桂望実のレビュー一覧
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中小企業には悩みが尽きない。業績は経営者の舵取りでなんとかなる。だが、必ず突き当たるのが後継者問題だ。
大企業のように人材が揃っているわけではない。数少ない候補者はみな帯に短し襷に長しで、とても任せられないように見えてしまう。
そんな悩める経営者が1人の中小企業診断士との出会いによって、自身を見つめ直して変わってゆくさまを描いたヒューマンドラマ連作短編集。
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会社のトイレを出た岡村正人は廊下で次男の玲二がつっ立っているのに気づいた。熱心にスマホを見ているらしい。
何をしているのか尋ねると、波の情報を見ていると返ってきた。サーフィン好きは知っているが勤務時 -
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ネタバレ面白かった。
珍しく中小企業診断士が活躍する物語。一般的には中小企業診断士というよりコンサルティングといった方が伝わりやすいと思うが、あえて中小企業診断士とすることに作者のこだわりを感じる。
取っても食えないとバカにされがちな中小企業診断士の資格であるが、その仕事ぶりがわかるお仕事小説。純粋に中小企業診断士が活躍する話はほかで読んだことなかったので、素直に嬉しい。
物語は3つの短編からなる。それぞれに問題を抱えた会社が舞台になっている。後継者を長男にするか次男に悩むパン屋、無能な部下しかいないと悩むバックメーカー、先代社長の急逝により外資系企業に買収された包丁製造業。型やぶりな中小企業診断 -
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年齢の違う2人の心の通わせが良かった!少年を縁として、健一と少年の父が一緒に出かけるのも楽しそうだった。こういう関係の広がりもあるんだなぁ。少年との付き合いを通して、手抜きばかりのケータリングだったのが、丁寧に料理をするようになった健一。
健一が少年に言った言葉
「生まれてきただけで意味がある。親にとっては、生まれてきてくれたというだけで、幸せを運んでくれるんだからな。そこにいてくれるだけで充分なんだ。思っていたような子どもにならなくても、問題を起こしたとしても、自分の子どもとして生まれてきてくれただけで それだけで充分なんだ」が、心にしみじみと残った。
また、「思うようにはいかないな、人 -
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ネタバレ「人生はオーディションの連続だと思います。」
の書き出しに惹かれて読み始めました。
「じゃない方」感に苦しむ話かな?と思ったら割と前半だけで、殆どは主人公・展子が困難にぶつかり成長し、幸せに気づくまでのストーリー という感じでした。
プレッシャーから周りが見えなくなって、昔からツイてないせいだと思ってしまう展子の気持ちも、大雑把(よく言えばおおらか)で「なんくるなる!」精神の太一の気持ちも分かるな〜。
ただ、エスカレートする展子の詰め方は、普段言われる側にいる私としては文字で読んでてもキツかったです。
そして合間合間の語り口調に違和感があって「なんだこれ?」と思っていたのですが、最後の展 -
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それぞれ様々の背景をもつ人たちが一つに集まって何かを成し遂げる。成し遂げることの大小も、年齢も性別も関係なく、何かに真剣になってそこから得るものの大きさは、他の誰に評価できるものでもない、自分のもの。
そんなことを考えさせられた作品だった。
終わり方も良かった。競技会の結果で終わるのではなく、その後の日常まで描かれていて、物語のはじめからの各キャラクターの変容が胸に迫る。
ちょっとかたい感想になってしまったけれど、(主に)3人の初心者ダンサーの日常と、講師の心の機微が、適度に入れ替わり登場するので、とても読みやすい。
3人が社交ダンスにのめり込んでいくのと同じように、読んでいる方も引き込ま