アニーエルノーのレビュー一覧

  • 若い男/もうひとりの娘

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    全然関係ない「ファースト・キス」という映画で現在・過去・未来の「ミルフィーユ理論」なるものが話題になっていたが、この「若い男」はミルフィーユ理論をわかりやすく描いてくれたなと思った。

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    2025年09月09日
  • 嫉妬/事件

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    ネタバレ

    凄い本を読んだ。
    ノーベル文学賞を受賞されたので、その時に買っておいたのだと思う。ずっと積読でした。
    『嫉妬』という作品と『事件』という作品の2篇が1冊になっている。
    淡々としている文ですが、ものすごく強い力があって心が揺さぶられ震えた。
    読み進めていくうちに複雑な感情が湧いてくる。
    恐怖とか悲しみとか安堵みたいなものが、ぐちゃぐちゃに掻き回されて1つになったような感情だった。
    読後も心の中がまだ小さく小さくザワザワしている。
    それでも暗いイメージはなく、陽射しの明るいイメージが残った本だった。

    「わたし」の自己対話を通して、読者も「わたし」の「経験」を体感するような本だと思った。
    余韻が物

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    2025年06月30日
  • シンプルな情熱

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    先に読んだ『嫉妬/事件』と比べるとやや印象が薄い。しかし両作品に共通する、自身を客観視し対象として公平に見つめ直し明確で簡潔な文章に表現できる筆者の姿勢に非常に好感を持った。

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    2024年04月06日
  • 嫉妬/事件

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    初アニー・エルノー。すごく良かった。小説ってこんなに生身の人間を直に曝け出すことができるんだと圧倒された。
    恐らく筆者自身が経験したであろう出来事を深く正確に綿密に的確な言葉を重ねて描きつつも、決して感情だけに流されることのない冷徹とも言える明晰さ。個人的な出来事を突き詰め続けることで至る普遍。特に嫉妬には自分自身に思い当たる経験があり、個人的な経験を分析して突き詰めて文学に昇華させる彼女の手腕に驚いた。小説というのはこういう書き方もできるだと世界を広げてくれる作品だった。
    事件は男女問わず必読。甘えのない生々しい描写に気分が悪くなるかもしれない。しかしこれが現実なのだ。本作のレビューを読むと

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    2024年04月06日
  • 嫉妬/事件

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    90/100

    この話は男性には理解できないんだろうなと思う

    性に対して様々な多様性が進んでる中、一貫して変わらないのは妊娠するのは「身体的構造が女性」である人たちだけ。

    男性には分からない生理や妊娠などの苦しさ葛藤が、心情描写が細かい訳では無いのに切々と迫ってくるものがある。状況を淡々と文字で説明しており、その状況を想像するだけで胸が苦しくなった。


    男性が悪い訳では決してないけど、結局どれほどの犠牲を女性が、社会的にも、心理的にも、払わなきゃいけないのか凄く伝わってくる。

    最後のあとがきを読んでより一層共感した。

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    2023年12月09日
  • 嫉妬/事件

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    別れた男の現在の彼女への嫉妬を描いた「嫉妬」、中絶が認められていなかった時代のフランスで中絶する「事件」2編のオートフィクション。
    ものすごい解像度と赤裸々さで、感情とその流れが克明に記されていき、全て本当にあったこととしか思えない。
    性愛を重視していることと、時々ある観念的な考え方はフランスっぽいなと思うが、どの国でも女の思考は共通しているところが多いな、と連帯感を覚えた。「嫉妬」なんて失恋した時に読んだら共感の嵐だと思う。

    やはり衝撃的だったのは「事件」。
    読んでいて自分まで下腹部が痛い気がしてくるほどだった。
    中絶を禁じるって、本当に悪しき文化だと思う。胎児の命を軽視するのはもちろん良

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    2023年09月23日
  • 嫉妬/事件

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    「嫉妬」も「事件」も女性として考えさせられる小説だった。アニー・エルノーの小説は自伝的。本当の所は知らない。淡々と書かれているけど、情熱的。その相反する読後の印象が自伝的だと思わせるのだろう。「事件」で知った、フランスは中絶が違法だった期間が長かったこと。フランスのイメージとは大きく異なるこの法律にヨーロッパがいかにキリスト教と結びついているのかを改めて見た気がする。
    「嫉妬」の主人公。恐らく表面上は淡々と生活はしていたのだろう。だけど、内面は相手女性への執着でドロドロしている。それを伝える文章は全くドロドロしてはおらず、一歩間違えばメロドラマ的になってしまう内容をいたく知的で詩的なものに感じ

