星野概念のレビュー一覧
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なんていいタイトルなんだ。いつからフェミニストになったのか、いつフェミニズムに出会ったのか、ではなくインターネットでは揶揄や冷笑の単語となっている『フェミ』を使い、おなじみの風邪薬のキャッチコピーのようなリズム感でフックと軽快さを両立している。
タイトルの通りなのだが、この本にはあらゆる人がフェミニズムにいつ、どのようにして出会ったのかがリレーエッセイ形式でまとめられている。もちろんトランスジェンダーの書き手も、ノンバイナリーの書き手もいる。
フェミニズムとの出会いが劇的な人もいれば、ぬるっとじわっと出会っていたという人もいて、これはあらゆる人に語ってほしいテーマだと思ったし、私も近いうちにまとめたいと思う。
どのエッセイも読み応えがあり、内容としてもおもしろかったのだが、武田砂鉄さんの”編集者はこの原稿を森喜朗や麻生太郎には依頼しないはずなので、”という一文がウィットに富んでいて痛快で笑ってしまった。
そういえばなんだかんだで武田砂鉄さんの著書はまだ読んでいない気がするので近いうちに読みたい。そしてこの感想を読んでくれたそこのあなたにも答えてほしい。
『あなたのフェミはどこから?』 -
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誰かにシェアする話でもない‥今日いいことがあったという誰にも奪われない自分だけの嬉しさを味わうことって生きていていい自信にもつながる。
料理は誰からも指図されない、思うままにやっていい。成果がすぐに現れてちゃんと美味しい。料理で自尊心を保つことができる、自分を丁寧に扱う行為、自分をケアする行為なんだなという文が心に沁みた。誰かのためじゃなく、自分の為の料理が自尊心を育み、人生を生きやすくするんだ。
料理は元々好きだったけど、もっと自分の為に作って良いんだなって、誰かに許された気持ちになりました。自分が喜ぶ食材を買って自分が好きな味付けにして、ここまで自分をケアできる行為って他にないかもしれないな。 -
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本書から、自炊料理という日常的で、個人的で、ともすれば誰からも褒められることもないかもしれないささやかな行為に悩む人達が、実はその背景に自尊感情に悩んでいたり、傷ついていたりするということが分かってきます。そして、料理が個人的な行為だからこそ、もっと自分の五感や気分に素直になって、自分自身を労ってあげても良いと料理家の著者と精神科医の星野氏は優しく説いているように感じました。
比べるのは他人とではなく、料理を楽しめなかった以前の私であり、自分が食べたい物を食べたい味で食べられるのは、健康的な人生において大切なことと思いました。明日からの料理のハードルが少し低くなった気がします。 -
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ネタバレまるで朝ドラ「虎に翼」の「はて?」というセリフのタイミングを集めたような本。
当たり前だと思っていたのに「あれ?おかしいかも?」と気づく場面。
様々な立場の方の寄稿が集まってて一つ一つ短い。軽そうで、全然軽くない。
この本にはフェミニズムというテーマだが、「弱さを認めて、差別を減らして、共に生きていく社会」みたいな風潮が感じられる。弱さを見つめるために、それぞれが自分の生い立ちを話している項が多い。
以下、ネタバレ
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鴻巣麻里香「脱抑圧の三代記」
p.69
「子どもがいるんだから、そんなに無理して働くことはないんじゃないか。一度仕事のペースを落として、子育てに専念したらどうだ」
言われたその場で号泣した。仕事を取り上げられることが怖かった。私から仕事を取り上げないでくれと、泣いた。そして腹が立った。同僚には子を持つ男性もいる。彼らがいくらプライベートを犠牲にして働いても、どれだけ不調をきたしても、飲みに誘って慰労するくらいで「子育てに専念したらどうか」とは言われない。なぜ私だけ、仕事を奪われなければならないのか。
あれ。もしかしてこれって、私が女だから?
p.70
・精神を病む女性の多くが経験している性被害
・DV被害者の圧倒的多数が女性であること
・ひとり親の大半が女性であり、多くが働いていながら、貧困率が非常に高いこと
・無職在宅の成人男性は「ひきこもり」として問題視されるのに、同じ状況で暮らす成人女性は「家事手伝い」という名が与えられアンタッチャブルなまま放置されること
・外国から、特にアジアから嫁いでくる女性がおしなべて若く、そして配偶者である日本人男性のほとんどが高齢であること
・望まない妊娠における男性の不在
・「毒親」とラベリングされる母親の影に隠れた、話を聞かない父親の存在
・「障害者の性」にまつわる議論から排除される女性障害者
p.70
環境への懐疑的な眼差しは、男性の優位性を何よりも脅かすものである。そして医療や福祉といった対人援助の組織は、マッチョ化しやすい。誰かが誰かを支援するという不均衡な関係は、支配に限りなく近いものであり、支援する側は無意識的に支配力を希求する。
星野概念「パワーのこと」
p.102
「負ける精神医療」の「負ける」は、精神医療の医療っぽい、権威的な側面を医療者が手放し、人としての側面への意識を強く持ち続けるという雰囲気をまとっているように感じます。一見、専門職性が薄くなるような負け感があるかもしれませんが、これこそが対人的かかわりの奥義なのではないかと思っています。
※「負ける精神医療」は精神科医・山本昌知先生の言葉
水上文「BLとフェミニズム」
p.116
いわゆる「女性向け」の物語において、少女たちはなぜこんなにも「男性から選ばれること」ばかりを夢見させられているのか。問いの全てはBLと共にあった。だからわたしにとってBLについて考えることは、世界について考えることと同義だった。大袈裟にすぎるようにきこえるかもしれないけれど、でも本当にそうだった。
金井冬樹「The powerless Do Have Power.」
