大野舞のレビュー一覧
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【内容】
2020年に行われた日本に向けたインタビューをまとめた書籍。高等教育の階層化がエリートと大衆の分断と対立、ポピュリズムの台頭を招いていると、トッド氏は指摘する。またグローバリゼーションによってエリート層が富を増大させる一方で大衆が疲弊する「グローバル化疲れ」の問題を指摘し、その対策としての保護主義の必要性を主張する。
【感想】
トッド氏の著作の中では比較的わかりやすいように思われたが、それが文章によるものなのか、私が慣れてきたからなのかはわからない。
現在の反グローバリゼーション、ポピュリズムの台頭といった現象を論理的に説明するトッド氏の分析は、わかりやすく納得性も高い。自由貿易に -
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「西洋の敗北」フランスの統計、人類学者の著者が、西洋とその他の世界で今何が起こっているかを解き明かす。
まず、前提としてトッドは人類学と地政学、統計の視点を組み合わせて現在の世界を読み解いている。
「敗北」は単純な戦争での勝ち負けを示すものではないことに留意。
2022年から始まった、ロシアのウクライナ侵攻からすでに4年。西側のあらゆる経済制裁もロシアを止められず、モスクワでは未だほぼ以前とかわらない生活レベルが保てている。なぜか。
西洋は、すでに宗教ゼロ状態に陥っており、個人主義の台頭とともに倫理観ゼロ社会とも言える状態となっている。富の集中による中流階級の崩壊とともに経済の空洞化も進み、み -
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ネタバレ1. 西洋の「敗北」の定義とウクライナ戦争
・ウクライナ戦争は単なる局地紛争ではなく、「西洋対ロシア」のグローバルな宗教・文化戦争へと変質した。
・当初、西洋側は経済制裁でロシアが崩壊すると予測したが、実際にはロシア経済は耐え抜き、逆に西洋側の兵器生産能力の不足(脱工業化の弊害)が露呈した。
・この軍事・経済的なミスマッチこそが、物理的な意味での「西洋の敗北」の始まりであると指摘する。
2. 米国の衰退:虚業化と「ニヒリズム」
・米国の衰退の根本原因は、かつての繁栄を支えたプロテスタントの倫理の消滅にある。
・宗教的バックボーンを失った米国は、教育水準の低下(特に理数系)と乳児死亡率の上昇と -
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日々の報道は、基本的に欧米視点のものが多い中で、
・ロシアがどういう歴史的経緯と発想のもと動いているのか
・私の中で、アメリカとヨーロッパは一緒には考えられないという認識はあるものの、同じEU内であったとしてもヨーロッパ各国それぞれ考え方や状況、ロシアに対する気持ちなどがこれほど異なるのかということ(イギリスは今はEU内ではないけれど、含めて)
・教科書的には何となく分かってはいたものの、プロテスタンティシズムが近代世界の形成にどいいう役割を果たしてきたのか、またそれが抜け落ちた時にどういう結果につながるのか。
・ガザの戦争とウクライナの戦争との関係性についても、日本の報道を見ていたらそれぞれ -
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西洋の敗北とは、権威主義国家など他世界に対する敗北ではなく、民主主義国家自体が内部崩壊していくこと示し、すでに西洋は民主主義でも国民国家ですらも無くなってしまっているとの激しい主張。宗教ゼロの状態がエスタブリッシュメントのモラルや道徳を無くし、そこからさらに進んで現実を否定して暴力的な衝動を持つニヒリズムの傾向を見出す。ちなみに生物学的に染色体で雄雌は決まるのだからトランスジェンダーを認めることはニヒリズム的ということになるらしい。アメリカのパワーバランスによって安全保障を成り立たせている国は非常に多いはずであって、筆者が言うように本当にアメリカ自体が経済的にも軍事的にも衰退しているとすれば、
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フランスの歴史学者であり人類学者であるエマニュエル・トッド氏によるウクライナ侵攻の地政学分析書。15ヶ国以上で翻訳されているベストセラーにも関わらず、英語圏では未出版という曰く付きの書籍。奇しくも2025年8月16日の米トランプ大統領と露プーチン大統領の会談の日に読む。予測の正確性と的確さに驚かされる。
ウクライナ侵攻とは単なるロシアによる侵略戦争ではなく、ロシアの一貫した政治的態度に対する脆弱化した西洋の敗北であると著者は主張する。西洋側にいるとロシア₌絶対悪かつ不利な立場の報道を日々受け取るが、実態はロシアは国家として安定しており、NATOに対する脅威から2014年のクリミア半島併合問題が -
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ネタバレ作者は、ウクライナの敗北、プーチンの勝利を予想している。感情論を横に置けば、頷けなくもない。
敗北の起因は、西洋の「プロテスタンティズム・ゼロ」状態による道徳的、社会的に崩壊にあるとする。特に、アメリカの衰退は不可逆的性を確実なものになったとしている。
