宇野千代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
毎日新聞に連載されていたという自伝的エッセイ。特に半生を語った前半部分はほとんど小説を読んでいるかのよう。時代は大正末期から昭和中期。複雑な家庭環境、地元での教員生活、上京後の文士たちとの交流、焼け野原からの雑誌発行、その成功と没落等々、どれも当時の風俗が垣間見えて興味深い。後半は時代も現代に近づき、エッセイ色が強くなる(それでも30年ほど前だけど)。
まず文章が読みやすい。新聞連載なので一話が短く、テンポよく読める。まとまった読書時間がなかなか取れない人(私です)に特におすすめ。恋愛遍歴が有名だけれど「恋愛」部分の描写は多くはない。恋愛好きというよりはただひたすら、自分に正直な人だったのだろ -
Posted by ブクログ
自信たっぷり、という感じの所も読み取れるのに嫌みがなく(むしろとっても微笑ましい)、全て70代から後に書かれた文章であるのにまるで少女みたいな可愛らしい文章。
彼女自身辛い事や悲しい事もたくさんあったとは思うのだけどそこを全くクローズアップしようとせずとにかく自分は幸せだったと言い切ってしまう人生観にとても好感を持った。
世の中の人生観を語ったりなんだりしている文章では自分がいかに苦労していかに悲しい思いをして生きてきたかという負の部分にばかり力を入れているものが多いがこの本はそれらのものとは違う。
悲しくても、言わない。悲しいと思わない。
自分も辛い事や悲しい事があってもそれをやたらめっ -
Posted by ブクログ
なんという奔放で芳醇な生き方! 気になれば夫がいようが妻がいようが関係なくその男と寝て、そのまま一緒に生きて苦労をして、また別の女にとられて、飄々と渡すけれども、愛用の箪笥だけは運び出してきたりするのである。大して好きでもないのに、なんとなく流されて抱かれて、深刻に愛そうとされると身をかわし、その男の訃報を聞いて心痛めるのである。会社をおこして大金持ちになって、一転破産して大借金をひたひたと返し、でもなんとなく平気。
少女の自分を犯した男が後年事故にあって、口に筆を加えて書いたという手紙を読んで、「人はいつ、いかなるときでも、自分の身の置かれた場所に、敢然と立っている勇気を持つべきものかと、私