p.123
社会が自分の味方をしてくれると感じている元気な男の子たち、そもそもそんなことを考えずに済む人たちとは、いずれ別の生き方をするのだろう、と。
このとき感じたこの感覚が、良くも悪くも僕の人生の核に近いところにあると今になって感じます。
(中略)
僕の大好きなパーソナル・ジンの魅力の一つは、多数の読者に読まれることを想定していないため、言いたいことを言える、つまりセーファースペースを確保した上で話ができることです。必然的に「話す相手を選ぶ話題だけれど、話さずにはいられないこと」が書かれる傾向が強く、それは、いつかの友達の笑っていいのかわからないジョークー傷ついてもやり過ごさなければならない時の、乾いた、怒りと苦しさと諦めがないまぜになったあのユーモアを思い起こさせ、勇気を与えてくれます。
※ジン(zine)個人や少人数による自主制作の出版物
p.124
男性にとってフェミニズムとの距離感は難しい面もあると思いますが、単に女性に対して反省を示したり感謝したり、女性を守ろうとすることではなく「男性も女性も、いずれかに当てはまらない人も、ジェンダーによる差別をうけない社会を目指すこと」や「階級や障害によるあらゆる差別のない社会を目指すこと」、つまり自分の今いる場所から差別をなくそうと努めることが、フェミニズムへの参加につながるのだと思います。
能町みね子「神はいないが」
p.154
私に神はいない。ずっとそう思っていた。今も思っている。
私はそういったものを幼い頃から徹底して持てず、何かを絶対的存在に捉えたり、すがる存在を持ち続けたりできる人のことをうらやましかった。 -
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多様な職業や様々な性自認を持つ19人が「あなたのフェミはどこから(はじまりましたか)?」の問いに対して、ナラティブに応えてくれる。個人的な生育歴や経験は多様でもどこかで共通する体験が語られ、フェミニズムとの出会いや現在の活動、到達点などを綴るリレーエッセイとなっている。1948年に定められた世界人権宣言の第1条は「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」と記載され、第1条のあとに「人間は、理性と良心を授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」と続く。○国ファーストと排外主義が飛び交う今日において、人権感覚を研ぎ澄まし、ジェンダー平等の視点で、フェミニズムを学ぶことは、人間としての良心を磨くことであり、自身のこれまでの生き方・考え方を内省する重要な機会と捉えるのは私だけだろうか?
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自身がフェミニズムに対して、ちゃんとつかまえることができていないからだと思うが、わかりやすく入ってきたのは、星野概念さんと武田砂鉄さんの文章。フェミニズムだけでなく、自分とは異なる人との対峙には、必ず客観性を忘れてはならない、という点はいつも思うことだし、そうすることで少しでも中に入り込むきっかけになるかもしれないのだと改めて思い返した。適度な距離と、想像力と、それを反芻する能力が高まることでお互いがもやもやせず、もう少し前を向いて生きていけるような雰囲気が作り出せそうな気もするが、それがなかなか難しいのだよな、と改めて思ってしまった。
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みんなが悩む「自炊」について、
料理研究家の方がパッションではなく
かなりロジカルに解説された本書。
山口さんと星野さんの柔らかさ、
会話形式という方式により
非常に読みやすくなっているが
あまりに美しい因数分解に舌を巻いた。
そして驚くほど腹落ちし、とても許された気分に。
(なぜ料理が億劫なのか、料理とは、など)
きっとどの料理家さんも思っていることだとは思うんだけど、他の本だとあまりにパッションだけが全面に出過ぎているイメージがあり、
「だからそこにいくまでに至ってないんだって、、泣」とずーっと胸焼けしていたので。
対談内のお二人の寄り添い方、距離の取り方が
とても心地よく、なんとなく自分を大事にできてないな〜と頭の端で感じている方にはかなりおすすめ。
はっとする金言も多数。
いやーよかったなーいい本読んだ。 -
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コミックエッセイで読めるうつ病についての本。
ハラユキさんの本は初めて手に取りました。
ご自身の経験をふまえて、
・受診の目安
・病院の選び方
・マタニティブルーや更年期との違い
・どのような経過をたどり、現在はどうしているか
などが分かります。
本の中で少し触れられているオープンダイアローグについて、もう少し知りたくなったので関連書籍をあたるつもりです。
ストレス社会だもの、誰でもみんなうつになるよね
という軽いテイストながら、押さえるところは抑えられていて、入門というか「私ってもしかして……」と思っている人に優しい内容になっていると感じました。 -
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料理をするのが苦手、好きになれず、かと言って、「上手くなりたい」という気持ちの矛盾の中で、いわゆる「料理本」ではないものを探してました。
たまたま、「料理コーナー」で見かけたのが、本書。
心理学者の方が共著されていますが、そんなに堅苦しくありません。そして、期待通り、料理に対する「責任感」という呪縛から、「うーん、結局は楽しんで、自分の好きな味で、好きなものを食べる事が、本来の「摂取」本能であり、料理をする事の本当の価値なんじゃないか」と思えるようになりました。当たり前のことかもしれませんがー。
自分なりに、何かその時その時の「愉しさ」みたいなものを見出していけば良いんだなぁと思いました。大きくいうなら、人生論にも似ているような気がします。本当に、料理に対して気持ちが楽になりました。
良書です。また読み返したいと思います。