堀川志野舞のレビュー一覧
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ピーター・メイ『ロックダウン』ハーパーBOOKS。
2005年に余りにも非現実的との批判を浴び、陽の目を見なかったミステリーが緊急刊行。小説の中に描かれる状況が、新型コロナウイルス感染禍の現在の状況と酷似していることから緊急刊行となったようだ。
確かに本作に描かれるパンデミックの状況は今の世界の現状と本当に酷似している。都市封鎖、マスク、仮設病院の突貫工事、医療関係者の相次ぐ感染による医療崩壊に陥る様子はまさに世界の今という感じだ。また、最初はミステリーとしてはイマイチかなと思ったのだが、終盤の怒濤の展開には驚いた。そして、まさか少女の殺人事件が感染症とリンクするとは全くだに予想しなかった -
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ネタバレ短編7つ。挿絵はヨシタケシンスケさん。意外。理屈のない奇想天外なお話って現在はなかなか発表されない(破天荒である場合理由付けがされる)ので昔のこういった作品を読むのは心躍ります。いくつか既読作品あり。
「彼は生きているのか、それとも死んだのか?」
詐欺話。今でも成功しそう。
「ギャズビーホテルに宿泊した男」
「実話一言一句、聞いたとおりに再現したもの」
既読。前回読んだものより優しく訳してあり読みやすい。
「天国だったか?地獄だったか?」
未読。個人的No.1。真実そのものと優しい嘘を神の天秤に載せるとどうなる?
「病人の話」
「ジム・スマイリーと飛び跳ねるカエル」
既読。
「百ポンド紙幣」 -
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イギリスの作家グレース・マクリーン、2012年発表の小説。「エホバの証人」をモデルにしていると思われるキリスト教の異端の一派の熱心な信徒の家庭に育った少女の一人称の物語り。宗教や奇跡が大きなテーマとなっていますが、宗教的な物語りというより、父子家庭の父と娘の絆の再生を描いた物語りであり、とても心に響く暖かな結末の作品。良いです。
10歳のジュディスは工場労働者の父親と二人暮らし、間もなく起こるはずのハルマゲドンとその後に訪れる「最も美しい土地」を信じる純真な少女です。自室にはガラクタや廃物を利用して「最も美しい土地」のジオラマ模型を作っており、豊かな想像力ととても繊細でナイーブな感性を持って -
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幻想的な雰囲気の表紙は新潮文庫の宮澤賢治のシリーズのよう。
疫病のため世界は崩壊してしまった。わずかに生き残った者たちはそれぞれの地にアジトを作り生きているが、映画マッドマックスのような自治組織は作れていない。出会った他人はすべて襲撃者とみなし、射殺している。時には子供も。ルールが無い暴力世界では4~5人のグループが限界なのか。
その中でも新たな出会いから新たな家族が誕生する。
世界の再生を感じさせる2機の飛行機が暗示的に書かれるが、著者は世界を描こうとしているのではない。主人公ビッグヒックの個人的な再生の物語だ。ビッグヒックが操縦するセスナの飛べる範囲が彼の世界のすべてで、彼の再生はセス -
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原題は〈The Land of Decoration〉。ハルマゲドンで世界が滅んだ後にやってくるとされる〈最も美しい土地〉のこと。
いじめに苦しむ10歳の少女ジュディスは、自分の部屋に〈最も美しい土地〉を作った。そこに雪を降らせて神様に祈ると、外の世界にも雪が降った。過酷ないじめが待ち受ける恐怖の月曜日に起きた奇跡。
学校や仕事へ行きたくない時に嵐を起こす力や、自分をいじめる奴に復讐する力があったらどんなにいいか。でも、行動には必ず結果が伴い、その結果を取り消すことはできないのだ。
ジュディスの苦悩よりも、彼女の父親の苦悩の方が胸に迫ってくるものがあった。信仰の篤い大人ゆえの、父親ゆえの