【感想・ネタバレ】傷のあわいのレビュー

あらすじ

米国で何者かになろうと海を越えた青年、夫の海外転勤に合わせて渡米した女性、人生に詰んで海外へ拠点を移した男性──。異国の地で、不安定さや傷つきに揺れながらも、そのとき成しえる最良の力で人生にぶつかっていく。その語りに、若き日の著者が耳を傾け、生きるということを同じ目線で考えた記録。解説 奈倉有里

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

『心の傷つきをめぐる文章が多いのはたしかだが、私が精神科医だからあたりまえなのかもしれない』
文庫版まえがきより

宮地先生の著書はこれで2冊目。

心の傷つきがある(可能性のある)方々へのインタビューのため、少しもの悲しさが漂う。
著者自身の葛藤や偏見なども、比較的赤裸々に書かれている。
一方、やはり文章力の高さゆえなのか、どこまでいってもどんなにへヴィーな題材を取り扱っていても、とにかく上品で美しい。

センチメンタルな秋の夜長にぴったりの一冊に思います。

0
2025年10月20日

Posted by ブクログ

この著者のべつの本を読んで惹かれたため、こちらも購入。この本を読んでいると、「悩みを抱えていた、あの友人は今どうなっているだろう」と思い出したり、自分はどうなんだろうと思い返したりできる。数ページごとに顔を上げて考え込んでしまうような本。共感と無理解が混在する。

0
2025年09月08日

Posted by ブクログ

本当に文章が好きだ…いつの時代も皆んな一生懸命に生きていると文中にあった通りで、事情がありながらも外国で暮らす人たちの姿がありありと浮かび、他人事じゃないな…と思った。
色んなことを考えさせられたけれど、まずは日々平和に生活できてることに感謝して自分を労おうと思った。
外からはどんな問題を抱えているのかわからないから、人を見かけで判断しないとか、他人を羨ましく思う前に自分と向きあったり読書するようにしようとか、そんなことを考えた時間だった。
お守りみたいな本。

0
2025年07月09日

Posted by ブクログ

病院に来た人を診るような受動的な医師としての生活ではなく、一人ひとりに絞った社会学や人類学のように直接自分で会いに行く能動性に心を打たれました。宮地さんだからこそ皆んな色んなことを打ち明けてしまうんだと思います。それだけ傷への寄り添い方が優しいからだと、僕もいつか会ってお話してみたいです。

0
2025年06月08日

Posted by ブクログ

一つ一つのエピソードが印象的で、渡米というある意味での道から外れた人たちのさまざまな孤独、それにまつわる感情が味わい深い。

0
2025年06月02日

Posted by ブクログ

宮地先生のお話は初めて読みます。
「あわい」の言葉通りどの人の記録もすべて完していません。
この本のなかにでてくる人達だけでなく私たちにもこの「あわい」の時間が沢山あるんだよなぁと考えさせられた

0
2025年05月27日

Posted by ブクログ

 先に『傷を愛せるか』を読んでから手に取った。要するに、ちくま文庫から再刊された順に読んだことになるが、この本のほうが、著者が若い頃に書かれたものであるので、『傷を愛せるか』よりも、著者の揺れや戸惑いがストレートに感じられる。内容はアメリカ在住の日本人たちのメンタルヘルスであり、エスノグラフィの形式で書かれている。「あとがき」(pp219-226)で著者が述べているように、1980年代後半から1990年代初頭にかけて接した人々を、1990年代後半から2000年代初頭にかけての連載で振り返って書かれたものなので、流れた時の分、著者のなかで、かつて接した人々(やこの世を去った人々)が抽象化され、より深みのある記述となっている気がする。著者は「まだまだ一年もののワインのよう」(p226)と謙遜しているけれども。

0
2025年05月18日

Posted by ブクログ

静かに降り続く雨のように心にしみこんできました。

本書に登場する人々が丁寧に描かれていて、まるで出会ったことのある方であるかのように記憶に残りました。

それぞれの事情、想い、経験、感じていることが、ただただ静かにしみこんできて、印象に残る読書体験でした。

0
2025年05月11日

Posted by ブクログ

『傷を愛せるか ちくま文庫(増補版)』に惹かれて、『トラウマ ( 新潮社)』を時間を掛けて読み込んできた、宮地尚子先生のストーカーです。

精神科医であるからなのか…宮地さんの文章には、独特の魅力がある。
一つ一つの言葉を大切に、全体の話の流れを構築し、自分自身の体験として美しくまとめ上げて行く。
それは、読者から見ると「読みやすい」し「印象に残る」と言う効果として現れる。

