上村裕香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2025年11月23日、文学フリマで本書と出会った。
「女による女のためのR-18文学賞 大賞受賞作」という帯に惹かれて手に取り、売り場にいた小柄なお姉さんに勧められるまま、『ほくほくおいも党』とフリマ作品を併せて購入した。あとになって調べてみると、そのお姉さんが著者ご本人だったと知り、思わず笑ってしまった。もう少し話しておけばよかった。
外から見れば「絶望的」と言われかねない環境のなかで、それでも日々を生きていく日常。お笑い番組など、ささやかな出来事に救われながら、どっこい生きている。その姿が淡々と、しかし強いリアリティを持って描かれている。
状況に出口は見えず、改善の兆しもない。行政や友人、学校の先生といった存在も、直接的な解決にはなっていない。それでも、同じような生きづらさを抱える家族を“少し距離を置いて見る”ことで、主人公の気持ちが少しずつ整理されていく。その過程に、かすかな希望を感じた。
ツッコミのような、自虐にも見えるタイトルの「〜じゃねえよ」という言葉も、自分自身を客観視しようとする気持ちの表れなのかもしれない。
なんで忍耐強く親の介護ができるのか。
自分しかいないと思っていたから。支援制度が少ないから。困ってる親を助けなきゃと思ったから。そのどれも本当で、本当じゃない。そんな彼女の一言が胸に残った。
本書は、ヤングケアラーという問題を知るきっかけとしても非常に大きい。重いテーマでありながら、押しつけがましさはなく、淡々と、しかし力強く確実に気持ちを揺さぶってくる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
母親の介護をする活動家二世のサワコさんの言葉。
「奪われない言葉を得ないと、ひとは生きていかれないから」
「自分がうまく話せる言語を獲得することが大事」
今回の政治的思想までいかないにしても親はよかれと思って子にいろいろな考え方を植え付ける。それを子が疑問に思った時、きちんと親と対話できるかどうか。対話するには自分の言葉を得ていないとできないし、親は子の話を受け止めないといけない。自分の頭の中だけとかSNSの中だけとかじゃなくて面と向かって対話することが大事なのかなと思った。
可愛らしいタイトルからはなかなか想像できない話の内容で意表をつかれておもしろかった。 -
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ネタバレ●政治について考えたい方、必見の今オススメの1冊●
表紙を見る限り、「読書の秋?」いや、「食欲の秋」もいいな〜!と思って手に取った。
読み始めると、まさかのテーマは政治と家族をテーマにした物語で、想像とは異なり、ちょっとビックリした!
絶えない活動家2世たち。
「活動家2世」という言葉は、あまり聞かないが、「宗教2世」に似たようなものだと本作を読んだ限りは思った。
主人公の千秋自身、共政党に入党したかったわけでもない。
(やはり、これはまさに親ガチャ失敗というのか…。
そんなことで、日々、父親にコンプレックスを抱えて生きていた。)
「共政党」の支持者ははなかなかいないこともあり、共政党員の家族や2世たちは、生きづらさを感じているケースが多い。
「ほくほくおいも党」(自助サークル)は、千秋にとって同じような悩みを抱える者同士、会話ができる。
それは、彼女にとって、初めてで新鮮な経験だった。
自助サークルの存在を知って、このようなサークルは、生きづらさを軽減させるためには、かなり重要だと感じた。
今の日本のは、連立政権をどこと組むのかが話題になっている。
日本政治の概念として、リベラル、保守、左派、右派などがある。
そこで、どの政党が、どの派に所属しているのかを現在の政党を調べながら読んでみた。
(そうすると、いわゆる左派である「共政党」への理解が深まった気がした。)
ここまで、現実、上手くいくとも思えない。
しかし、流石、物語といえるだろう。
最終的に、千秋と父の念願だった対話が叶い、家族の愛を感じられたのはよかったなぁと思った。 -
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ネタバレこれは刺さる人には刺さる本だなぁ。
そして私は刺さる人だったよ。
ちょっと違うけど、私も千秋と同じような立場で、いわゆる宗教二世(正確には三世)。
千秋や健二ほど放っておかれたわけではないけど、自分に選択の自由がなかった点や、いろんな会合に連れてかれたり、思想を学ばされた点ではかなり境遇は似ている。
たしかに親は愛情をベースに自分の子どもを二世・三世にしてるのかもしれない。
でも私は絶対に反対。法に触れないかぎり、すべての選択権は本人にあるべき。
というか、父親も母親も千秋の言葉を受け入れてなかったでしょ。あれは対話じゃなくて意見のぶつけ合いだよね。
そして、健二は自分の言葉を持てていない。だから暴力に頼ろうとする。
早く自分の言葉を持って、言葉によって状況を打開できるようになったらいいなと思った。
そして一方で、健二がネットでアンチコメントを書いてる様子、心の動きがかなりリアルで、図らずも少し共感してしまった。よくないことだけど、ああするしかなかったんだろうなと思ってしまう。
だからこそ、やはり自分の言葉で主張するって大事なことなのよね。
途中の話(第二章、第三章)は位置付けがよくわからなかった。
和樹、康太郎など家族以外の人から見た父親を描いてるということなのかな?
