あらすじ
傷とともに生きる人のための、こころのケア論。
SNSの多様化、リモートワークの波及、デジタル社会の加速――。人と人との距離感が変わりつつある現代では、誰もが多くの「傷つき」を経験する。自分と他者はなぜ傷つき合い、それはどのように癒やせるのか。トラウマ研究の第一人者が、現代に特有の「傷つき」の背景を分析し、「レジリエンス」「エンパワメント」「ポスト・トラウマティック・グロウス」など、数十年培ってきた専門的知識を初めて私たちの日常生活に落とし込んで解説する。
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Posted by ブクログ
薄く、文字が大きく、読みやすいのは「ハードルを下げて届いてほしい人に届けるため」なんだろうなぁ。内容はざっくりとしているながら、「傷ついている」という心に寄り添い、シンプルかつ普遍的な内容を書いていると思う。すごくいい本で、今の私に本当に必要な本だった。
Posted by ブクログ
先日読んだエッセイ『傷を愛せるか』の著者・宮地さんが解説してくれている本。
現代の私たちは傷つきやすい時代にいて、様々な「傷つき」とともに生きていかなければならないのだと、改めて思い知らされた。
しかしその上で、「傷つき」にはどのようなものがあるのか、どう生きるのがベターなのか、そして「傷つき」を癒すためには何ができるのかということを、この本は教えてくれる。
ひとつひとつ整理していくことで、心の中が落ち着くような感覚があった。
心に留めておきたい言葉はいくつもあったが、一番印象に残っているのは以下の箇所だった。
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私の友人は「転んだときには、どんな石を拾って立ち上がるのかを考える」と言います。とても面白い発想です。転んでしまったら、傷が痛くて石を拾おうと考える余裕なんてないと思うかもしれません。けれども、転んだことによって、私たちの視野は変わります。ひょっとしたら、その変化した景色のなかに、次の可能性やチャンスが見えるかもしれないのです。
〈略〉
私は時折「傷つきを耕す」ということを考えます。「傷つき」というと、どうしても暗い話題が多くなり、眉間にしわを寄せて考えがちです。けれども、もっと肩の力を抜いて、ゆったりと向き合ってみてもいいと思うのです。
人は「傷つきを耕す」ことによって、人生を豊かにしていくのではないでしょうか。
(P74『第3章 傷つきの練習』より)
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優しく穏やかに寄り添ってくれるような文章は、読んでいて心地良かった。
「傷つき」という言葉が気になった人は、ぜひ読んでみてほしい。
Posted by ブクログ
アタッチメント(愛着)を身につけるために養育者自身の精神的安定がひつようというところが面白かった。やはり子供の健康な発達には養育者の精神状態が関係している。
人に話すこと大事
セルフコンパッションはこれからも大切にしていきたい
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久しぶりの宮地尚子さん。
薄くて読みやすい。イラストも可愛い。
「どうして誰かに話を聞いてもらうと楽になるのか」や、無傷で生きるのは不可能という「傷つきの練習」の話、人間の残虐性の話も興味深かった。
「安全な場所に、共感性をもった相手といることで、気持ちの整理がついていく」
たったこの短い一文。
子どもにとってのそういう場でありたいとわたしは思って過ごしていたんだなと、ストンと思ったし、そういう誰かにとっての他者になるべく勉強しているんだなと思う。
・よい聞き手に出会うことが出来たとき、「傷つき」体験によって喪われた他者への信頼感を取り戻すことが出来る。
・聞き手からの共鳴や共感をとおして感じる「私はひとりではない」という感覚は、回復の過程においてとても効果のある薬になる。
の文も印象に残った。
難しいけど。
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とても読みやすかった。傷つくことなく生きることはできないけれど、傷ついても回復することはできる。大切なことに気付かせてくれた心強い一冊。
