あらすじ
昆虫好きの心優しい青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。行く先々で事件に遭遇する彼は、謎を解き明かすとともに、事件関係者の心の痛みに寄り添うのだった……。ハンターたちが狩りをしていた山で起きた、銃撃事件の謎を探る「白が揺れた」。花屋の店主との会話から、一年前に季節外れのポインセチアを欲しがった少女の真意を読み解く「赤の追憶」。ピアニストの遺品から、一枚だけ消えた楽譜の行方を推理する「青い音」など全六編。日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞を受賞した『蝉(せみ)かえる』に続く、〈エリ沢泉〉シリーズ第3作!/【目次】白が揺れた/赤の追憶/黒いレプリカ/青い音/黄色い山/緑の再会/あとがき
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Posted by ブクログ
文体がえらく読みやすく、ミステリの肝であるトリックにつながる違和感もわかりやすく示されており、とにかく自然に楽しめた。あとがきにもあったとおり、タイトルの色縛りはいまいちハマっていなかったとは思うが、欠点はそれぐらいしか見当たらない。シリーズ三作目だったようなので前二作も急いで読みたい。お気に入りの登場人物は「白」「緑」の串呂さん。
Posted by ブクログ
シリーズ第3弾 6篇の短編集
昆虫好きの魞沢 泉。人間関係が下手でやや空気が読めないところがあるが、物事に対する深い考察力と記憶力、そして相手への優しさで、心に影を落とす人を癒し、真実の形を伝える。
特に「赤の追憶」がウルッときました。自分自身が母にとっての娘であり、娘たちにとっての母だからでしょうか。
そして後日譚の「緑の再会」にホッとし、魞沢さんの優しさを感じました。
「白が揺れた」と、その後日譚「黄色い山」を読み、タイトルである「六色の蛹」は、全て羽化できたのか、少し切なくなりました。
「蛹の中で幼虫はとけてもう一度自分をつくり直す。昆虫がしばしば転生の象徴として扱われるのもそれ故です。
人間にも蛹の時期があって、それ以前の後悔をすべて忘れて生まれ変われるなら、この世はもう少し生きやすいかもしれません」
「誰もが秘密を抱え、いつかそれを打ち明けたいと思いながら、自らの弱さに負けて叶えられずにいる。潰れた先端が歪な短い羽のように広がった弾頭が、何度も羽化を試みては失敗し、ついに生まれ変わることのできなかった小さな蛹に見えた」
Posted by ブクログ
短編集なのかと思って読み始めた。
けれど、とても心優しい青年とその出会う人々が年を経てもなお場を賑わせて(場を和ませ沈ませて)くれる、連作短編集でした。
読者をも翻弄させながら、えりさわ青年は
辿々しくも明るく聡明に謎を解決してくれてミステリーながらいつのまにか優しい気持ちを抱かせしんみり、泣きたくなるような気持ちにさせてくれました。
Posted by ブクログ
白から黄色、そして緑への流れがとても好きだった。
なんだかんだ、どこに行ってもするりと愛される魞沢というキャラクターが活躍するところをもっと見たい。続編がたくさん出るといいな。
Posted by ブクログ
魞沢泉シリーズ第三弾。
魞沢はへぼ(クロスズメバチ)獲りを学びに行った山中で、銃撃事件に遭遇する。状況からは獲物と間違えて撃たれたと思われるが…『白が揺れた』
花屋の店主は一年前に来店した少女と季節外れのポインセチアを入荷する約束をして…『赤の追憶』
工事現場で土器の破片と白骨が発見された。近くの埋蔵文化財センターでは過去に捏造事件があり…『黒いレプリカ』
魞沢は偶然知り合った男性に、音楽家である父が遺した楽譜の話を聞く。発見した隣人によると一枚失われたと言うが…『青い音』
へぼ獲りの名人が亡くなった。名人が棺に入れて欲しいと言い遺した一体の木製の仏像に秘められた秘密とは…『黄色い山』
魞沢は再び花屋を訪れる…『緑の再会』
今回も魞沢泉は神出鬼没。スズメバチを獲りに山に入ったり、埋蔵文化財センターで働いたり。前回よりも人間味が感じられた。過去作では直接繋がりのある話ってほぼなかった気がするけれど、今回は直接繋がりのある話が収録されている。花屋の『赤の追憶』と『緑の再会』がよかった。店主の人柄なのか、他の話と違ってどことなくあたたかい印象。