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    2023年06月30日
  • 嫉妬/事件

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    女性の環境や人生や感性を、客観的に綴る。

    嫉妬 気が狂わんばかりの嫉妬なのに、語り口が客観的で冷静。ある日突然それがバカバカしいことだと気がつくあるある。

    時間 どこまでも自分が大事で、当然のように自分の道を進もうとする価値観が新鮮。グロテスクであるが、それが人間でもある。ヒッチ

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    2023年04月23日
  • 場所

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    アニー・エルノーの本は、2冊目となるが、彼女の書く文章がやはりどこか好きである。

    この一冊は、彼女の父が亡くなった出来事から始まり、彼が生きていた時代、つまり作者である彼女の幼い頃を小説を通して"書く"ことで、思い返す、そんな話である。

    私が1番面白いと感じた点は、過去の回想シーンと、彼女の書くという行為によって思い出される記憶と、時間が進むにつれて、これらが交錯していく点である。

    また、物語全体を通して、階級の違いが描かれ、とても納得できる部分が多く、客観的に読むことができたように感じる。

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    2023年04月01日
  • 嫉妬/事件

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    凄まじくリアルだが、小説でもノンフィクションでもないという一冊。

    女性の心情を事細かに書いてあるようだが、事実をベースに書いてあるため、非常に読みやすい。

    特に印象に残った文章は、

    ーー正常と言われている世界にいつ戻ってきたのかは、わからない。"正常な世界"とは曖昧な表現だけれども、その意味するところは誰もが理解している。つまり、ぴかびかの洗面台を見ても、列車のなかで旅行客の顔を見ても、もはや何の問題もなく苦痛も感じない世界のことである。ーー(事件)

    表現が分かりやすいのに、どこか奥が深い。そんな文章が最後まで綴られる。

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    2023年03月27日
  • 嫉妬/事件

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    映画の「あのこと」を見てから読んだ。
    映画では痛みをこらえて編み針で堕胎させようとしたり、中絶の費用を私物を売って自分で用意しようとしたりする強い姿が多かったが、この「事件」では不安や恐怖といった感情がよくでていたと思った。
    階級や性差による不自由さや理不尽がよくわかる話。
    「嫉妬」はその嫉妬という感情がこれほど生活に影響するのかと驚いたし、自分ではどうにもできないのだと感じた。

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    2023年03月26日
  • シンプルな情熱

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    本作の著者アニーエルノーは2022年のノーベル文学賞を受賞された方だったので、本書を読んでみましたが、まさにタイトル通り「とても激しい、パッション!」を感じる本でした。
    ストーレートで熱い熱を感じるような本で、火傷したような読後感になりました!
    賛否両論ありそうな作品だと思いますが、私は、とても印象的で、人間の本質を刺激する本で、素晴らしい本だと思いました。
    ぜひぜひ読んでみてください。

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    2022年12月26日
  • シンプルな情熱

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    情熱、とだけ聞くと
    何かほとばしるような、
    熱くて燃えるような、
    エネルギーに溢れる、
    そんなことをまず連想するのは、
    なんでだろう?

    熱、という字が入ってるからかな?

    一方で、熱いだけではない情熱というのも
    ある気がする。
    一瞬湧き出た後にも残るエネルギー?
    まだまだ消えないよ、という感じか?

    淡々と流れる時間の中に
    ポッと湧き出た情熱に対して、
    渦中から少し時が経ってるからこその
    シンプルなのかな。

    熱さと冷静さのちょうどよさ
    (けして、ぬるいわけではなく)
    を感じた。

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    2022年12月23日
  • 場所

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    フランスの階層をまたがった親子の話。まず、フランスが階層社会だということに驚いた。しかし、日本とは違い、文化や教養面で階層の差がつく。親のいる下の階層から勉学によって上の階層に上がった娘は、親(主に父親、下の階層の人々)との間にある時から溝を感じつつも、突き放すでもなく取り入るでもなく客観的に見ている。
    自分も、子供の頃は親や先生が絶対的存在だったが、自分が大人になってみると、もっと広い視野を持ち、親世代、老人世代の考え方や行動に疑問を感じることが増えてくる。そういうことと似た側面がある。