自分も知らないうちに誰かを傷つけないよう気をつけたい。
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最近気に入って繰り返し聴いている米津玄師の「がらくた」という歌を思い出します。
壊れていても構わないと謳う米津玄師
傷つき、傷つけることは避けられない…傷とともに生きる。
無条件に許すことではない、自分も痛みを知り円熟していく
明日も頑張ろうという気持ちになります。
Posted by ブクログ
1.読みたくなったキッカケ
読書会の課題本になったため購入。
これまでこういった内容の本には触れてこなかったため、新しいジャンルの本を読むきっかけとしてもいい機会だと思った。
2.著者の紹介
一橋大学大学院教授。精神科医の医師として臨床を行いつつ、トラウマやジェンダーの研究を行っている。
3.本の構成と読みやすさ
「2時間で読める教養の入り口」とあるように、非常に読みやすい内容。
かといって、内容がスカスカとかいうわけでもなく、著者の考えがコンパクトにまとめられているように感じだ。
構成としては、序盤で傷つくとはどういうことかをまとめ、終盤で、その癒し方をまとめている。
4.本の序章のまとめ
過去と比べて、現在では傷つく際の環境が変化している。具体的にはSNS等の普及により、コミュニケーションのあり方が変化したため。
常時スマホを手元に置いておくため、気持ちは常に緊張している。
このような、心のあり方を巡る環境に変化が起こっているため、気持ちの余裕がなくなってきている。
5.暮らしに役立つ内容
「セルフ・コンパッション」について。
コンパッションとは、思いやりや慈しみという意味。つまり、自分を責めないことや、自分を褒めること。
例として、子どもが独立した女性。夫と二人暮らし。息子たちからは好きなことをしていいと言われているが、これまで家族の世話しかしてこなかったため、これといった趣味もない。息子や孫たちを気にかけるたびにうっとおしがられている気がする。
このような事例でも、セルフ・コンパッションにより、これまで家族の面倒を見てきて、子どもたちをちゃんと育て上げた自分を褒めてあげる。
自分にご褒美をあげることは自分を甘やかすことである、というネガティブな感情は持たない。
自分に適切にご褒美をあげることはとても大事なこと。
ショックを受けたり、傷ついたりした時には、ちょっと美味しいものを食べにいくといったご褒美を自分に与えてあげる。
6.最も大切な内容
傷(トラウマ等)を抱えた人たちは、自分の心が狭いから、自分の心が弱いからと、自分を責めてしまいがち。
なので、自分だけでなく、人間が普遍的に経験することだと理解することが回復の大きな手助けとなる。
傷ついている人たちには、「その状況に置かれたら、自分でも同じように感じると思う」など、共感を持った言葉で寄り添うことが大切。
7.おすすめの理由
課題解決に重きを置いている人にとって、特におすすめできる本。
大なり小なり傷ついている人は自分の身の周りにもいる。そのような人たちに対して、自身の考え方を変えないといけないなと感じたのは、その傷ついている原因を取り除いてあげようとしか考えてこなかったことだ。
そうじゃなく、共感して寄り添ってあげることが大切だと、読んでいて感じた。
確かに、何か相談事に対して、その原因を探ろうとしたことにより相手と衝突してしまったことが思い出される。
多分、そういうことじゃないんだろう。
これまで、自分の生き方として、何か問題が発生した際には、まず課題を探り出し、その解決に向けてどうすればいいか考えることを優先にしてきた。
それは自分が傷ついた際にも同じで、どうして傷ついたのか、この傷つきを解消するためのベストな方法は何か、ということを考えるようにしてきた。
ただ、自分がそうだからといって、他人もそうだとは限らない。
共感するという考えを自分の中に入れておくことにより、明日からの自分の考え方が多少なりとも変わるかもしれない。
傷ついている人に共感し、寄り添ってあげるだけでなく、自分自身の傷つきも周りに伝え、一緒に共感してもらうということも必要なのかもしれない。
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環状島ーー崖の様な高い島ではなく、内側に海を溜めたドーナツ型の島をモデリングして、内海で溺れた多くの人々が環の上に避難して身を寄せるーーというモデルが興味深かった。
