上村裕香のレビュー一覧
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どうしようもない恋心と、笑いへの探究心の物語。
言語学を学びながら一人の女性に恋をする大学生「耕助」と、大学のお笑いサークルで注目を集めるコンビのボケ担当「四郎」。似ているようで違う性格の、どこか同じ痛みを抱えた二人が、それぞれの場所でもがきながら「笑い」と向き合っていく。
現実に打ちのめされても足掻き続け、理不尽に揉まれても自分の「ことば」から逃げなかった姿が、真っ直ぐで純粋だった。不器用なのに、どうしようもなく格好良かった。
似たり寄ったりな不器用さを抱えた二人が、お笑いを通して惹かれ合っていく関係性もとても魅力的だった。立場が違っても、相方でなくても、どこかソウルメイトのように感じ -
いやーこれはしんどいね
図書館ではティーンズに分類されてたけど大人が読んでもしんどい
ヤングケアラー問題というだけではすまない問題を抱えた少女が子供は親のものじゃないと気づくまでの物語だけれどとにかく壮絶
親だからとがんじがらめになっていく姿にやはり手を差し伸べられる大人がいるべきとは思う -
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1)救われてんじゃねえよ
深刻な家庭環境の酷さに苦しくなるが、ドライな文章で最後に笑わせてくれる。いや、これは笑わないとやってられないという状況を表しているのか。この著者只者ではないなと感じる。
2)泣いてんじゃねえよ
ヤングケアラーという言葉ができる以前からケアラーであった主人公。親元を離れて暮らし始めたらもう“元”ヤングケアラーなのか?
そんなことは全然なくて久々に実家に帰ったら依然として家族に頼られ依存され現役ケアラーである。しかし主人公が離れている間は両親だけで暮らしが成り立っていた痕跡は見える。就職活動を邪魔されたりまたいろいろ酷いがちょっとだけ光が見える、そんな章。
3)縋って -
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ネタバレ衝動買い。「警報級の大型新人」ということで、お手並み拝見と読ませてもらいました。母親を介護する主人公の学生〜社会人なりたての間の3つの短編。家族に対して若者特有の鬱陶しがりがあったり逆に愛しく思ったり、主人公の日常生活の中で感情が揺れまくる。就職しても介護で忍耐力がついてて、同期が辞めても頑張ってふつうの若者なら辛い仕事も耐えられちゃう。
面白かったのは、主人公の親がどうしようもない毒親なんだけれど、主人公がそれを「私は悲劇のヒロイン」とせず、そんな親を認めてお世話しまくり。就職してからは、主人公も親離れができて『この娘は今後、自分の人生をたくましく生きるんだ』と読者を安心させてくれます。この -
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ただひたすら辛かった
ところどころ自分の境遇と似てる箇所があってなお辛い。
自分の親がひたすら自分に寄りかかってくるのは、周囲が思うよりも辛い。けどかといって周囲に可哀想とかそんな同情の目で見られるのも嫌い。だって、些細なことでみんなで笑ってくだらない時間こそ愛しかったりするから。
私の人生は私のものだってそんなの分かってる。けど、じゃあこの状況から救ってくれるのか。誰も救ってくれないじゃない。
でも、そんな私もいつかは大人になって、布団の中でひたすらに縮こまっていた自分を自分自身で救える時がくる。
絶望と幸福が波のように来るから、情緒乱されまくってた、面白い一冊でした。 -
「逃げない」に
流れもいいし、小道具もうまく使っている。
教養のない中、精一杯意識に入れられたものを
うまくいいところで使って書いていると思うよ。
この子、教養がという前に人としてすべきだけれども、
しなければだとはいえ、することから逃げないでいる。
3人が3人、その周りの人も、
悟空も何のヒーローいないしマイナス環境だと思うよ。
その中で本来的なことしてる、先が見えないけれども。
3人ってほんっと核家族、狭い家にひしめいている。
まだ真に大人らしくない、指導者なんてどこにも。
だから、「逃げない」に「老成」加わったらと思うよ。
そしたら、違った眺めが見えるだろうけれども。
とにかく生きることを経た数年 -
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母親の介護をする活動家二世のサワコさんの言葉。
「奪われない言葉を得ないと、ひとは生きていかれないから」
「自分がうまく話せる言語を獲得することが大事」
今回の政治的思想までいかないにしても親はよかれと思って子にいろいろな考え方を植え付ける。それを子が疑問に思った時、きちんと親と対話できるかどうか。対話するには自分の言葉を得ていないとできないし、親は子の話を受け止めないといけない。自分の頭の中だけとかSNSの中だけとかじゃなくて面と向かって対話することが大事なのかなと思った。
可愛らしいタイトルからはなかなか想像できない話の内容で意表をつかれておもしろかった。 -
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難病の母の介護をしているヤングケアラーの物語。
8畳一間のアパートで家族3人で暮らす高校生の沙智は、母の排泄の世話をしている。
父は帰りも遅く、酒を飲んでいる日もありほとんど沙智だけが家事も母の介助もしている。
進学など先が見えない状態の高校時代が、「救われてんじゃねえよ」で、家を出て東京の大学に行っていたが、ことごとく母に就活の邪魔をされる日々が「泣いてんじゃねえよ」で社会人が「縋ってんじゃねえよ」である。
母の病気は一進一退のようであるが、なんとか希望の職についた沙智。
何度も母は沙智を頼るがそれだけ甘えているのだろう、恨み辛みを口に出さずにいるのが痛々しくもあるが、暴言を吐かずにい -
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ネタバレ●政治について考えたい方、必見の今オススメの1冊●
表紙を見る限り、「読書の秋?」いや、「食欲の秋」もいいな〜!と思って手に取った。
読み始めると、まさかのテーマは政治と家族をテーマにした物語で、想像とは異なり、ちょっとビックリした!
絶えない活動家2世たち。
「活動家2世」という言葉は、あまり聞かないが、「宗教2世」に似たようなものだと本作を読んだ限りは思った。
主人公の千秋自身、共政党に入党したかったわけでもない。
(やはり、これはまさに親ガチャ失敗というのか…。
そんなことで、日々、父親にコンプレックスを抱えて生きていた。)
「共政党」の支持者ははなかなかいないこともあり、共政党 -
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ネタバレこれは刺さる人には刺さる本だなぁ。
そして私は刺さる人だったよ。
ちょっと違うけど、私も千秋と同じような立場で、いわゆる宗教二世(正確には三世)。
千秋や健二ほど放っておかれたわけではないけど、自分に選択の自由がなかった点や、いろんな会合に連れてかれたり、思想を学ばされた点ではかなり境遇は似ている。
たしかに親は愛情をベースに自分の子どもを二世・三世にしてるのかもしれない。
でも私は絶対に反対。法に触れないかぎり、すべての選択権は本人にあるべき。
というか、父親も母親も千秋の言葉を受け入れてなかったでしょ。あれは対話じゃなくて意見のぶつけ合いだよね。
そして、健二は自分の言葉を持てていな