千秋の父親みたいな人って、外面はいいからねーという健二が書くようなアンチコメントみたいな感想しか出てこない。
自分がけっこう捻じ曲がってるんだなという気づきに恐怖…。
あまりに共感できすぎて読むのちょっとしんどかったけど、あんまりこういう類の話は人とできないので、レアな読書体験でした! -
Posted by ブクログ
個人的には文のテンポも各章との連なりも面白くサクサク読めました。本のタイトルと中身のギャップも感じながら楽しめる作品です。
「活動家2世」の高校生を中心に、同じく両親が革新政党に所属していた2世、3世、ボランティアで革新政党に出会った大学生など、一見重苦しく思えるテーマですが、タイトルの通り「ほくほく」温かな面も沢山ある「家族と青春の小説」です。
作品の中で出てくる事件は実際にここ数年で起こったものをオマージュしているのだと思い、妙にリアリティを感じられました。登場人物の考え方や主義信条、生きてきた人生がバラエティ豊かなので、どんな主義信条を持っていても楽しめると思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ各章の主人公が活動家2世、という構成なのかと思いきやそういうわけでもない。でもそういう外した章(東北のこととか)こそ好きだったり。むしろどちらかというと、千秋と正、そして健二の家族とその周りの群像劇と捉えればいいかもしれない。
帯にある「お父さんに家族との対話を要求します!」という言葉がいつ出てくるのかと読み進めていったが、結局最後まで出てこなかったのは少し残念だった。この言葉が「ほくほくおいも党」のエネルギッシュな活動ぶりを事前に想像させたがために、千秋たち家族の話に収めていく「畳み方」が意外に思えたのかもしれない。ただ、作り物っぽくない、いいラストだったと思う。
書籍は初めて読んだけど、著書の作品は以前、ウェブ連載で「水随方円」という作品を読んだことがあった。あれは大学の講義の何言ってるかよく分からない文言を再現する力に驚かされた作品だった。
今回もそういうところはロシア語のくだりなんかで香った一方で、物語の柱である父親・正の演説からはそのすごみをさほど感じなかった。これはあえて(つまり千秋自身が飲み込めてない言葉として)詳しく書くべきではないと筆致を抑えたのか、あるいは著者自身が左翼活動家の語る言葉をそこまで飲み込めていないのか、それとも読み手である僕らが(というより僕が)活動家の語る言葉に割と慣れているからなのか、少し気になった。
そういう「それぞれの持つ言葉」をテーマに持ってきたのは悪くなかった。著者はそういう表現が得意なのかもしれない。だとすると上の問いの答えは、僕が活動家の語る言葉に世間より慣れているから、なのかも。一般の、特に九州以外の人が読んだら「この人何言ってんの」感をより濃く感じるのかな。オスプレイ配備のこととか。 -
Posted by ブクログ
ヤングケアラーの話。出だしから暗くて、文章もまどろっこしくてなかなか読み進めない。日比谷が登場してからは大分スピード感が出て面白くなってきたけど、やはり文章に馴染めない。
閉鎖的で逃げ場のない状況で「なぜ助けを求めなかったのか」と言われても、「視野が狭かったから」というのはその通りだろうなと。自ら求めていかないと手を差し伸べてもらえない世の中仕組みは果たしてそれでいいのかという気はするけど。
保護司の宮本のような人が、幼い光莉の近くにいたら違う世界線があったのかもと思うと胸が痛む。
小説は書くべきものを持つ人が書ものというのは納得。技術や手法だけじゃないんだよね。