現代のボストンに住む日本人が、この頃と同じとは思えないが、精神的には同じことが繰り返されているのだと思う。
(インターネット技術の進歩で、電話がチャットになり、手紙はEメールに変わったとは言え)
環境も整備されるようになって頼れる場所も増えたかも知れないが。
ひとつの社会を出て、別の社会に暮らすことがヒトの心に与える問題の多くは変わっていないのではないか。

発行されることの無かったハンドブックも見てみたかった…な。
また、時間をかけて、澄んだ視線で、周囲・患者さんと対峙した宮地さんの心の記憶を読ませて頂けるのを楽しみにしています。

0
2025年05月06日

Posted by ブクログ

ボストン在住の日本人が対象のアンケートを基にしたフィクションとのことだけれど、同じような悩みを抱えて生きている人は自分も含めてどの国にもどの時代にもいる。
他人には打ち明けにくそうな悩みなどにも客観的かつ冷静に、決して深くは踏み込まずに話を聞く距離感を保つ姿勢がなんだか心地よい。
宮地さんの文章を読んでいると、この人に話を聞いてもらいたくなる気持ちわかるな〜と思います。
PTSDの患者さんを受け入れる側の不理解や、無意識の先入観、相手を傷つけずに自分の気持ちを伝えるアサーティブトレーニングなど、考えるきっかけとなるお話が多かったです。

0
2025年11月29日

Posted by ブクログ

留学時代のハーバードでの日本人移民の心の調査をした時の経験を下敷きにして、心の病を掘り下げて教えてくれている。

0
2025年11月08日

Posted by ブクログ

傷を愛せるかに続き、どうして宮地尚子さんの本はこんなにもするすると心に入っていくのか、この本を読み終わるまでわからなかった。けれど、嘘もなく、凝り固まった強いメッセージもなく、ただ事実から考えられた涼やかな言葉が並んでいるこの本が、静かに今の私を満たしてくれた。

0
2025年10月04日

Posted by ブクログ

「傷を愛せるか」を読んでいたので、本屋で見て、購入。アメリカ移住者へのインタビューを通じて、傷や傷になりそうな心の状態について考察する。人それぞれ事情は異なれど、異国の地というファクターが傷を生んだり、過去の傷を自覚させたり、悪化させたりと様々に作用する。人の心は一筋縄ではいかないことを思わされる。

20年ほど前の文書だから、インタビューを受けた人は、今どう生きているのか気になる。それでも人生は続く。傷を愛せるか。

0
2025年05月11日

Posted by ブクログ

臨床の精神科医を経験後に、文化人類学の研究に入った著者のデビュー作。『傷を愛せるか』に比べたら確かにやや若い感じの文章。
もともとボストン在住の日本人からの聞き取り調査を元にしたハンドブックを作成したが、書籍化するまでに時間が経過して新しく書き加えたものらしい。内容としてはエッセイとエスノグラフィーの間くらいの感じ。
海外赴任、アメリカンドリーム、逃避、受験落伍者の留学など、それぞれの事情を抱えて外国に暮らす日本人の心情をよく聞き取っており、共感できたり、息苦しくなったりする。2000年ころまでの調査だけど不思議と時代を感じさせず、人の心は変わらないというあとがきに妙に納得した。

0
2025年05月10日

Posted by ブクログ

I found it highly insightful, as many of its themes are closely connected to what I recently read in The Study of Killing in War. Reflecting on how books from such diverse fields are interlinked in unexpected ways made me realize that the more experiences we have in life, the deeper and more comprehensive our understanding of the world becomes. It also offered valuable perspectives on migration, making it a truly worthwhile read.


