あらすじ
昆虫好きの心優しい青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。行く先々で事件に遭遇する彼は、謎を解き明かすとともに、事件関係者の心の痛みに寄り添うのだった……。ハンターたちが狩りをしていた山で起きた、銃撃事件の謎を探る「白が揺れた」。花屋の店主との会話から、一年前に季節外れのポインセチアを欲しがった少女の真意を読み解く「赤の追憶」。ピアニストの遺品から、一枚だけ消えた楽譜の行方を推理する「青い音」など全六編。日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞を受賞した『蝉(せみ)かえる』に続く、〈エリ沢泉〉シリーズ第3作!/【目次】白が揺れた/赤の追憶/黒いレプリカ/青い音/黄色い山/緑の再会/あとがき
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Posted by ブクログ
このシリーズ、すごく好きです。
本作は泣ける話が多かったと思います。
特に短編の「赤の追憶」が、ベタな展開ですが一番良かったです。
今の時点で病に冒されていなくとも、限りある人生、一日一日を大切に生きていきたいと思わせてくれるお話でした。
Posted by ブクログ
櫻田智也さんの「魞沢泉」シリーズ3作目(2024年作)は、あとがきにも書かれているように、前作で『連作のひとつの区切り』となったことから『心機一転』した新たな部分と、更に切れ味の増したミステリの素晴らしさが合わさった正統進化版と感じたものの、櫻田さん自身は色々と悩まれた執筆だったようで、それは『物語の自由度を高めようとするほど、不思議と作者は不自由になっていくようだ』や、いつになくネガティブで弱気な、本書の魞沢自身とも呼応しているように感じられた。
そうした中で今作は、それぞれに違う色をタイトルに付けたコンセプト連作集という試みに加え、更に本のタイトルが収録作のそれと被らないオリジナルの『六色の蛹』であることに、櫻田さんの最も伝えたいメッセージが込められていて、それは登場人物たちが『昆虫の形態の中でもっとも脆く傷つきやすい蛹の姿と重なった』ことから、人それぞれが内に抱える、様々な色を放ちながら今にも崩れ落ちてしまいそうな、そんな繊細で大切な部分に優しくも勇気を出して寄り添おうとする魞沢の姿を描いていながら、六つの短編全てで彼自身が他の登場人物と同じ立ち位置である点にも、櫻田さんの思いが込められているように思われたのだ。
最初の「白が揺れた」では、人の死というのはこんなにも簡単に訪れるのだということを悲しいほどに突き付けられて、それは『俺も銃を手にしたら、命を奪って平気でいられる人間の感覚が、理解できるんだろうかと思ってな』と、負の連鎖へ陥る危険性もあったものの、その裏には被害者側が何故こんな思いをしなければならないのかという観点から、人の命よりも大切なものなどあるのだろうかという問い掛けと共に、自分が体験した悲しみを他の誰かに与えようとしているだけだったことへの気付きも促せてはくれたものの、私は『愚かだと分かっていても、やらずにはいられなかった』という言葉にも、情を持った同じ人間として共感せずにはいられないものがあった。
「赤の追憶」は一度アンソロジーで読んでいたので、謎の真相が明かされることによって世界が反転する物語の素晴らしさは知っていたものの、他にも魞沢の被る帽子から「白が揺れた」の後の物語と知ったことや、一見何でもないようなものに実は誰かを大切に思う、その人の並々ならぬ思いが込められていたことなど、時が経過することで実感させられた感慨深さが印象的だった反面、ミステリの構図として、『聞こえぬ声を聴きとろうと一心に耳を傾けている』と、『わたしにはいまもうるさいほどに話しかけてくれる娘がいる』とが、見事な対比をなしている上手さも感じられたが、そこには技法だけではなく切なさも募ることに、櫻田さんの物語ならではの素晴らしさがあるのだと思う。
次の「黒いレプリカ」では、そのタイトルにもある『レプリカ』に何重もの意味合いを込めていることに切なさがあって、それはミステリの真相に絡めた非情さの他にも、「甘内」が魞沢に求めていたのは何だったのかという葛藤から、『人は、人を信じるという思いをどれだけ貫くことができるのか?』ということについて考えさせられるものがあり、それは『甘内さんを慰めているふりをして、ぼくはきっと、自分を慰めているんだ』の真意を知ることで、より胸に迫るものがあったのだ。
