桂望実のレビュー一覧
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六年生の時に父と姉が出て行った。主人公の守は真面目な母と二人で暮らしていくことになる。
父はろくに働きもせず、天才的な将棋をさす姉に賭け将棋をさせて生計を立てる。
破天荒な父と姉に翻弄されるドタバタコメディ‥‥を想像して読み始めたものの、見事に裏切らた‥‥表紙からして、もう面白そうなのに、なかなかにシリアスな面もあって色々考えさせられるお話でした。
破天荒な父と姉を軽蔑しながらも、特別なものを持っている二人が羨ましくもある守。でも父と姉は、「守はちゃんとしていて凄い」「お前はまっとうに生きろ」と言う。
父と姉の生き方を受け入れられないのにどうしても離れられず事あるごとに会いに行く、そんな約四十年間のお話。
将棋には性格、生き様が出る。強いか弱いかだけではなく、勝つか負けるかだけでもなく、「お互い様なんだ、迷惑をかけることもあるし、掛けられることもある。それで世の中は回ってるんだ」
題名の『僕は金(きん)になる』
将棋をする人にはすぐにピンとくるのかも知れないけれど、この意味が分かった時にはグッときました。
軽い気持ちで読み始めたこの作品。思いがけず大当たりでした!最近読んだ本の中では一番かも! -
Posted by ブクログ
変わり者の父と姉と普通の僕との人生ドラマ。
1・昭和54年(1979年)
2・昭和57年(1982年)
3・昭和60年(1985年)
4・平成元年(1989年)
5・平成6年(1994年)
6・平成9年(1997年)
7・平成23年(2011年)
8・平成29年(2017年)
小6の時に両親が離婚し、父・姉と離れ離れになった僕・守。
久しぶりに再会した父は、将棋の強い姉が賭け将棋で稼いだお金で生計を立てているダメ親父。姉は一般常識のない将棋が強くて、こだわりのない不安定な生活を送っている実態だった。
姉の将棋の才能に羨ましさを感じながら、普通の人生のレールを歩んでいくうち、普通が普通でなく、結局は個人の幸せは個人でしか分からないことに気づいていく守。
しかし、姉は姉で、普通の守を羨ましく思い、懸命に生き、父を慕い、家族を慕っていた。
十人十色の家族があり、それは他人には分からない幸せがある事を感じさせてくれる作品。
コミカルでもあるし、じんわり感動もできる機微な作風の作家に久しぶりに出会えた。 -
Posted by ブクログ
将棋をさす以外に何も出来ない姉とギャンブル好きの父が、両親の離婚で母と守の元から出ていった。
2人の生活は、その後も姉の賭け将棋の上がりで成り立つものだった。
全然期待せずに読み始めましたが、とーっても良かった。
暖かい家族小説でした。
父ちゃんの様な人は困りものだし、姉ちゃんはあのままではいけなかったのかも知れないけれど、至って普通の守が歳を重ね、2人がを認められるようになる様子に胸の奥が暖かくなりました。
守とりか子の子供の性格が真逆なことも、血の繋がった家族なんだなとしみじみ。
将棋に明るくなく、そこだけが心残り。
歩がと金に変わる、「父ちゃんとの思い出も、特別な思い出に変わるのかなと思うと寂しい」と言ったりか子。
涙腺崩壊のシーンでした。 -
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ネタバレ読み終えて、ふうと息をつく。
表紙とタイトルから、
坂木司さんのホリデーシリーズ(大好き♪)をイメージしてました。
誰とも深くかかわらず、面倒くさがりでやる気のない健一。
ケータリングサービスを生業としながら、
その仕事ぶりは、どれだけ手抜きをして、出来あいの物を見栄え良く盛り付けられるか。
その健一が遭遇した事故現場で、寛子を助けたことから少しずつ変わっていく。
というか、妹と親友の死にまつわる後悔のようなものから無気力になってしまっただけなのかもしれない…。
そして、”僕”、英樹との出逢い。
生まれた時から、その人生のほとんどを病院で過ごしてきた英樹。
もうね、ここからの健一と英樹と、その両親の関係がとてもいいんですよ。
健一のお弁当が、いつしか英樹のためのものに変化していったり、
英樹が美味しそうに食べるのを見て喜ぶ母親の姿とかね。
「もう疲れた」と尊厳死を望んだ英樹。
残される両親の気持ちを思うと、胸が締め付けられるようです。
「生きてさえいてくれればそれでいい」
それが結果として、子供を苦しめるだけだとわかっていても、
そう願わずにいられないのが親なんでしょうね。
後悔のない別れなんて、たぶんない。
どの道を選択してもずっと後悔はつきまとう。
あのときこうしていれば、こうしなければって…ね。
できればこのまま、奇跡が起こって欲しいと願ったのですが…。
一心不乱に鰹節を削り、だしを採る健一。
この食事が最後の晩餐になっても後悔しないようにと、
食べてくれる人のために、心を込めて料理する。
その姿をキッチンの傍らで見つめる、息子の司。
この世に生まれた価値のない命なんて、絶対にない。
英樹と出逢えたから、今の健一の姿がある。
本を閉じ、表紙のトーストと目玉焼きとオレンジジュースを見た途端、
せつないけど、温かなものが胸の中に広がりました。 -
Posted by ブクログ
思いも寄らない転落から人生がガラッと変わってしまった四人のアラフィフ女性の物語です。
物語は同一テーマの女性のそれぞれを描く短編集。一篇ずつはそれぞれ独立して、相互の関連はない。
一人目は結婚相手から突如一方的に離婚を言い渡された専業主婦。二人目は長年育て上げてきた事業を全否定で取り上げられた会社員。三人目はオリンピックを目指して育ててきた選手にもうついていけないと逃げられたコーチ。四人目は長年担当していた番組から突然降ろされて収入の途絶えてしまったフリーランスの女性。それぞれの女性は唐突に目の前に開いた穴に落とされ、すわ絶体絶命かと思われるような状況に追い込まれる。けれど、それで人生が終わるわけではない。そこから彼女たちがどのように自分の人生を切り開いていくのか、さらに最後の最後にチクリと刺すスパイスを味わえる短編集となっている。
タイトルと違い、大変前向きで明るい逆転の物語たちでした。タイトルからはもっと酷い地獄のような落差を味わって苦しみから這い上がっていく物語なのかと思っていたのですが、主人公になる女性たちがそれぞれなかなかに強かな女性たちで、地獄と思えるほどの描写はほとんどなかったように思います。受け止め方によっては人生詰んだ、と思うような状況になった主人公もいましたが、なんとかしようとしたらなんとかなっていく辺りが人の強さかなと感じました。人生五十年を生きて、結婚や出産、子育てを経験してきた彼女たちは、弱いまま守られるだけではなく、肝が据わった女性たちだったのかもしれません。
感じたのは、いくつになっても前を向いて新しいことを学び、挑戦する気持ちを忘れずにいることの大切さです。もちろん、彼女たちは最終的には何とかなって上手くいったパターンの物語ですが、その『最終的に』が人生のどのタイミングで来るかなんて誰にも分らないことです。途中でどれだけ負け越していても、最終的に勝ちを得られたのなら、それは勝ちなのだと改めて感じます。
いつどこでどんな落とし穴があるか分からない、トラップだらけの世界を歩いている人生ですが、前を向いて、時には人を頼りながらでも、しっかりと自分で歩いていけたらいいと思います。
読みやすく、最後にスカッとしたい時におすすめできそうな一冊でした。