櫻田智也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレシリーズ第3弾 6篇の短編集
昆虫好きの魞沢 泉。人間関係が下手でやや空気が読めないところがあるが、物事に対する深い考察力と記憶力、そして相手への優しさで、心に影を落とす人を癒し、真実の形を伝える。
特に「赤の追憶」がウルッときました。自分自身が母にとっての娘であり、娘たちにとっての母だからでしょうか。
そして後日譚の「緑の再会」にホッとし、魞沢さんの優しさを感じました。
「白が揺れた」と、その後日譚「黄色い山」を読み、タイトルである「六色の蛹」は、全て羽化できたのか、少し切なくなりました。
「蛹の中で幼虫はとけてもう一度自分をつくり直す。昆虫がしばしば転生の象徴として扱われるのも -
Posted by ブクログ
ミステリーを読んでいて作中で亡くなったキャラクターに対して可哀想という印象を受けるというのは中々ない感情だと思っていたが、本作ではどの短編を読んでいても感じた。ミステリーにおける被害者というのは一種の舞台装置となっていて、ことが起こった後には証拠品という役割に変わっている。そのため、人間性の部分についてあまり深堀がされないことが多いように感じている。しかし、今作では謎解きという部分も勿論あるのだが、それ以上に何故そうなったかというホワイに重点が置かれているため、亡くなったキャラクターの行動に深みが出てより魅力的なキャラクターとなっている。
この作品を通してミステリー好きではあるものの、人が死ぬ -
Posted by ブクログ
主人公もテーマも深みが増している。
『サーチライトと誘蛾灯』読後に、ほとんど上下巻のようにして続けて読んだ。
もう、「昆虫好きな作家」でも、ましてや「作文好きな昆虫マニア」でもない。
短編集『蝉かえる』には、もうシリーズとしての独特の雰囲気が備わっている。
今回の五つの短編は、前短編集からの連作的要素が盛り込まれ、テーマも一層深みを得ていることは、〈あとがき〉や〈解説〉でもわかる。
なにより物語への引き込まれ方が凄みを増していて、読後の満足感が心地良い。
おもしろかった。
最後の短編「サブサハラの蝿」が、なんだか終章の雰囲気だったけど、続きもあるようだから、きっと読む。 -
Posted by ブクログ
★5 圧倒的な「さりげなさ」に読み心地抜群! 昆虫をテーマにした連作ミステリー短編集 #蝉かえる
■きっと読みたくなるレビュー
★5 美しい短編集。文章とプロットが洗練されていて気品を感じるわー
基盤にあるテーマが昆虫ということもあり、作品全体から素朴さと温もりが伝わってきますね。主役である昆虫好きの青年魞沢泉をはじめ、他の登場人物たちも穏やかで身近なんです。会話もいい感じにホンワカしているんだけど、気の利いたやり取りもあって素晴らしい。
何より短編としての完成度が高いんですよね。有り体に言っちゃうと読み物として面白し出来がイイのよ。謎解きもシャープだし、短いお話の中でバランスよく書かれ