ここからは単行本書き下ろしとなり、その最初の「青い音」も「赤の追憶」のような対比が沁みてくる物語で、それはサウンド(音)ではなくトーン(音色)であったり、泣いているのではなく雨が降っているのだという気持ちであったりと、そうした繊細な違いを、ここではかつて母とだけ一緒に暮らしたことのある子どもの視点から見た、両親それぞれの悲運な人生とはまた対照的な彼らの愛の深さに擬えているのが切なく、ここでの魞沢は、まさに彼の人生と家族の名誉を救い出した大活躍ぶりでありながら、これを彼の回想だけで解き明かすミステリとしての面白さは、最後のあっと驚くお洒落なトリックも合わさることで、爽やかな読後感も運んでくれたのだ。
次の「黄色い山」は、これまたシリーズ初の試みである先に発表された短編の後日談で、ここでは「白が揺れた」の未来の物語と共に、そこで起きた過去の真相も明かされることで、先の短編を補填する役割も兼ねているのが斬新に思われたのだが、そこには被害者家族と共に、加害者家族や彼らを思う人たちの心の内も繊細に描いていて、改めて人には情というものがあるからこそ、いろんな方向に走ってしまうのだろうと感じられたことには何とも言えないものがあった一方で、これら二つの短編が『里にあらわれる鹿や熊は年々増加傾向』と、ハンターを題材としていることには、前作同様に櫻田さんに備わった先見の明を感じたのであった。
最後の「緑の再会」も後日談にあたるのだが、ここでは時の流れによって、魞沢が確実に年齢を重ねていることを痛感しつつも、これに関しては探偵が魞沢ではなく、作者櫻田智也が魞沢に優しく寄り添った物語なのであり、魞沢が救われた物語であったこと、それが全てなのだと思うが、ちゃんとミステリとして意外性のある面白さも入っているのが、また心憎い。
これで全ての物語について書き終えたが、まだ書き足りないことがあって、それは冒頭にも書いたように、「どうした魞沢くん!」ってことで、君はあれだけ一生懸命に様々な人の心を救ってきたというのに、何故そんなに悩み苦しんでいるのだと言いたいけれども、きっとそれこそが彼の良いところなのだろうし、彼ほどにその表向きの愛嬌の良さの裏に繊細さを抱えた人間も中々いないからこそ、他の人の悲しみや繊細な部分にも優しく寄り添えるのだろう。
そんな君も実は他の登場人物から、『よほど人付き合いの悩みが多いようだ』と心配されていたり、彼自身、『深夜に布団のなかで思い出して大声をだしたくなるくらいには』後悔することがあると言っているのを知り、そんな純粋さが諸刃の剣とならないように、ここで君がどれだけ周りの人の救いになっているのかということを列挙しよう。
『不思議だった。なぜだか魞沢のほうが、追いつめられたような顔をしているから』
『張り詰めていた気持ちの、逃げ場になってくれるような』
『魞沢は大袈裟だと思うくらい驚き、おまけにちょっと悲しそうな表情をみせたので、甘内はなんだか嬉しかった』
『五月に彼の喪服姿をみたときも、同じことを感じた。黒いスーツがぜんぜん似合わなそうな人なのに、実際に着ている姿をみると、やけにしっくりくるのだ』
あとがきで、今回『蛹』をタイトルに使ったのは、「文庫版『蟬かえる』」での法月綸太郎さんの解説がきっかけとなったことを知ったとき、それが櫻田さん自身も魞沢同様に周りの人の思いを大切にしている証と思われたのだ。
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虫に誘われふらっと訪れる先で、人見知りでいてなお必ず人と関わり、人の内を意に反してでも暴いてしまう。
ミステリーを読んでいるのにとても心が温かくなる、そんな物語ばかりです。
櫻田さんの作品はどれも大好きで、もったいなくて「終わらないで」と思いながら、少しずつ読みました。
長編のドラマを見終わったときのような、ずっしりくるものが残ります。ほんとうにお薦めしたいです。
鮮やかな想像力と心に余裕のある方、ぜひ読んで下さい。
Posted by ブクログ
