大野舞のレビュー一覧
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ロシアvsウクライナの戦争は、権威的民主主義陣営vsリベラル寡頭制陣営の対立が背後にある。後者の先鋭がアメリカ・イギリスであり、彼らはウクライナ人に軍事支援を行うことで、自らの手を汚さずにロシアと戦争をしているのである。よってヨーロッパを舞台にした世界戦争はすでに火蓋を切ったというのが、著者の見解である。
著者は家族構造や宗教・教育のシステムから政治や経済を論じるスタイルを得意としており、本書においてもその手腕が如何なく発揮されている。種々の媒体での発言や記事の寄せ集めのため、体系的ではないが、一貫性は有る内容になっているように感じた。
アメリカ・イギリスなど、いわゆる『自由民主主義』的な -
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ウクライナ戦争勃発時、西側諸国はロシアに対し、経済制裁によって瞬く間に屈服するという幻想を抱いていた。しかし、その目論見は大きく外れる。
ロシアはクリミア侵攻以降の経済制裁を教訓に、国内産業構造を強靭化し、西側から独立して存立しうる体制を築き上げていたからだ。
米国の「滑稽さ」とロシアの強靭さ
一方、ウクライナ戦争における西側のリーダーを自負しながら、物資の製造・供給すら満足に行えないアメリカの現状は、著書の中で「滑稽」と厳しく批判されている。経済的な実力差にとどまらず、乳幼児死亡率などの社会指標においてもロシアが優位であるという指摘は、西側社会が抱える問題の根深さ、およびそれを自覚できな -
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多くのマスコミの論調(主にアメリカのリベラルなマスコミに通じる)とは異なる著者独自の視点(家族構造からみた国家観や欧米の宗教観)及びフランス人から見たヨーロッパ、ロシア、アメリカの見識から本書はマンネリな読者(もちろん私も)の思考に刺激を与える。
ロシアのウクライナに対する侵略が単なる領土拡大ではなく安全保障の観点から追い込まれたという親ロシア的な見方には、安全保障という概念が結果として領土拡大ないし利権の確保になったことは歴史が証明しているのでは?また、法の支配や国際法に関してスルーしているのは気になるところ。
ただプロテスタンティズムの衰弱が信用経済にどっぷりつかってアメリカの工業力の低下 -
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個別の議論は理解できても論点が多く、それらが相互連関しており、全く日本人の通説的なところと違う視点から切り込んでくるので、全体として非常に難解で一度の読書で消化できる内容ではない。
基本的にはアメリカを中心とする(日本も含む)西欧社会が終わりに向かっているということで、一番の要素を宗教→プロテスタンティズム→金と権力だけの宗教ゼロ状態という西欧の流れが自己利益だけのエリートと民衆の分断を招いているという指摘。これは、日本社会も含めてモヤっと思っていることを言い当てたのかもしれない。そして、そうした利益社会は即物的な戦争に走りやすいと。
また、そうした傾向は現物経済よりも、法律家・金融家とい -
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識字率の上昇、義務教育の普及が民主主義の基礎を作ったということも事実ながら、高等教育の普及による教育格差が社会の分断を生み出し、民主主義を破壊するというパラドクシカルな現実を告発するエマニュエル・トッドの明敏さ。
人類は歴史上初めて、先進国の教育において、女性が高等教育を受ける比率が男性のそれを超えるという時代を迎える、とトッドは指摘する。
現在私たちがいかなる意味で歴史上大きな転換点に立っているかを明晰に教えてくれる著者に感謝。
トッドの深い人間知を垣間見せるフレーズを引用しておく。
ある人が「支配階級はただお金を稼ぎたいのだろう」と言ったのに対して、トッドはそうではないと答える。ありふ -
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当たり前で当然と思っていたことが、これほど違うことを思い知らされるのは久しぶりだ。
毎日、新聞を読みニュースやネットで人一倍世の中の動向を知ろうとしていたはずであった。
にもかかわらず、こんな思いもよらない真反対の見方を示され同感し納得してしまう自分に驚く。
ウクライナ戦争は5年くらいでロシア勝利で終わる。ロシアはドイツと関係を深め安定度を増す。
アメリカは新自由主義のグローバリズムによる金融偏重で産業基盤がますます悪化する。格差が拡大しリベラル寡頭制(エリート主義)で世界の一極支配も完全に終わり多元化した世界で混乱の元になる。
フランスやイギリスなどの西洋社会はNATOやEU・ユーロが限界 -
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銃声が響かずとも戦火はすでに広がっている。経済制裁、情報操作、サイバー攻撃――現代の戦争は形を変え目に見えぬ闘いとなった。国家同士の衝突は表面に過ぎず裏で糸を引く存在がある。現代の国際対立の本質を鋭く指摘する。
『帝国以後』ではアメリカの衰退を、『家族システムの起源』では文化と政治の関係を論じた。彼の分析は権力の集中と富の独占を目的とする勢力の存在を浮かび上がらせる。
最も危ういのは私たちが無関心になること。分断を受け入れ疑念を抱かず声を上げなくなった時真の敗北が訪れる。
気づくことから始まる。見えない敵に立ち向かうためにまずは事実を見極め冷静に考える力を取り戻さねばならない。
それ -
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例によって、エマニュエルトッドのアメリカ嫌いが出てる。
・家族構造とイデオロギーは一致する。ロシア人は、トップダウンの指示に従う共同体意識が、共産主義を生んだ。例えば、ロシアは結婚した後も、じーさんばーさんと夫婦が一緒に暮らす。兄弟間で差は生まない。長男優遇しない。
・これにより、スターリンはロシアの農業集団化は苦労しなかったが、ウクライナ中部は苦労した。そして農民皆殺しにした。ソ連時代はウクライナもソ連だからね。
・ソ連はそもそも、ロシア主導の強制的な併合である。ウクライナもバルト三国も軍事力で制圧された。
・現在のロシアは部分的な資本主義。石油ガスは国営。経済は資本主義だが、政治は -
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エマニュエル・トッド氏と池上彰氏の対談本。
ウクライナ戦争について、「ロシアが悪」という画一的な見方に疑問を投げかける。
ウクライナ戦争は、ロシアとアメリカの代理戦争の様相を呈しており、長期化するだろうとの見立てだったが、トランプ政権が誕生したことにより、状況は変わりそうだ(この対談は2023年に行われた模様)。
トランプを見ればわかるように、アメリカはもはや「良いことをしよう」という気がないことを隠そうともしておらず、国力も落ちてきている。そんな中で、日本は今まで通りアメリカにただ追随していて大丈夫なのかという不安を禁じえない。
西側諸国ではあたかも「狂人」のように言われるプーチンだが -
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ネタバレ3. 創造
p.114 本を出版したときも、どこの国の誰かもわからない人たちからポジティブな批評が届き、それに励まされたりしました。このように誰かによる温かい励ましというのが常にあったからこそ進んでこられたのだと思います。
4. 視点
p.120 社会をよりよく理解するための条件として挙げれるのは、個人的な経歴や出身地などにおいて、その社会の外側に属している部分があると言うことです。いわゆる、「外在性」です。文化的な意味で社会との間に不一致を抱えていたり、外国出身だったり、あるいは宗教などにおいてマイノリティに所属していたり、とにかく一部が社会の外側にいると言うことが重要です。
p.131 -
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