くまの柚子のレビュー一覧
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“「おうよ。俺は紳士なんだぜ」
蒼刻は「嘘こけ」とばっさり言ってやった。
——深窓のお嬢様に、根無し草の情報屋がうっかり惚れた。
そういうことなのだろうか。意外といえば意外な片恋である。
物語を書く高貴な女性と言われると、蒼刻はとっさに湘雲公主——太子殿下の姉公主である佳人を思い出す。蒼刻と朧月を題材にした物語まで書きはじめる、社交的で聡明だが困った姫君だ。
まさか彼女が、この男の想い人ということはないだろうが……。”[P.157]
5巻目。
蒼刻さんが何か危ない。色々と色々に危ない。
持ち上げて張り詰めて、しかしまさかの次巻に続く!
“蒼刻の傍らで獲物を狙う構えをとる白虎を見やると、張宝は笑みを消し、蔑むような冷たい目つきになった。
「人虎よ。汝はとことん我に歯向かうなァ。飼い慣らされたか」
「異なことを。儂は最初から蒼刻たちの味方じゃ」
「……ほう?」
張さんの昂然とした言葉に、張宝はなぜか意表を突かれたように目をまるくした。
が、すぐにその表情に、不気味な笑みを上塗りする。
「偶々に狂疾に因って——というわけではないが。汝は殊類と成った理由を忘れ、そちらについているのか。これは滑稽な。腹を抱える手が足りぬほどにな」
朧月は目を瞬いた。傍らでは蒼刻も、刀の柄を油断なく握りながら、訝るように目をすがめている。”[P.204] -
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設定は好きな方だったんで、絵も嫌いじゃなかったんですけど、なんだろう、あまり入り込めませんでした。
30歳も年上のいけ好かない相手との結婚を嫌って逃亡して、飛び乗った列車に乗っていた王太子フェルウスと結婚することになったローダ。
失踪したってことなのに、まったくローダの実家のお話は出て来ませんでした。新聞見て、もしかして?って思ってもいいはずなのに、探しもしないのかなっていう疑問が。
王太子と結婚したのに、反対してたのはマリアルドだけで、「全き刃」の印象も弱かったかなぁ。最後の裏切り者もちょっと唐突でしたし、いきなりマリアルドも改心しちゃったし。
それよりもフェルウスがいったいどこら辺でローダを好きになったのか?最初の方は、それこそリザベーヌの方が好きっぽい感じがしたのに、リザベーヌの性格も、あれよりはフェルウスの兄のことがまだ好きで・・・って方がよかったかなって思いました。
設定は悪くないんだけど、ちょっと物足りない感じでした。
(1冊読み切りだから仕方がないのかもしれないですけどね。) -
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“「なんかもう、周りが見えてませんね、お二人とも」
「うむ。姫はともかく、蒼刻がああなるとは儂も意外じゃった。大丈夫かのう」
「それは武官さんの生命的な意味ですか?」
「まあ、それもあるがのう——」
などと幽鬼と白虎がひそやかに内緒話をしたのは、彼らだけの秘密である。”[P.98]
4巻目。
静心が出て来て会話の物騒さと面白さが増して。
“「大切なことだが——」
やがて静心は、神華国の政治的危機でも語るかのような重々しさで言った。
「我が妹はたいそう可愛い」
「…………は?」
「違うとでも言うのか」
答えによっては八つ裂きにする、と続いても違和感のない真顔である。冗談ではないのが余計に厄介だ。
「いや、言わないけどな。たしかに可愛——ってなんで武器を構えるんだ!?」
「貴殿にあれを可愛いと言われるのは無性に腹が立つ」
「……おい」
蒼刻はまじめに反応に困った。なんなんだこの斜め上の展開は。
「どうせ『可愛くない』って言ったら、この場で撲殺なんだろうが。どうしろと」
「死ねばよいのに」
「今日も全開で無茶苦茶言ってるな、あんたは!」”[P.161] -
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“「否定はしない」
「うう……」
