Posted by ブクログ
2015年12月18日
イギリスの作家グレース・マクリーン、2012年発表の小説。「エホバの証人」をモデルにしていると思われるキリスト教の異端の一派の熱心な信徒の家庭に育った少女の一人称の物語り。宗教や奇跡が大きなテーマとなっていますが、宗教的な物語りというより、父子家庭の父と娘の絆の再生を描いた物語りであり、とても心に響...続きを読むく暖かな結末の作品。良いです。
10歳のジュディスは工場労働者の父親と二人暮らし、間もなく起こるはずのハルマゲドンとその後に訪れる「最も美しい土地」を信じる純真な少女です。自室にはガラクタや廃物を利用して「最も美しい土地」のジオラマ模型を作っており、豊かな想像力ととても繊細でナイーブな感性を持っています。しかし異端の宗派の信徒ということもあって学校ではいじめにあっており、学校へ行きたくないと言う気持ちで模型の街に雪を降らせると、実際に季節外れの大雪となって学校は休校に・・・。
妄想と現実がリンクして追いつめられて行くジュディスを描いてなかなか見事な作品です。
一人称で語られるジュディスの繊細なものの見方、感じ方、そしてその表現が非常に素晴らしい。また、宗派の善良で愚直な信徒たち、伝道で対話する主に下層階級の様々ないわば異形の人々の描写も秀逸。道徳のテキストにでもなりそうな物語りではありますが、10歳の少女の独り語りということもあって説教臭さや押し付けがましさは感じられず、わりと素直に感動します。