大野舞のレビュー一覧
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識字率の上昇、義務教育の普及が民主主義の基礎を作ったということも事実ながら、高等教育の普及による教育格差が社会の分断を生み出し、民主主義を破壊するというパラドクシカルな現実を告発するエマニュエル・トッドの明敏さ。
人類は歴史上初めて、先進国の教育において、女性が高等教育を受ける比率が男性のそれを超えるという時代を迎える、とトッドは指摘する。
現在私たちがいかなる意味で歴史上大きな転換点に立っているかを明晰に教えてくれる著者に感謝。
トッドの深い人間知を垣間見せるフレーズを引用しておく。
ある人が「支配階級はただお金を稼ぎたいのだろう」と言ったのに対して、トッドはそうではないと答える。ありふれた庶民は生活のために働き、生き延びるという、ある意味シンプルな幸福がある生活をしている。
「私は人間とは生きるようにできているのではなく、生き延びるようにできているのだと思っています。つまり、精神的な問題は、お金がありすぎてその使い道に困っているような人々に表れるのです。だからこそ、二十世紀の重要な理想や思想の全てが崩壊した現代社会というのは、非常に気がかりな状態にあるのです。」 -
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銃声が響かずとも戦火はすでに広がっている。経済制裁、情報操作、サイバー攻撃――現代の戦争は形を変え目に見えぬ闘いとなった。国家同士の衝突は表面に過ぎず裏で糸を引く存在がある。現代の国際対立の本質を鋭く指摘する。
『帝国以後』ではアメリカの衰退を、『家族システムの起源』では文化と政治の関係を論じた。彼の分析は権力の集中と富の独占を目的とする勢力の存在を浮かび上がらせる。
最も危ういのは私たちが無関心になること。分断を受け入れ疑念を抱かず声を上げなくなった時真の敗北が訪れる。
気づくことから始まる。見えない敵に立ち向かうためにまずは事実を見極め冷静に考える力を取り戻さねばならない。
それにしても日本政府は、日本外交は。
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例によって、エマニュエルトッドのアメリカ嫌いが出てる。
・家族構造とイデオロギーは一致する。ロシア人は、トップダウンの指示に従う共同体意識が、共産主義を生んだ。例えば、ロシアは結婚した後も、じーさんばーさんと夫婦が一緒に暮らす。兄弟間で差は生まない。長男優遇しない。
・これにより、スターリンはロシアの農業集団化は苦労しなかったが、ウクライナ中部は苦労した。そして農民皆殺しにした。ソ連時代はウクライナもソ連だからね。
・ソ連はそもそも、ロシア主導の強制的な併合である。ウクライナもバルト三国も軍事力で制圧された。
・現在のロシアは部分的な資本主義。石油ガスは国営。経済は資本主義だが、政治は共産主義である。中国、ベトナム、キューバも同様。
・政治の共産主義下では、政権交代がなく、政府批判もできず、司法も独立してない。つまりは、一党独裁で選挙は存在しない。政府を批判したら投獄される。中国では、TwitterやGoogleは禁止されており、習近平が次の総裁を決める。
・ウクライナは「国家」という伝統がない。言語や宗教が地域によってバラバラである。ロシア侵略前から破綻国家である。
・ウクライナという名前自体、スラブ語で「辺境の地」を表す。他国の支配を受け続けた地域であり、国家として独立した期間が短い。1991年のソ連崩壊で、初めて独立。
・ウクライナには「安価で良質な労働力」があり、西欧諸国はこれを使った。ゆえに人口は12%減少。優秀な若者ほど、ウクライナから出ていく。
・ウクライナ戦争は、家族構造の違いからくるのかもしれない。核家族社会(父権性ゼロ→アメリカ、イギリスなど)、中間ゾーン(ドイツ、日本)、共同体主義的父権性社会(父権性が強い→ロシア、中国)。
・父権性がゼロとは、祖父母と同居せず、父の権力弱く女性の地位が高め、子供は不平等に接する。
・父権性が強いとは、祖父母と同居して、父の言うことが絶対で、女性の地位が低く、子供は平等である。
・ドイツと日本は、アメリカに征服されて、核家族化された。事実、サザエさんなんて、父権性社会の極みな感じだしね。
・ロシアは父権性社会だが、中国に比べても女性の地位は高い。進学率とか。要因はキリスト教。聖母マリアの影響である。キリスト教の中では、女性の地位が高め。
・アメリカのGDPは一部虚構である。例えば、アメリカは裁判が多い。そこで得た弁護士の収入もGDPに入る。一方、日本は裁判が少ない。的なね。モノを生産できる能力が思ったよりアメリカにはない。事実、ウクライナ相手にも貿易赤字になっている。 -