さすらいの昆虫オタク魞沢泉。天然ぶりは装ってるのかどうなのかは不明ながら、いいモン持ってる。思いのほか世に通じていて、所作につられて侮れない。出会う人びとの悲哀を慮りつつも、最後には鋭くもあけすけに推理を披露し、そのお見事な探偵ぶりに胸がすく。銃撃事件はちょっと込み入ってて白から黄へのつながりに惑ったけど、赤と緑は伏線回収に安堵と喜びがこみ上げる。「え~、翠里さん救われなかったの」と悲しませといて…。娘の真名め、言葉足らずもなにもそれ絶対に作戦でしょ(もちろん作者の意図ですから)。タイトルは再会だもんね。
Posted by ブクログ
虫好きの魞沢泉。虫に絡んで出かけた先でトラブルに巻き込まれる。
虫の知識も興味深いし、何より優しさに溢れている。巻き込まれる事件は、猟銃で殺されたりと日常の謎では無いが裏にあるストーリーを感じ取り推理していくスタイルは分かりやすく、文章も読みやすい。
今回は推理に虫が重要な役割を示した話は少ないが、それでも様々な虫知識があり、それも面白い。
あとがきで書かれているように色縛りも良かった。
Posted by ブクログ
文体がえらく読みやすく、ミステリの肝であるトリックにつながる違和感もわかりやすく示されており、とにかく自然に楽しめた。あとがきにもあったとおり、タイトルの色縛りはいまいちハマっていなかったとは思うが、欠点はそれぐらいしか見当たらない。シリーズ三作目だったようなので前二作も急いで読みたい。お気に入りの登場人物は「白」「緑」の串呂さん。
Posted by ブクログ
フッ軽で昆虫が大好きな青年エリ沢が行く先々事件と謎が生まれる。 自分が気づかなければ出会った人々を不幸にしたり傷つけたりしなかったのではないかと時悩み涙を流しつつも、人の痛みに寄り添いながら鋭い洞察力で真実を解き明かす。 赤い追憶で虫の名前に似た花に釣られた主人公が面白かったし、実際に花屋で名前だけ見たら自分も驚いて店に入っちゃうよなーと思った。
Posted by ブクログ
やっぱりこのシリーズ好きだなぁ。犯人だと推測していてもその人の心情を想像してあげられる、心優しい魞沢くんだからこそ、出会う人たちも普段は人に話さないようなことまで喋ってしまうんだろうな。優しいがゆえに、自分のしたことで人に不幸を呼び寄せてしまってるのでは、と涙がでるほど悩んでしまう彼をこの先もずっと見ていきたいと思う。今作の中では特に「白が揺れた」が好きで、その後の編で登場人物たちのそれからが見られたのも嬉しかった。
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シリーズ第3弾 6篇の短編集
昆虫好きの魞沢 泉。人間関係が下手でやや空気が読めないところがあるが、物事に対する深い考察力と記憶力、そして相手への優しさで、心に影を落とす人を癒し、真実の形を伝える。
特に「赤の追憶」がウルッときました。自分自身が母にとっての娘であり、娘たちにとっての母だからでしょうか。
そして後日譚の「緑の再会」にホッとし、魞沢さんの優しさを感じました。
「白が揺れた」と、その後日譚「黄色い山」を読み、タイトルである「六色の蛹」は、全て羽化できたのか、少し切なくなりました。
「蛹の中で幼虫はとけてもう一度自分をつくり直す。昆虫がしばしば転生の象徴として扱われるのもそれ故です。
人間にも蛹の時期があって、それ以前の後悔をすべて忘れて生まれ変われるなら、この世はもう少し生きやすいかもしれません」
「誰もが秘密を抱え、いつかそれを打ち明けたいと思いながら、自らの弱さに負けて叶えられずにいる。潰れた先端が歪な短い羽のように広がった弾頭が、何度も羽化を試みては失敗し、ついに生まれ変わることのできなかった小さな蛹に見えた」
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短編集なのかと思って読み始めた。
けれど、とても心優しい青年とその出会う人々が年を経てもなお場を賑わせて(場を和ませ沈ませて)くれる、連作短編集でした。
読者をも翻弄させながら、えりさわ青年は
辿々しくも明るく聡明に謎を解決してくれてミステリーながらいつのまにか優しい気持ちを抱かせしんみり、泣きたくなるような気持ちにさせてくれました。
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魞沢泉
わたしが知っている探偵?の中で一番優しく癒される人だ。探偵そんな知らないけど。
第三弾です♪待ってました〜!
