宇野千代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこの本の存在を知ったのは学生時代だった。恩師の文学の講義でたまたま取り上げられていたのだ。
どんな苦労や不幸をも幸せに変える宇野千代の生き方を、先生は惜しみなく称賛していた。
先生の人生にも様々な障害や苦労あり、しかし、それを全く感じさせない人だった。いつも太陽のような天真爛漫な明るさと笑顔とユーモアで、講義の間中笑いが絶えることはなかった。そんな先生と「生きていく私」は何度も私の心の中でリンクしたものだった。
「生きていく私」は、宇野千代の自叙伝である。
何度もの結婚と離婚、戦争、経営していた会社の倒産。波乱の人生に翻弄されながらもこの本に悲壮感はない。
宇野千代は、どんなに艱難辛苦に見舞われても、自分は苦労したと感じることがなかったという。
幸せとはその時の状況ではなく、心の持ちようなのではないかと彼女は伝えたかったのではないか。
頭ではそうと分かっていても、なかなかこういう思考には辿り着けないものである。
やはり、多くの人にとって不幸は不幸でしかない。過去のトラウマや、今を生きる悲しみに胸の中が濁り、常に息も絶え絶えだ。
しかし、最近この本を読み返してみると、宇野千代が根っから前向きで過去に後悔せず、くよくよしない性格だったとは思えない。最初の夫を捨て、他の男性の元へ走った負い目を、一生引きずって生きていたように思う。
男から捨てられた心の傷は忘れられても、傷つけた痛みから一生逃れられなかったのではないか。彼女はそういう人だと思う。
人は人知れず痛みを引きずりながら生きていく。冥き道から冥き道へ身を落とすこともある。
幸せになるのも一種の才能である。しかしその才能と文学を生み出す才能は本来相いれないものなのではないか。
宇野千代の遺した作品を読むたびに、そんな感慨に浸ってしまうのである。
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Posted by ブクログ
”(元)妻のおはん”と”愛人のおかよ”との間で揺れる、優柔不断なバカ男の話。
昔言葉なので多少読みにくさはあるが、男の語り言葉の柔らかさと美しさは秀逸。
こういうダメな男って、捨てられないんだよなぁ~と思いながら読む。おはんの気持ちはわからなくもないが、哀れでちょっと怖い。
子供のためと思ったことが、結局は死なせることになり、自らも男の前から姿を消してしまうことに。うそつき男を信じたばっかりに。
男もおはんも、おかよも欲深い人間だったが、一番欲が深かったのは、おはんだったのでは。
手紙だけ残し、姿を消すところも『私を忘れないで』と
念を押しているような感じで恐ろしい。
主人公の男も、おはんから男を奪ったおかよも、どうしようもなく業の深い人間なのですが、なぜだか私にはおはんが一番業深い女に感じられる。間接的とは言え、両親のごたごたのせいで小さな命を落とした息子についても、「亡うなりましたあの子供、死んで両親の切ない心を拭うてしもうてくれたのや思うてますのでござります」とさらっと言ってしまう怖さ。
どうしようもない人たちばかりなのに、なぜか感情移入できてしまう、宇野千代さんの名作だと思う。 -
Posted by ブクログ
毎日新聞に連載されていたという自伝的エッセイ。特に半生を語った前半部分はほとんど小説を読んでいるかのよう。時代は大正末期から昭和中期。複雑な家庭環境、地元での教員生活、上京後の文士たちとの交流、焼け野原からの雑誌発行、その成功と没落等々、どれも当時の風俗が垣間見えて興味深い。後半は時代も現代に近づき、エッセイ色が強くなる(それでも30年ほど前だけど)。
まず文章が読みやすい。新聞連載なので一話が短く、テンポよく読める。まとまった読書時間がなかなか取れない人(私です)に特におすすめ。恋愛遍歴が有名だけれど「恋愛」部分の描写は多くはない。恋愛好きというよりはただひたすら、自分に正直な人だったのだろうなあと思う。その正直さ、そして「鴉が空を翔ぶように」の一文は、やっぱり素敵。
【注】私は中公文庫版(476p)を読みました。角川版は100pほど少ないようなので内容に違いがあるかも?