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エマニュエル・トッド氏と池上彰氏の対談本。
ウクライナ戦争について、「ロシアが悪」という画一的な見方に疑問を投げかける。
ウクライナ戦争は、ロシアとアメリカの代理戦争の様相を呈しており、長期化するだろうとの見立てだったが、トランプ政権が誕生したことにより、状況は変わりそうだ(この対談は2023年に行われた模様)。
トランプを見ればわかるように、アメリカはもはや「良いことをしよう」という気がないことを隠そうともしておらず、国力も落ちてきている。そんな中で、日本は今まで通りアメリカにただ追随していて大丈夫なのかという不安を禁じえない。
西側諸国ではあたかも「狂人」のように言われるプーチンだが、世界的に見るとロシアに賛同する国々が多いこと、そこには人類学的な家族構造のありかたなども影響するのではないかとの指摘は新鮮だった。
トッド氏自身はリベラルだが、世界的にはLGBTなど性的少数者には保守的な国々が多い中、セクシャルマイノリティであることをアイデンティティの中核に置きすぎることへのバックラッシュが起きうることを指摘している。
アメリカは、国内は自由主義的だが、自由主義や民主主義を他国に押し付けてきた。一方ロシアは、国内は権威主義的だが、他国の多様性は尊重する姿勢を見せている。そのようなところも、ロシアを支持する国々には魅力に映るのだろう。
プーチンはもちろん悪いのだが、かと言ってアメリカが善かと言うとそうでもなさそう。国どうしのメンツを賭けた争いで、今日もたくさんの人が亡くなっている。しかも争っている国の国土ではない場所で…
アメリカは自国が戦場になったことがないから好戦的なのだという指摘はすごく腑に落ち、そういった視点で、自分も「アメリカフォビア(米国嫌悪)」が沸き起こるのを感じた。 -
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ネタバレ3. 創造
p.114 本を出版したときも、どこの国の誰かもわからない人たちからポジティブな批評が届き、それに励まされたりしました。このように誰かによる温かい励ましというのが常にあったからこそ進んでこられたのだと思います。
4. 視点
p.120 社会をよりよく理解するための条件として挙げれるのは、個人的な経歴や出身地などにおいて、その社会の外側に属している部分があると言うことです。いわゆる、「外在性」です。文化的な意味で社会との間に不一致を抱えていたり、外国出身だったり、あるいは宗教などにおいてマイノリティに所属していたり、とにかく一部が社会の外側にいると言うことが重要です。
p.131 過去の書物を読むことで、現在に囚われない一歩ひいた視点を持つことが可能になるわけです。
5. 分析
p.165 アメリカの社会学者C・ライト・ミルズの著作に「社会学的想像力」というものがありますね。ごく単純に言えば、社会学的想像力とは、個人が日常生活で直面するようにな様々な困難を、社会の構造変化といったマクロな文脈で捉えるような視点を持つことです。
6. 出力
p.177 友達に書くことを目的として、どんどん書いていった結果文章を書けるようになった。
p.178 書きながら考えることはない。 -
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なるほどな〜 こういう見方をする人もいるのか〜と、新鮮な発見があった
筆者は言わずとしれたエマニュエル・トッドさん
フランス人の政治学者
本書では、ウクライナとロシアの戦争について。すでに第三次世界大戦は始まっている!と筆者は説く。
たしかに、ウクライナのバックにはアメリカとイギリスがいる。
兵士訓練と武器供与を行っているのだから、これはちょっとした世界大戦と言っても良いのかもしれない
そもそも、私たち日本人は西側の人間だ
ウクライナに関するニュースというのは、基本的には西側からの観点で伝えられる
ロシアにはロシアの言い分がある
戦後から世界秩序のためにコストを払い続けてきた 本来はロシアなりのプランがあった それが果たせずに、侵攻を開始した…というのが筆者の持論なんだけど、ちょっと世界をフェアに見すぎている気はする
つまり、戦争犯罪を軽んじている
さすが、本国フランスでは出版できない内容…
アメリカは世界で戦争をしていてほしい 軍事大国として君臨し続けるため
その視点は確かに… と思わざるをえない
さらに筆者が言う、日本が核保有すべきとの主張は、納得感がある
核保有は戦争をするためではなく、戦争ゲームから逃れるため
さすがのエマニュエル・トッドさん
サラッとカジュアルに、地政学的な現況を解説する
ロシア寄りと感じる読者もいるかも知れないけれど、国際政治の書籍としてオススメと言えばオススメ -