1. 従来の見解
•海外移住者には精神障害の発生率が高いとされてきた。
•その理由には主に2つの説がある:
1.社会選択説:もともと精神的に脆弱な人が移住する傾向にある。
2.社会起因説:移住先での異文化適応の困難が原因となる。



2. 移住に伴う主なストレス要因
1.社会的・経済的地位の低下
2.言語の壁(移住先の言葉が話せないこと)
3.家族離散・別離
4.受け入れ国の友好的態度の欠如
5.同じ文化圏の人々と接触できないこと
6.移住前の心的外傷体験や持続的ストレス
7.老齢期・思春期など発達的に脆弱な時期での移住



3. 上記の「逆」から見た、適応を促す条件
•日本での地位がもともと低かった人 → 地位低下によるストレスが少ない
•家族がストレス要因であった場合 → 家族から離れることがむしろ安定要因
•日本社会の非友好的さに疲れていた場合 → 新しい社会をポジティブに受け止めやすい
•同じ文化圏(サブカルチャー)に属する人々と接触できること → 精神的な支えになる



4. PTSDの概念と社会的背景
•PTSD = Post Traumatic Stress Disorder(心的外傷後ストレス障害)
•1970〜80年代のアメリカで注目され始めた。
•きっかけは:
→ ベトナム戦争の敗北という国家的トラウマを、医療化(医学的診断)によって処理しようとした動き。



5. アメリカ学界におけるユダヤ人の影響
•当時(おそらく現在も)米国アカデミアではユダヤ人の割合が高い。
•そのため、米国学界全体におけるユダヤ人の思想的・文化的影響は大きい。
•PTSD概念の受容や社会的議論にも、こうした背景が影響した可能性がある。

0
2025年10月31日

Posted by ブクログ

まえがきで「あわい」という言葉について触れられていて、興味を持った。
どちらでもない領域にいる私の傷のあわいも感じつつ、それぞれ登場する人の話を読み、それでもみんな生きているということを感じる。
クスッと笑えてのは「ダンス上手」の話。私もこれ、宮地さんと同じ感覚だったな。でもよく考えたらそれはそうか、日本人だって「みんな綺麗好き」なんて思われているかもしれないけど、そうじゃないもんなとか思いながら読んだ。
こういうふと力が抜けるお話がバランスよく散りばめられているのもいい。

0
2025年10月23日

Posted by ブクログ

異国の地で暮らすことの大変さを思った。今までの当たり前が当たり前でない毎日が続くと、どんな感じになるのか、いろいろな事例があって、身につまされた。大変だけど、その大変さの中に個人の生きる価値があるのかなと思った。

0
2025年07月29日

Posted by ブクログ

宮地尚子著の傷を愛せるかに続く、ちくまからの文庫。途中から資産家の自慢のようにも思えたが、PTSDのような傷を負っていること。文体はとても柔らかく、読みやすいのではあるが、今ひとつ何を主張しているのかはわからなかった。評価は5つの中で3。

0
2025年07月13日

Posted by ブクログ

あわい、というどっちでもないファジーな状態というのに惹かれて買っておいた本。「死ぬまで生きる日記」の流れで、誰かの話を聞きたい、読みたいという気持ちで本棚から探し出した。
人が不安定になったり、苦しくなったりするのは私が思っているよりもよくあることなのかもしれないなと思った。渦中にいる本人は辛くて仕方ないと思うのだけど、人はいつでも一番いい自分でいられるわけじゃない。
自分もこうやって、いろんな人の話を聞いてみたいな、と思った。

0
2025年07月08日

Posted by ブクログ

著者が1989~92年にボストンに留学していた頃に出会ったり調査・インタビューした人たちのことを、その7年ほど後に雑誌に書いて連載したものをまとめた本。著者は「『ミニ・エスノグラフィー:小民族誌』のような物語」と言っているが、エッセイのようなインタビューのような「あわい」の読み心地である。

渡米した日本人とひとくくりに言っても、性格も境遇も抱える困難や葛藤も人それぞれだ。
しかし、どこか共通しているのはなにかしらの問題が異文化生活の中で浮かび上がってきてはいるもののその原因というか源流は決して単純ではなく、日本にいた時から、その人の人生そのものから始まっているように感じることである。まさに一つ一つの「物語」を読んでいるような…。
だから、著者のかかわりによって問題が簡単に解決するというようなことはない。それぞれの葛藤を抱えたままの物語が続いていくのを、著者の温かくもフラットなまなざしとともに見守り、見送るのだ。
何も決着しない、病気や傷として個人の体験を決めつけない、そういう「あわい」の感じが本全体を優しく包み込んでいる。自分はつい白黒つけたがるタイプの性格なので、別にそうじゃなくたって、なにも決まったり分かったりしないまま流れてもいいのだよ、と頭をなでられているような気分になった。傷を愛せるかならぬ、あわいを愛せるか、というところか。

0
2025年06月19日

「エッセイ・紀行」ランキング