「だが、誰にでも平等に毒舌を吐くという点は評価できるぞ」
「え?」
「権力者に媚びることがないというのは、悪くない。誰にでもできることではないからな。お前は、この俺に対しても態度を変えないではないか」
褒められたと思ったら、やっぱりけなされていたようだ。クリスタはますます落ち込んだ。
(どうせ、私なんか……)
「お前は、俺の父や兄にも物怖じしないんだろうな。奴らに会わせてみたいと思う人間は、お前が初めてだ」
独りごちるようにそう言って、アロイスは喉の奥で笑った。
「な、なに?」
「この俺に面と向かってああまで言える人間は貴重だ。お前の毒舌癖、ルクアンの精霊のように面白いとおもってやることにしよう」「本当?」
「ああ。それに……、なかなか可愛くもあるぞ?毒舌を吐く時のお前の表情は」
思わずクリスタは、ぽっと頬を赤らめた。この毒舌をまともに浴びた人に、面白いなどと言われたのは初めてだ。それに、毒舌癖を出している時の顔を可愛いなどと言われたのも——。
「百歩……いや、千歩以上は譲ってな。普通に考えれば、とても腹が立つ」
「……」
一瞬持ち上げてもらったと思ったら、あっという間に谷底まで落とされた。またもがっくりと項垂れたクリスタの顔を、アロイスがこねくり回した。妙に楽しそうだ。”[P.91]
普通に暮らしてた欠点持ちの女の子が実はお姫様でした。
王道と言えば王道だけど、立場が一筋縄でいかない危うさがあるところ良かったし、最後の妖精の件の展開は好み。
毒舌吐いてるときは呪われているというより取り憑かれてる感じ。口調が。
カイはお金で動くと見せかけて人に従う人……じゃなくて本当にお金で動く人だった。
ヴィルマちゃんよく見ると頭に一杯花付けてるね。
冒頭辺りを読み返すとちゃんと伏線だった。面白い。
“「——この大ばか者め、なにが養父のためだ!貴様、自分のことしか考えていないだろう。そんなことだから、友達の一人もできないのだ!少しは他人の気持ちというのをだなっ……」
「なにを言う。自分だって、友がいないと嘆いていたではないか」
「それは……。い、今はそんなことは関係ないだろう!ええい、放せ!放さんかぁっ!!人の弱みにつけ込みおって……!!」
「弱みを見せる方が悪い」
「ばか者、卑怯者!つけ込む方が悪いにきまっていようが!誰か起きていないのかっ!?王女の危機だぞ、助けに来ぬかーっ!!」
夜が明け、太陽が空高く上るまで、毒舌姫と食わせ者王子の攻防は続いたのだった。”[P.279] -
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ネタバレとうとう最終巻です。
十六夜の里に流された美咲ですが、いきなり走り回っていたので戸惑いましたが、乙斗という怪しい老人に助けられてました。
弘人は1ヶ月待って本当の敵である茨木童子と共に十六夜の里にたどり着いていたので、先に美咲に会うのはどっちかと思ったら、弘人の方だったんでほっとしました。
乙斗によって強制修行をさせられてた美咲がこれまでと違う雰囲気になってたことで、弘人が戸惑ってて、これまでの弘人優位の状況を中々作り出せずに、悶々としてたり、美咲のチラ見せ足にもやもやしてたり、指輪を渡す機会をいろいろ考えていたりってところは、にんまりしちゃいました。
まあ、そうはいっても、弘人さんですから、最終的には乙斗の家で本当の夫婦になってましたけどね。
乙斗の正体が分かり、綺蓉が最善だと思って行ったことがとんでもない状況を生み出してましたけど、まあそれがなければ、十六夜の里から出ることはできなかったし、美咲に天狐が守りにつくこともなかったと思うと、これでよかったような気もします。
鵺と天狐が同等だとしたら、美咲の地位もUPして、弘人の妻として文句を言われることもないでしょうしね。
最後に短編が2話入ってましたけど、二人の後日談とか綺蓉と雲劉のその後とかも見たかったです。 -
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ネタバレ前巻で予想していたとおり、弘人が自分を選んだのは、天狐の血脈だったからって、もやもや悩みはじめた美咲。
