に目が向かないのが問題、という点は、BLMなどの人種対立やPCによるキャンセルカルチャーに連日のニュースが支配されて社会の格差にいつまでも目を向けられないアメリカにも深く刺さる指摘。
トランプ後のアメリカ然りブレグジット然りどの国も新しい国家像や指針を見出せていない中、こうした既存の価値観に対する疑義はとても納得感がある。
保護主義や移民に対するネガティブな意見を民主主義の要素として肯定するなど、国家を基準とした見解が多く、殊更にグローバル化や既存の枠に囚われない企業個人を賞賛する今日では珍しい。民主主義を実現する社会単位として国家はまだまだ基盤となると改めて思わされる。
読んでいると歴史は繰り返す、という見方を改めて思い知る。国家という伝統的な単位を視点に置き、社会階層が流動化すると混乱が起き、また新しい階層が生まれ、、という波の繰り返しに現代も当てはまるように感じた。
新書で社会分析をするとどうしても論拠が書ききれず、アメリカや日本ついての見解には首を傾げる部分もあるが、広い視点を得る上で読んで良かった本。
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先入観や偏見を避けるために、事実やデータから入ることが大切である。「データを十分に時間をかけて痛めつければ、希望する情報が得られる」と言うけれど、使う人が善良であれば、善良な人には届くと思う。
どれだけデータと情報が正しくても、先入観や偏見の強い人には届かない。そこをどう対処しているのかが気になった。読み取れていないだけかもしれない。
さらに、論理だけでなく熱い心も持っている。それゆえに軋轢を生み、大勢の敵を作ることもあるが、心がしっかりしているので揺るがない。本当に強いなあと思う。挙げられていた著作も読もうと思う。
著者はとにかくよく読む。まずはそこから真似したい。
若い頃はつぶすほどの時間があったが本を読んでいればよかったなあと思う。子供には「本を読め」というのではなく、自然に読みたくなるように働きかけているが、それを続けてかつ改善していきたい。 -
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著名な歴史人口学者の思考の仕方を整理した本。
本国では、(本人いわく)敵が多いせいか、日本人向けオリジナルというのがよい。
下記の項目を一つひとつ自分や他者の作品にふれながら語る。
入力
対象
創造
視点
分析
出力
倫理
未来
入力から出力までのところは、大量のデータを仕入れて、創造的知性によってモデルをつくって、検証する、という流れが、自分にはしっくりくる。
以下、重要と思ったところ。
・歴史とデータが重要という見解は共感する
・彼の分析の仕方では、数字の裏に人がいることを読み取る。「統計的想像力」というのは面白い
・著者にとって書くことのイメージが変化してきたこと。肉付けしながら書く。か、頭の中でモデルを構築してディクテーションする。どちらが良いというのではないが、頭の使い方のバリエーションという点では参考になる。自分はそもそも後者の方が馴染むかもしれない。
・倫理を研究者としてつらぬくというのはおかれた大学のようなコミュニテイに環境適応することではない。研究の良否に忠実になること。価値判断は不要
・ポストコロナで思想は変わらない。深刻化するのみ。エイズの時との比較が芸術家になる前に必要
・予測が得意というのはなかなか言いづらいもだが、最後や勇気をもつということだといっている。なお。予測は創造的知性とは異なる -
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文中で色々な学者、政治家に対する批判や、自身に対する批判も出てくる。学者の考え方、学説の違いは、そこに至る基本的な考え方、社会に対するスタンスの差による事が分かる。作者の「思想ではなく事実から始めよ」「思想やイデオロギーが出発点にあると…それに合致した事実ばかりに注目し、前提にそぐわない事実を排除してしまい…結果として自分の考えに合わせて現実を歪めてしまう…まともな研究と言えない」「ひたすらにデータを収集し事実の積み重ねの中からやがてモデルを生み出していく」というスタンスから、ソ連崩壊、リーマンショック、英国EU離脱が予見出来たと。学者はかくあって欲しい。
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Posted by ブクログ
教育の高度化が進み、高度教育を受ける層が増えなくなってから、教育は同じ層を再生産することになっており、分断を作り出している。そのことにより、エリートと大衆は分断され、民主主義は崩壊している。民主主義といっても、家族制度が違うアングロサクソン、日本とドイツ、ロシアといったところでは違うルートをゆく。格差を生み出すのは行き過ぎたグローバル化であり、保護主義とは自由主義の一種であり、全体主義とは全く違う。
EUはドイツに支配されており、ドイツや中国の推し進めるグローバル化によって世界的な分断を生み出しているのだと思った。分断とは、それぞれがポジショントークに終始し、それぞれの層が固定化することであり、それでは民主主義は機能しないのだと思った。