あらすじ
十歳のジュディスは、小さな町に、信仰に篤い父とふたりで暮らしている。学校でいじめられるジュディスの心のよりどころは、自分の部屋に作った模型の世界、〈最も美しい土地〉だった。
ある日、ジュディスは〈最も美しい土地〉に雪を降らせた。次の日めざめると、窓の外は一面の銀世界だった。これは神の奇跡なのだろうか?
しかし、それは数々の予想もしなかった災難をもたらして……。聡明で孤独な少女の闘いを繊細にあざやかに描き出したデビュー作。
感情タグBEST3
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感受性の豊かな人の表現って、独特で素敵であり、
解り辛かったりもする。
読み始めは、ちょっと自分に合わないかなぁ と
感じたけど、途中からは あっという間に完読できた。
ジュディスや彼女の父親、クラスメートらをとりまく状況が苦しく、ずっとブルーな気持ちで読んでいた。
最後は安堵して読み終わることができて良かったなぁ。
Posted by ブクログ
イギリスの作家グレース・マクリーン、2012年発表の小説。「エホバの証人」をモデルにしていると思われるキリスト教の異端の一派の熱心な信徒の家庭に育った少女の一人称の物語り。宗教や奇跡が大きなテーマとなっていますが、宗教的な物語りというより、父子家庭の父と娘の絆の再生を描いた物語りであり、とても心に響く暖かな結末の作品。良いです。
10歳のジュディスは工場労働者の父親と二人暮らし、間もなく起こるはずのハルマゲドンとその後に訪れる「最も美しい土地」を信じる純真な少女です。自室にはガラクタや廃物を利用して「最も美しい土地」のジオラマ模型を作っており、豊かな想像力ととても繊細でナイーブな感性を持っています。しかし異端の宗派の信徒ということもあって学校ではいじめにあっており、学校へ行きたくないと言う気持ちで模型の街に雪を降らせると、実際に季節外れの大雪となって学校は休校に・・・。
妄想と現実がリンクして追いつめられて行くジュディスを描いてなかなか見事な作品です。
一人称で語られるジュディスの繊細なものの見方、感じ方、そしてその表現が非常に素晴らしい。また、宗派の善良で愚直な信徒たち、伝道で対話する主に下層階級の様々ないわば異形の人々の描写も秀逸。道徳のテキストにでもなりそうな物語りではありますが、10歳の少女の独り語りということもあって説教臭さや押し付けがましさは感じられず、わりと素直に感動します。
Posted by ブクログ
原題は〈The Land of Decoration〉。ハルマゲドンで世界が滅んだ後にやってくるとされる〈最も美しい土地〉のこと。
いじめに苦しむ10歳の少女ジュディスは、自分の部屋に〈最も美しい土地〉を作った。そこに雪を降らせて神様に祈ると、外の世界にも雪が降った。過酷ないじめが待ち受ける恐怖の月曜日に起きた奇跡。
学校や仕事へ行きたくない時に嵐を起こす力や、自分をいじめる奴に復讐する力があったらどんなにいいか。でも、行動には必ず結果が伴い、その結果を取り消すことはできないのだ。
ジュディスの苦悩よりも、彼女の父親の苦悩の方が胸に迫ってくるものがあった。信仰の篤い大人ゆえの、父親ゆえの孤独な闘いを強いられる。怒りにかられている時こそ、信仰は試されるのだ。
読み終えたときに、サッと霧が晴れるように物語の構図が見えて感動した。やはりタイトルは原題のままのほうが良かったのではなかろうか。
Posted by ブクログ
もっと若い時に読んだら主人公に共感出来たのかもしれない。
真面目な洋物の文体、私が十代ならこの本の
繊細さに憧れただろう。
キリスト教について詳しくないし
現代の価値観には合わない。
しかし、「わたしが降らせた雪」このタイトルには
強烈な引力があった。
心理学に長けた人なら面白いのかもしれない。
Posted by ブクログ
10歳のジュディスは、信仰厚い父親と二人暮らし。勉強はできるが、学校ではいじめっこのニールとその仲間に執拗にいじめられている。そんなジュディスは、自分の部屋に廃物で作ったミニチュアの庭を大切にしている。ある週末、月曜日にはトイレに頭を突っ込んでやると言われ、自分のミニチュアの庭に雪を降らせると、本当に雪が降り学校も休校になる。そこからジュディスは、神の声を聞くようになり、ミニチュアの庭で起きたことが現実の世界でも起きるようになっていく。
ニールのいじめがエスカレートし、父親の職場での立場も含め追い詰められていくジュディス。ミニチュアの世界が現実になることで次々起こる災難。その闇に気づき止めようとするが止められないジュディス。後半はハラハラしながら一気に読んだ。繊細な神経を持つジュディスの心の動きが悲しく怖い。
何かもっと早くに周りの大人が聞き付けなかったものか。
最後はホッとさせるが、不思議な恐怖感が残る。