一方、弘人は弘人で、自分を鍛えに1ヶ月も美咲をほっぽった挙げ句に、自分の中では完結したみたいですけど、ほったらかしはよくないかなぁ。
美咲の悩むところを他に男ができた?とかって、焦ってくれたらいいんだけど、弘人さんは、そこまではなかったなぁ。
今回はタイトルにもあるように、海の妖怪がいっぱいです。
最初の導入のところのがよく分からなかったですけど、最後まで読むと、美咲と颯太って分かりました。声が出てない颯太はかわいいんだけど、声が出るようになったときの毒舌ぶりには、美咲たちでなくても、目が点になりそうです。
私的には、あまり進展がないので、そろそろ、終わってもいいかなぁなんて思うのですけど、まだ続きそうですね。 -
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“「そんなに小さくなられてしまうと、君を見失いそうだな。手をつなごうか朧月」
「......天祥さま。こいつは俺が連行しますから、お構いなく」
「え......あの、わたしは一人でも大丈夫で——」
「信用できるか馬鹿」「迷子になってからでは遅いんだよ?」
同時に言われて、しゅんとする。
そうして左手を天祥にとられたかと思えば、右の二の腕をぐいっと蒼刻に引っ張られ、朧月は目を白黒させた。今朝から挟み撃ちに合いっぱなしだ。
どちらが珍獣を連れ歩くか議論している間に、不幻がふいに後ろから来て朧月を抱え上げた。普段よりも高い位置に持ち上げられた朧月は、声にならない悲鳴をもらす。
不意打ちに目を点にした蒼刻と天祥を前に、不幻はぼそりと言った。
「平和的解決」
「どこがですか!」”
不幻のキャラが面白い。
情報屋さんの本名とか辺りはこれからに関わってくるのかな。
桃まん食べたい。
“不幻は淡々と言った。
「蒼刻。君は近いうちに、護花七将軍に正式に任命される。双璧がそう言っていた」
不意打ちに、蒼刻はゆるやかに瞬く。
もろもろの理由で着任を保留されてはいたが、国軍を統べる双璧と呼ばれる二人がその気になれば、いつ任命されてもおかしくない状態だったので、大きな驚きはない。受けていいものか、迷いはあっても。
問題は、なぜ双璧が今「その気」になったかだ。彼らは理由のないことはしない。
そして、空位だった国軍の司令塔の座を埋める理由など、絶対にロクなものではない。
「——呂将軍、まさか......」” -
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ネタバレ14歳まで普通の国で過ごしてきたロクサナが生まれ故郷のメフルダート女王国に戻ってきたんですけど、この国の男女逆転が微妙でした。よしながふみの「大奥」も男女逆転ですけど、あっちはそれほど違和感を感じなかったのが、戦士や騎士で筋骨ムキムキなのが女性で、なよなよときれいでキーキーうるさいのが男らしいって・・・。
そんななか、ロクサナが惹かれたのが普通の男のアズハル。まあ14歳まで普通の国で生きてきたら、それが普通の恋愛観だと思います。
女王国ではダメ王女だったロクサナが、王女の立場に自覚して、アズハルを夫とすることができますけど、できたら、結婚したそのあともちょこっと書いておいて欲しかったかなぁ。あのハンダーンが作った法をなくして、男性の地位が向上したとか・・・。
終わり方がちょっと残念でした。 -
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ヒロインの美咲は妖狐と人間のハーフ。生家は表向きはコンビニだが、裏世界の妖怪が表の人間世界で悪さをせぬよう見張り、時には捕らえることを稼業とする橘屋分店。人としての普通の生か、妖怪に混じって家業を継ぐか決めかねる美咲の元に本店の息子であり、家業を継いだ場合美咲の婿になるという若者がやってきて……というお話。
ハーフだものの大義名分で狐耳っ娘を書けるという点において、設定は悪くないと思うし、美咲自体も可愛く婿殿も一見ヤなヤツだが、何だかんだで美咲には甘々なあたりも僕好みと言える。