そのことは、トランプを大統領に選出したアメリカの不可解さを説明しているように感じた。
印象に強く残ったのは、パレスチナ問題に対する西洋の対応が、「その他の世界」を親ロシアにしたと述べている点だ。数年前には違和感を感じたであろうが、今のトランプを選択するか?ということから、あり得ることであろう。
グローバリズムを全面的に肯定はしないが、右翼化 -
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ロシアvsウクライナの戦争は、権威的民主主義陣営vsリベラル寡頭制陣営の対立が背後にある。後者の先鋭がアメリカ・イギリスであり、彼らはウクライナ人に軍事支援を行うことで、自らの手を汚さずにロシアと戦争をしているのである。よってヨーロッパを舞台にした世界戦争はすでに火蓋を切ったというのが、著者の見解である。
著者は家族構造や宗教・教育のシステムから政治や経済を論じるスタイルを得意としており、本書においてもその手腕が如何なく発揮されている。種々の媒体での発言や記事の寄せ集めのため、体系的ではないが、一貫性は有る内容になっているように感じた。
アメリカ・イギリスなど、いわゆる『自由民主主義』的な -
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識字率の上昇、義務教育の普及が民主主義の基礎を作ったということも事実ながら、高等教育の普及による教育格差が社会の分断を生み出し、民主主義を破壊するというパラドクシカルな現実を告発するエマニュエル・トッドの明敏さ。
人類は歴史上初めて、先進国の教育において、女性が高等教育を受ける比率が男性のそれを超えるという時代を迎える、とトッドは指摘する。
現在私たちがいかなる意味で歴史上大きな転換点に立っているかを明晰に教えてくれる著者に感謝。
トッドの深い人間知を垣間見せるフレーズを引用しておく。
ある人が「支配階級はただお金を稼ぎたいのだろう」と言ったのに対して、トッドはそうではないと答える。ありふ -
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当たり前で当然と思っていたことが、これほど違うことを思い知らされるのは久しぶりだ。
毎日、新聞を読みニュースやネットで人一倍世の中の動向を知ろうとしていたはずであった。
にもかかわらず、こんな思いもよらない真反対の見方を示され同感し納得してしまう自分に驚く。
ウクライナ戦争は5年くらいでロシア勝利で終わる。ロシアはドイツと関係を深め安定度を増す。
アメリカは新自由主義のグローバリズムによる金融偏重で産業基盤がますます悪化する。格差が拡大しリベラル寡頭制(エリート主義)で世界の一極支配も完全に終わり多元化した世界で混乱の元になる。
フランスやイギリスなどの西洋社会はNATOやEU・ユーロが限界 -
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銃声が響かずとも戦火はすでに広がっている。経済制裁、情報操作、サイバー攻撃――現代の戦争は形を変え目に見えぬ闘いとなった。国家同士の衝突は表面に過ぎず裏で糸を引く存在がある。現代の国際対立の本質を鋭く指摘する。
『帝国以後』ではアメリカの衰退を、『家族システムの起源』では文化と政治の関係を論じた。彼の分析は権力の集中と富の独占を目的とする勢力の存在を浮かび上がらせる。
最も危ういのは私たちが無関心になること。分断を受け入れ疑念を抱かず声を上げなくなった時真の敗北が訪れる。
気づくことから始まる。見えない敵に立ち向かうためにまずは事実を見極め冷静に考える力を取り戻さねばならない。
それ -
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例によって、エマニュエルトッドのアメリカ嫌いが出てる。
・家族構造とイデオロギーは一致する。ロシア人は、トップダウンの指示に従う共同体意識が、共産主義を生んだ。例えば、ロシアは結婚した後も、じーさんばーさんと夫婦が一緒に暮らす。兄弟間で差は生まない。長男優遇しない。
・これにより、スターリンはロシアの農業集団化は苦労しなかったが、ウクライナ中部は苦労した。そして農民皆殺しにした。ソ連時代はウクライナもソ連だからね。
・ソ連はそもそも、ロシア主導の強制的な併合である。ウクライナもバルト三国も軍事力で制圧された。
・現在のロシアは部分的な資本主義。石油ガスは国営。経済は資本主義だが、政治は -
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エマニュエル・トッド氏と池上彰氏の対談本。
ウクライナ戦争について、「ロシアが悪」という画一的な見方に疑問を投げかける。
ウクライナ戦争は、ロシアとアメリカの代理戦争の様相を呈しており、長期化するだろうとの見立てだったが、トランプ政権が誕生したことにより、状況は変わりそうだ(この対談は2023年に行われた模様)。
トランプを見ればわかるように、アメリカはもはや「良いことをしよう」という気がないことを隠そうともしておらず、国力も落ちてきている。そんな中で、日本は今まで通りアメリカにただ追随していて大丈夫なのかという不安を禁じえない。
西側諸国ではあたかも「狂人」のように言われるプーチンだが