短編6つですね
癒されたわ…ちょっと泣けたし…
殺人とかアリバイがとかそんな話じゃありません。
ちょっとした事件?出来事?
それに何故か関わってしまう。
そして関わった人の痛みに寄り添って気づくと解決してるんですね〜。
これドラマとかならないかなぁ…
まだこのシリーズしか作品書いてない新しい作家さんなので楽しみです\(//∇//)
Posted by ブクログ
虫好き探偵が、真実を解き明かす6編。繋がりがある話もあり、面白いし感動もした。初めて知った作家。ほかの虫探偵シリーズも読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
シリーズ第3弾。
相変わらず虫を追いかけている魜沢くんだけど、今回は、遺跡の調査に関わったり、ピアノのコンサートに赴いたり、少し文化的な活動もしている。
飄々としながら何気なく謎を解き明かす流れは変わらず、いつもちょっと間抜けな姿を見せながらも、なぜかスマートな謎解きになっていて、なんだかわからないけど素敵。
(私は虫は苦手なので、仲良くはなれないだろうけど…)
今後の活躍にも期待!
Posted by ブクログ
昆虫好きのちょっと抜けたような優しい青年が、ちょっとした気づきから出来事の真相に迫っていく短編昆虫ミステリーww
前半のお話が後半別の視点からのお話になるとこなかなか面白くて、猟師が誤って撃ってしまったけど実は?みたいな、季節外れのポインセチアを欲しがった少女のその一年後みたいな
読みやすく映像化なりそう!
あんぱんの原豪役の俳優さんイメージです
Posted by ブクログ
エリ沢泉シリーズ、3巻。
まず最初に、読み方の注意!
とにかく目次どおりの並び順で読むこと!
時系列順に(何年も)経っており、1話目2話目の盛大なネタばらしがその後繰り広げられるので……!