だが、如何せんその背景にある設定をおどろおどろしくしすぎた感がある。「妖怪」を扱う以上、どうしても異形のものを書かざるを得ないのだろうが、婿殿が鵺で実は尻尾が毒蛇で云々とか、捕まえた妖怪が壊死していったりとか、そこはファンタジーの世界「民間伝承ではこう言われているけれど実は……」ともう少し可愛らしくデフォルメとかして頂いた方が良かった気もする。
将来的に美咲がネズミの足とか食わされる展開にならないと良いのだけれど……。 -
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ネタバレ茶々姫といえば、浅井三姉妹の長女で気が強く、秀吉を手玉にとった淀君のイメージが強いですが、このお話は、秀吉など全然出てこない少女時代の初恋のお話でした。
松千代と恋仲になるのはいいけど、最後駆け落ちさせても結婚させても史実と変わってしまうから、最後はどうなるのかなって思ったら、松千代死亡で終わりました。うーん・・・。
まあ、史実には影響ない終わり方ですけどね。
あと、乱丸(私は蘭丸かと思ってましたけど、どっちもOKなんですね)もなんだかんだ言って、結構いい人だったのは、よかったかなぁ。私的には、優しい松千代よりは、ぶっきらぼうだけど意外と面倒見のいい乱丸の方がすきかも。 -
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“「いかがかしら?劉武官」
湘雲に感想を求められたので、蒼刻は黒髪にきらめく蝶の髪飾りを眺めつつ言った。
「飛んだと思ったら、へろへろと落っこちてきそうな瀕死の蝶に見えます」
「情緒があるのかないのかわからないわね、君は」
蒼刻の反応がお気に召さなかったらしく、女官長は「再挑戦します!」と言い、すでに魂が抜けかかっている朧月を再び連れ去ってしまった。やっぱり大丈夫かなあいつ。
「それにしても——紅梅宮での女官働きは花嫁修業を兼ねてると聞いたんですが」
「あら、きちんと兼ねてるわよ?遊び心も忘れないというだけで」
「............」
「ついでに、わたしの楽園も築かせてもらっているけれど。目の保養でしょう」
そういえばこの公主は、女子を愛でるのが大好きだった。本人曰く「だって、わたしの立場で男の人を愛でたら問題だもの」。
女子を愛でるのが無問題とは思えないが、つっこむべきか迷うところだ。
「それより劉武官——あなた、具合はどうなの?」
「さっきから軽く頭痛がします。ついていけなくて」
ふいに真摯な目で問われたのに、わざとズレた答え方をしたとき、衣裳部屋が再び開いた。
「今度こそ自信作です。これなら劉武官にも文句は言わせませんわ!」
自信たっぷりの女官にせっつかれ、少女がおずおずと扉の陰から出てくる。
「......蒼刻さん?」
「おう。なんとか生きてるみたいだな——」
蒼刻の言葉は、驚きのせいで途絶えた。”
今回も面白かったなー。
ただ、最後に朧月が一体何をしたのか今ひとつよく分からない。
星彩の過去話はまだか。
カバー下今回も可愛い。
“(......わたし、涙もろいほうじゃなかったのになあ)
人を撲殺したいと思うほど憎んだり、自分の異能のことで脳漿をしぼったり、目が溶けそうなほど鳴いたり。幽鬼院にこもりきりだった頃には縁のなかった、感情の荒波。
世界がほぼ兄と幽鬼だけで閉ざされていた静かな日々が、遠い昔のことに思えてくる。
不思議と、その頃に戻りたいとは思わないのだけれど。
「——おい。まだ起きられないのか?」
扉を叩く音。蒼刻だ。
「星彩......わたしはいないって言って」
「武官さん、朧月ちゃんはいないそうですよ」
「なんだその阿呆すぎる言い訳は。引きこもりが居留守を使えると思ってんのか」
鋭いつっこみとともに扉を蹴り開けられた。勘弁してください。
しかし気まずいと思ってるのは朧月だけのようで、蒼刻は憑き物が落ちたようにすっきりとした様子だ。ぱっと見は昨日と大差ない仏頂面でも、今はいつもの余裕めいたものを取り戻しているのがわかる。一人だけずるいなあ、と内心思った。
「またおまえは、そんな狭いところにはまって」
「......わたしのことは、日陰で育つ植物だと思ってください」
「その細い腕でどこが育ってんだよ。来い、飯だ」
「ひー」”