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ネタバレ2000年代
ロシア :プーチン政権下 安定化した保守的な社会
ウクライナ:破綻
ロシアへの恨み バルト三国、ウクライナ、ポーランド
現在
欧州 :ジャーナリズムという信仰 抽象的な自由 嫌ロシア
アメリカ:ドイツをロシアから引き離す? 戦争への嫌悪感なし
中国 :「平和」で中心に近寄る
ウクライナ戦争で西側は「現実=リアリティー」と直面
親族システム
アングロサクソン、フランス、北欧 :核家族
ロシア、中国、アラブ他 75%の国 :父系、共同体家族
日本、ドイツ :中間的 男子長子以外が自由な個人
世界は多様化
西側 :リベラルな価値観の押し付け
ロシア :権威主義だが、他国の国家主義を容認
アメリカ一強へのロシア、中国の異議
グローバルサウスはロシアに近い
アメリカ:寡頭制の台頭 民主主義の衰退
アメリカが脱落するかが真の問題
無責任な行動の終息が 世界の平和へ -
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内容は、E.トッド氏が、以前からその著書(『第三次世界大戦はもう始まっている』)で言っていたことだ。その主旨は、
「いま起きている戦争の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある」ということです。」
前著が2022年6月のこと。1年を経て、ようやくその意見を、日本でも、一般に知られていて、メジャーな池上彰氏が取り上げ、対談をし、その内容が上梓されるようになった。
もとより、専門家でなくても、多くの知識人はその意見を理解してはいただろう。ただ、それを公に発言することがハバカレルか、あるいは聞いてもらえない時合いだったのだろう。ここに来て、少し風向きが変わってきたのかな?
「反ロシア感情、ロシア嫌いの感情というのは政治家の間ではなくて、ジャーナリストたちの間で始まっている」
と、サンフランシスコ州立大学教授アンドレ・ツィガンコフの意見を紹介しつつ、今の世論を形成するメディアも批判している。冷静に情報を分析した報道ではなく、ウケるニュースを垂れ流している責任は重い。
とはいえ、そんな耳障りの良い、自分の欲する情報しか耳に入れない国民にも非はあるとも思う。
ロシアの危機、プーチンの凋落という、西側の大半が求める方向の報道ばかりに耳を傾けていると、今後の判断を誤るだろう。
池上氏も、「実は一番の危機は、アメリカの危機ではないのか。」と。
さらには、
「ウクライナでは大変な苦戦をしている。つい私たちはそこだけを見てしまうんだけど、もっと広い、長いスパンで見ると、実はロシアの世界戦略が成功しつつあるのかもしれないということですね。」
お茶の間の人気者の池上氏にこう言わしめた、トッド氏との対談は価値がある。 -
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第二次世界大戦の結果、生まれたウクライナは独自の言語と文化とを持つ独立国ではあるが、フルシチョフ時代にプレゼントされたクリミア半島にはロシア語しか話せない住民が多かった。マイダン革命と称する選挙によらない権力移動で来たEU寄りの政権がウクライナ語を話せない者を公務員失格とし上司に昨日までの民族主義テロリストを充てたことからおとなしいロシア系住民も怒った!クリミア半島制圧が容易だったのはそのせいだろう。
超大国とは好き勝手できるらしくアメリカは21世紀になってからもアフガニスタン、イラク、ソマリア、などで軍事行動してきた/ロシアはなぜ嫌われて -
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筆者の経歴からしても歴史贔屓が強い面はあるとは思うが、他の学問やビジネスにも適応できるような思考法を、噛み砕いて記述している本だと思う。ただ、本の執筆テーマに沿って筆者の過去のエピソードの挿入が多く、主題がとっ散らかってかえって読みにくいところも。
筆者の主観的な要素が強い本という点は注意しつつ、総じて四章あたりまでの内容は、これから論文やレポートを初めて書くという大学一年生におすすめしたい本(ファクトファースト、思考から予測への三つのフェーズ等)。作成方法のヒントだけでなく、大学で論文やレポートを執筆する意味や価値を見い出すことができるかも。
p.197に登場した「Hours de moi」(理性を失うこと。直訳すると「自分の外にいる」)は、初めて知ったが、面白いフランス語のフレーズ。この本のここまでにいたる主張に基づくなら、理性を失う状況はむしろ、「自分の内に籠もり、外が見えていない状態」であるという気がするが、対比的にも見える表現をあえてここで登場させているのかな?