わたしは短編集は好きそうなものから読んでしまうので、ものすごいショックを受ける羽目になりました。自業自得( ω-、)
昆虫探偵から、自然文化民俗全般にジャンルが広くなってきて、エリサワ探偵の心優しさもいっそう増している。
今巻は、著者が後書きでいわれているように、「事件が解決したあとの割り算の余り」が深く沁み渡ってくる佳品が多く、まさに今後のエリサワ探偵ものの在り方を堂々と示してくれている。
「自分が関わると、相手を不幸な目に遭わせてばかりいる気がする」
という苦悩は、現代の探偵にはお馴染みのテーマだが、がっつり泣いちゃうエリサワくんはかなりかわいい(笑)
そして、全6話にて、きちんとアンサーが付いていたことにもホッとした。
優しく、しかしそれだけではない弱さ卑怯さ苦しさも含めて、大人のための読後感の心地よい連作短編集。
白が揺れた
赤の追憶
黒いレプリカ
青い音
黄色い山
緑の再会
Posted by ブクログ
シリーズを重ねるごとに魞沢泉の人物像が見えてきて楽しい。
謎解きをするうえでここまで心優しい謎解きをする主人公を見たのは初めて。
謎が謎のままな事が穏便に平和になってるのに謎を解き明かすことによって傷つく人が出てくる。でも謎をそのままにしてしまうと被害者、被害者家族は苦しいまま。でも加害者も苦しいままなのかも。
どっちの方がいいのかな。
Posted by ブクログ
昆虫を愛する、少し頼りなくて対人関係に苦手意識を持っていて、推理能力が高い主人公。どこかとぼけた雰囲気が亜愛一郎味あるなと思ってたら作者さんが泡坂リスペクトを公言されてた。苦手といいつつも事件の関係者に自覚的に関わっていく主人公の姿が好ましい。どの事件も些細な伏線から思いも寄らない真相が明らかになる、とても端正なミステリ短編集。1作目の「白が揺れた」から面白く読み進め、最終作「緑の再会」でほっこりと本を閉じました。前作も読んでみよう。
Posted by ブクログ
白から黄色、そして緑への流れがとても好きだった。
なんだかんだ、どこに行ってもするりと愛される魞沢というキャラクターが活躍するところをもっと見たい。続編がたくさん出るといいな。
Posted by ブクログ
この作家さんが初読みでしたので、最初主人公は串呂かと思いました。
その後「昆虫好きの優しい青年」魞沢泉だとわかる。
ただ、主人公にしては外見とかの描写がないな、と。
表紙の青年を思い浮かべましたが。
そしてこの、観察眼と推理力がすごい飄々とした青年像はすでに「ミステリと言う勿れ」の久能整がいる。今後の差別化に期待したい。
Posted by ブクログ
主人公は昆虫好き
この設定が如何なく発揮されているかは微妙でしたが、彼の洞察力・推理力が対した人の心の氷を溶かしていくミステリー作品
主人公の性格が優しさはあるが、ベタベタとした人との関わり合いをしないところが好感を持てました
その優しさ故に関わる人の闇に光を当て、打ち解けていく物語の展開は良かったです
短編なので読みやすく、シリーズものらしいので他の作品も読んでみたいと思いました
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虫好きの魞沢泉がどの話にも登場する連作短編。
誤発射事件からちょっとした謎まで、彼は行く先々で何かしらのアクシデントに遭遇する。
色と虫縛りの本連作短編は、話も多岐に渡り読みやすさも様々。「赤の追憶」が読みやすかったな。
独立していながらもそれぞれに繋がりがあるのが面白い。
でも、なんといっても作者あとがきが一番良かった。
Posted by ブクログ
魞沢泉シリーズ第三弾。
魞沢はへぼ(クロスズメバチ)獲りを学びに行った山中で、銃撃事件に遭遇する。状況からは獲物と間違えて撃たれたと思われるが…『白が揺れた』
花屋の店主は一年前に来店した少女と季節外れのポインセチアを入荷する約束をして…『赤の追憶』
工事現場で土器の破片と白骨が発見された。近くの埋蔵文化財センターでは過去に捏造事件があり…『黒いレプリカ』
魞沢は偶然知り合った男性に、音楽家である父が遺した楽譜の話を聞く。発見した隣人によると一枚失われたと言うが…『青い音』
へぼ獲りの名人が亡くなった。名人が棺に入れて欲しいと言い遺した一体の木製の仏像に秘められた秘密とは…『黄色い山』