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    2022年12月04日
  • シンプルな情熱

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    こんなに恋に溺れて、こんなに冷静に記述できるのか。

    この恋は性的な行為を行うだけで、素敵な会話やデートやイベントなどは全くない。だけど恋する著者の頭は彼のことでいっぱいで、何をしていても彼のことばかり考えてしまう。
    恋、恋情、激しい恋、情熱。様々な色のパッションが描かれる。

    言葉が美しく飾らず荒々しくて直接的だったのが、新鮮に感じた。
    特に91年2月の再会からラストの文章までは素晴らしく、恋の移り変わりは全くもってシンプルではなくそして美しいということがよく現れている。

    著者の恋の感じ方記述の仕方に惚れ惚れとした作品
    (そのため映画を観る意欲なし)

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    2022年11月01日
  • ある女

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    「シモーヌ・ド・ボーヴォワールに一週間先だって死んだ」著者自身の母親の生涯を描いたもの。貧しい家庭に育ち、勤勉に働いて、一人娘を立派に教育し、出身階層よりも上昇させたこの母親がたくましく仕事(食料品店とカフェの経営)をこなし、老いては娘夫婦と同居して中流階級にも適応していく。そんな才気あふれる母親が次第に老い、重度の痴呆症状になる様子は切ない。
    80年代当時のフランスの介護事情や、葬儀までの段取りがリアルに描かれていることも興味深かった。

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    2012年07月20日
  • シンプルな情熱

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    とても感動的な本。外部からの「苦痛」であるパッションを、それに捕らわれながらもなお明晰さを失わず、自立を保っている。そんな彼女の文体は、彼女のパッションに限りなく近い。書くことと愛することが同義であるように。シンプルな情熱、それはとても純粋で、冷たい透き通った水のよう。直截的な表現で少しも自分を誤魔化さず、真摯に自分と向き合うことは、ひどく恐ろしいことだ。一歩間違ってしまえば、狂人になりかねない。それでも彼女は真正面から自分を受け止める。甘いことも、苦いことも、激しいことも、捌け口のない欲望も、かっこ悪くみじめな自分も、しっかりとした目で見据え続ける。そこに留まり、パッションを受け続けた者だけ

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    2010年12月19日
  • シンプルな情熱

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    山田詠美と江國香織の対談で出てきて勧められていた恋愛小説。恋をしていてもたってもいられないもどかしさと愚かさと愛しさに打ちのめされた時に読むのにお勧め。

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    2010年03月22日
  • 若い男/もうひとりの娘

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    非常におもしろい。

    無駄な比喩がなく、本質が凝縮されたような文体。つまり、出来事の語りと視点の語りがうまく混ざり合っていた。
    視点にはキリスト教や常識など文化的なものもあるし、立場や個人的な感情に立脚してもいた。

    『若い男』では、周りの人から特別な意味で「見られてしまう」自分たちの関係を、そうした見方とのあからさまな対立を持ちだして掘り下げていくのではなく、相手をプライベートな人間と見なして、つまり好きな人間として相手と関わっていて、それにまつわる感情と知性と官能を描いていた。相手をあるカテゴリーに当てはめることはしてるけど、そうすることで相手を理解しようとかそういうことじゃなくて、自身の

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    2025年11月26日
  • ある女

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    表紙のスーツ姿の女性が、まず実母と重なって…手にとった一冊。こんな色が好きだった母親を想って。
    「歪な関係」を抱えた人、特に親と…少なくはないと思うけれど、そんな人には共感する部分が多い作品だと思う。私的な感情を感情的に語りすぎず、適度にクールな点がより「母親」像を浮かび上がらせていると思う。 同じように、母親の異常に気づき、部屋を片付け、施設を探し、入院、他界まで…一年という時間の中で過ぎていった嵐のような昨年を振り返った。

    作中の母親と実母とが重なる部分が多く、特に認知症を発症してからの様子が手に取るようにわかるため、切なくて思わず涙。

    個としての輪郭が無くなっても、やはり親と子として

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    2025年10月14日