考えないために「歩く」という行為が推奨されているものの、「歩く」ことによって思考がキマってしまうタイプがいて…みたいなの、私がそのタイプなので納得しましたね。
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内容に関しては、正直心系の本をまあまあ読んでると「まぁそうだよね」って感じる所があるけど(逆に言うと、謎が多い心に関するある種の法則や効果の高い方法が分かって来てる?)、「傷つきの練習」「傷つきを耕す」などの、現代における「嫌なものは切り捨てましょう!」的安直な解決方法ではない、人生に向き合った考え方を深められて、この本を読めて良かったと思えた。あっさり傷ついてしまうからこそ、その傷つきに種を育てられたらと思った。
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傷つくことと、傷つけること。それらは通常ネガティブなイメージを伴うものだが、本書を読むとそれらからすら人は学び、成長し得るのだということもわかる。また、トラウマや傷、そしてそれらを抱える人たちは多種多様なので、一様な最適解などないこともわかる。SNSに良い使い方と悪い使い方があるみたいに。
Posted by ブクログ
2時間で読める教養の入口というキャッチフレーズのシリーズ。1時間で読める。トラウマ研究および臨床の第一人者の著者の書なので、事例みれられ、分かりやすく、しかもツボをきちんと押さえられている。もう少し深く学びたい人は著者の書に進めば良いと思う。著者のトラウマ理解のモデル、環状島も出ており、このモデルは当事者と支援をするものにっって非常に理解しやすいモデルである。まやトラウマはコミュニケーションエラーから起こり、そしてコミュニケーションの回復から起こるが、現代的なコミュニケーション、オンラインとリアルという「二つのコミュニケーション」への言及もされている。特にコロナ禍以降、この状況が広がっており、社会問題にも至っていると考える。オンラインでは現時点ではリアルほどルールがない中ではそれぞれ自信が気をつけるしかない部分があるが、ある程度、社会的なルール作りも求められてくるのではないだろうか。
Posted by ブクログ
細かいことまで含めれば、人との付き合いを前提に世の中が回る以上、大小問わずの自傷他害の可能性は避けられない。癒され方はもちろんのこと、傷つける場合の上手い仕方、第三者としての傷を負った人との接し方まで、短い一冊の中だけど、情報盛りだくさん。シリーズならではの一冊、って感じ。
Posted by ブクログ
ここ最近東畑さんの本を読んでからまたこころとか傷つきにとても関心が高くなっていろいろ関連書籍を読み漁ってます。本書は現代の心の問題を取り巻く状況やどうやって考えるかのはじめの一歩として読み始めるのに良い書籍だなぁと。2時間で読み終えられるとうたっているだけに構えず、移動時間に読めて、そして「ちゃんとしている」と感じました。いろんな書籍で表現が変わりながら、言われていることの共通項がぼんやり見えてきて興味深いです。
Posted by ブクログ
たしかに『傷つくこと』は『よくあること』なのかもしれないと思った。特別なことと思うから、出会った時のショックや悲しみが大きく、回復に時間がかかるのかなと思った
Posted by ブクログ
Xで見かけて気になったので読んでみました。
NHK出版の"学びのきほん"というシリーズに含まれる一冊で、トラウマやジェンダーの研究をされている専門家・宮地尚子さんによる執筆。
易しくわかりやすい文章で、「傷つく」「傷つける」「傷つきを癒やす」など、そのときの心について向き合い、ゆっくり考えることがにできた。
生きていくなかで、傷つくことも、傷つけることも避けられないものなので、それをいかに回避するかではなく、うまく付き合ってやっていくかが重要なのだと受け入れることができたように思う。
傷つきを耕すことで、豊かな人生にしていけるよう意識してみたい。
Posted by ブクログ
人が不満をかかえる、傷つくステップの表がとても印象深い。傷つきにも段階があるって分かると、それを予防できる。
あくまでも客観的に見てどう防いでいくか?という思考になれたので学びのある本だった。