宮地尚子のレビュー一覧
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『傷を愛せるか ちくま文庫(増補版)』に惹かれて、『トラウマ ( 新潮社)』を時間を掛けて読み込んできた、宮地尚子先生のストーカーです。
精神科医であるからなのか…宮地さんの文章には、独特の魅力がある。
一つ一つの言葉を大切に、全体の話の流れを構築し、自分自身の体験として美しくまとめ上げて行く。
それは、読者から見ると「読みやすい」し「印象に残る」と言う効果として現れる。
現代のボストンに住む日本人が、この頃と同じとは思えないが、精神的には同じことが繰り返されているのだと思う。
(インターネット技術の進歩で、電話がチャットになり、手紙はEメールに変わったとは言え)
環境も整備されるようにな -
Posted by ブクログ
ネタバレ先日読んだエッセイ『傷を愛せるか』の著者・宮地さんが解説してくれている本。
現代の私たちは傷つきやすい時代にいて、様々な「傷つき」とともに生きていかなければならないのだと、改めて思い知らされた。
しかしその上で、「傷つき」にはどのようなものがあるのか、どう生きるのがベターなのか、そして「傷つき」を癒すためには何ができるのかということを、この本は教えてくれる。
ひとつひとつ整理していくことで、心の中が落ち着くような感覚があった。
心に留めておきたい言葉はいくつもあったが、一番印象に残っているのは以下の箇所だった。
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私の友人は「転んだときには、どんな石を拾って立ち上がるのかを考える」と -
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久しぶりの宮地尚子さん。
薄くて読みやすい。イラストも可愛い。
「どうして誰かに話を聞いてもらうと楽になるのか」や、無傷で生きるのは不可能という「傷つきの練習」の話、人間の残虐性の話も興味深かった。
「安全な場所に、共感性をもった相手といることで、気持ちの整理がついていく」
たったこの短い一文。
子どもにとってのそういう場でありたいとわたしは思って過ごしていたんだなと、ストンと思ったし、そういう誰かにとっての他者になるべく勉強しているんだなと思う。
・よい聞き手に出会うことが出来たとき、「傷つき」体験によって喪われた他者への信頼感を取り戻すことが出来る。
・聞き手からの共鳴や共感をとお -
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何でみたのだったか、また忘れてしまった。何かの本の中で本書が参考文献で挙がっていて、環状島について言及があった。興味を惹かれて読んだのだけれど。
素晴らしいのひと言につきる。トラウマについて、一個人のミクロの視点から社会全体、グローバルな環境全てを俯瞰したマクロの視点まで、見事にトラウマについて、わかりやすく、過不足なく、ここまで説明し切っている著作は読んだことがない。
とりわけ、第6章が秀逸。最近の私にありがちだが、感銘のあまり泣けてきた。実際に支援者として関わっている個人が、何人も思い浮かぶからというのもあるだろうけど。
いつも思っている、人は1人では生きられないということを著者も言ってい -
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同著者の「傷を愛せるか」に感動して読み始めた本。素晴らしい本です。
読み終えてしまうのが勿体なかったと感じたほど。
『トラウマ』を通じて人と心の関係が様々な視点から考察されている。
「研究費補助金助成」の研究成果の一部でもある。ということで内容は学術的なレベルのはずだが、とても読みやすい。
以下はまだメモだが、特に第5章「社会の傷を開く」を読んだ際に書いたもの…
……
これは「トラウマ」だけに終わらない。
心の傷全てに対して、傷を負う者、負わされる者、なぜそのような事が起きるのか。
誰でも『他人を傷つけることは悪いこと』という共通認識を持っていると錯覚しているが、それは錯覚でしかない。
差別 -
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Pⅲ
『トラウマにふれる。
触れる。振れる。震れる。降れる。狂れる。
触れる。ふれる。ゆれる。ぶれる。ずれる。
精神科の臨床をしていると,相手の抱えるトラウマ(心の傷)がなんとなく透けて見えることが多い。でもそこに触れた方がいいのか,触れない方がいいのか,迷うこともまた多い。傷には触れないですませられたら,それにこしたことはない。けれども触れざるをえないこともある。時には,深い傷口をざっくり開けた状態で,目の前にあらわれる人もいる』
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こころの傷ーそれはあたりまえに目に見えない。
だからといって,見て見ぬふりしていいわけがない。
だからといって,どう見たらいいのか正解があるわけで -
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傾聴とは何か。
トラウマを知り、トラウマと向き合うことを知ることで、この問いの答えに一歩近づくことができた気がする。
傾聴とは、自分のアンコンシャスバイアスとの闘いなのだと思う。向き合う相手が深い傷を抱えている程、自らの経験則、培った来歴を捨てて、ありのままを受け入れることが出来るのか、が試されているのではないか。
我々は、無意識の部分を探究するスキューバダイバーなのだ。
単一の学問ではなく、森岡正博さんが説く「ひとり学際」の精神で、総合的な学びを成し、自らの無意識に深く踏み込むことが必要だ。
そうでなければ、真の「傾聴」は実践できない。トラウマを抱えた人と共に居ることは出来ないのだ。 -
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ずばり、いい本でした。
・子供は親の失敗談を喜ぶ
確かに!私も母がファミコンをやっていて鍋を焦がした話がたまらなく好き(笑)
・親は補助輪のようなもの。なくてはならないものから、あると邪魔!になって健全である。
上手いこと言う。補助輪として必要とされているうちが花ということか。
・母性は育てる中で育まれる。
これはもっと前に聞きたかった。頼りない背中や泣き声を聞きながら、おっぱいをあげながら、母になっていくんだよなぁ。生まれるまでは実感が湧かなくて本当に不安でいっぱいだった。その頃の私にだんだんお母さんになれるよ!と伝えてあげたい。
・酸素マスクは親が付けてから子に付ける。ケアする人だ -
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母の友で連載されていたエッセイ集。
一つ一つはとても短いエッセイなので読みやすい。
著者の人柄が現れているのか、文章も優しく温かい。
しかし、
母親の自己犠牲は美化されがちだが、実際には何のメリットもない。
ズバリと清々しいほど言い切ってくれた!
素晴らしい!!!
この前後も夫に読み聞いてもらったのだが、「つまりこうやって夜な夜な読書をしていることが、妻(私)にとってのセルフケアってこと?」と聞かれた。
確かに読書は自分の大切な時間だけど、それだけじゃなくて子ども抜きで社会との繋がりが欲しいんだよね。
そこはなかなか理解してもらえなかった。残念。
それから著者が家事なんてだーいきらい!と -
Posted by ブクログ
トラウマとはどのような状態のことを示すのか、誘発される病気は何か、どのように向き合うべきか、などを知りたかった。今現在トラウマのようなものにとらわれているが、それに関して一般的な知見を得たり言語化したりすることで回復の糸口がつかめればいいなと思った。
世間には自分よりもっと過酷な状況、深刻な症状の人がいて、それに比べれば私は軽いほうなんだ、と感じた。これぐらいの症状で精神病だなんて言っていて、本当に苦しんでいる人に対しておこがましかったかも。
p44の環状島の説明、わかりやすかった。
自分にとってなんでもない言葉が相手にとってそうであるとは限らない。自分が加害者の側に無意識のうちにならな