魞沢は再び花屋を訪れる…『緑の再会』
今回も魞沢泉は神出鬼没。スズメバチを獲りに山に入ったり、埋蔵文化財センターで働いたり。前回よりも人間味が感じられた。過去作では直接繋がりのある話ってほぼなかった気がするけれど、今回は直接繋がりのある話が収録されている。花屋の『赤の追憶』と『緑の再会』がよかった。店主の人柄なのか、他の話と違ってどことなくあたたかい印象。
Posted by ブクログ
昆虫好き青年、魞沢泉の短編集。虫つながりで狩場、花屋、文化財センターなどに顔を出して事件と遭遇する。最初の2編の後日談が最後にあったのは嬉しい驚き。特に「赤の追憶」からの「緑の再会」は泣けた。また、狩猟場での銃撃事件を描いた「白が揺れた」は狩猟の実情がわかって面白かった。
Posted by ブクログ
魞沢泉シリーズ第三弾。連作短編集です。なんか虫にまつわるあれこれからのミステリだったように記憶してましたが、今回は虫要素は少なめ。虫に関する雑学的なものはわりに興味深かったのでちょっとだけ残念。そのあたりのことはあとがきに少し書かれてました。
短編集なんですが、話にバリエーションがあって飽きさせない作りだな、と。実はこのありふれた日常の裏でも・・・という真相がちょっとイヤミスっぽくなるのばっかかと思いきやハートフルなものもあったりと。。
そして最後にエピローグ的な一編が入ってなんかきれいにまとまった感じしましたね。そしてこの手のミステリではお約束ですが「探偵役はやたら(殺人)事件に遭遇する」ということに対して「自分がかかわるといつも人が不幸になってしまう」と気にしているのがある意味斬新にすら思えました。そして久々に会った関係者が生きていた時に思わず涙してしまう場面はなんだかちょっとこっちもグッときました。
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エリサワと言う昆虫好きな青年が行く先々で出くわす事件や謎を解き明かすと共に、関わる人の心に寄り添う様を描いてる。それぞれ色をモチーフにした6篇からなる短編集。優しい気持ちになれる読後感が良い。
Posted by ブクログ
昆虫好きの青年が探偵役になって、出会った人の謎を解き明かしていくパターン。どうやら前作があったらしいが、読んでいなくてもそう支障はなかった。
おもしろいのだけど、ところどころ分かりにくい部分もあって、物語りに没入しにくかった。
説明が分かりにくいのか、話が専門的すぎるのか…
前作も読んでみるかどうか悩ましいところだ。
Posted by ブクログ
抜けているようにみえて案外勘が良い。抜け目ない観察眼でホワットダニット(何が起きていたのか?)を鋭く洞察する。一方で勘違い多めのおとぼけキャラクター。昆虫好き探偵•魞沢泉(えりさわ せん)は、行く先々で遭遇する事件や人物の裏側に潜む真相に迫る…
「蝉かえる」に続く《魞沢泉(えりさわせん)シリーズ》第三弾。全6話からなる連作短編集。
なんといっても魞沢泉のキャラクターが魅力的。ただ単に謎を解くだけでなく、関係者の心に寄り添う優しさが溢れている。天然で時たま失礼な発言もあるけど、憎めないヤツなのだ。
「白が揺れた」
本格ミステリ的にコレが一番まとまってる印象。何気なく伏線を紛れ込ませる手腕はさすが。レッドヘリングも効いている。
「黄色い山」
「白が揺れた」を伏線に使う大胆さ。多重構造過ぎてやや脳が疲れた。昆虫が物語のキーとして上手くハマっている。
「黒いレプリカ」
犯行プロセスは無理くりだが、切ないラストは胸を打つ。
「青い音」
これも切ないけど、仕掛けを活かしつつ前向きな気持ちになるプロットが良い。
「赤の追憶」
魞沢泉の洞察力が光る。ハートウォーミングな展開で読後感良好。
「緑の再会」
「赤の追憶」の後日談でありつつこれまでのエピソードを上手く絡ませ、連作短編集のトリを飾る役割も担う。コミカルな掛け合いと甚だしい勘違いが微笑ましい。
週刊文春ミステリーベスト10 13位
このミステリーがすごい! 10位
本格ミステリ・ベスト10 3位
SRの会ミステリーベスト10 5位
ミステリが読みたい! 8位
《魞沢泉シリーズ》
1.サーチライトと誘蛾灯
2.蝉かえる
3.六色の蛹