アニーエルノーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ凍りついた女
著者:アニー・エルノー
訳者:堀茂樹
発行:1995年8月31日
早川書房
昨年、ノーベル文学賞を受賞した著者。1冊も読んだことがなかったが、昨年10月に「シンプルな情熱」という作品を読んだ。発売当時は日本でも大反響があり、「場所」「ある女」とあわせて〈証言〉三部作と呼ばれているらしい。それよりも前、1981年に書かれたのがこの「凍りついた女」。
「シンプルな情熱」は、高校教師と作家をしている中年女性で、子供は大きくなって自宅にはおらず、普段は独り暮らし、東側の国の外交官でフランスに駐在する年下の男との、性愛について語る自伝的テクストだった。今回は、目指していた高校教師になれ -
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積読の本を「片付け」ようと思い手に取った。
ノーベル賞受賞アニー・エルノーの代表作。映画化されて大層話題にもなった。A役が有名なバレエダンサーで適役だということだったように思う。
さて、「シンプルな情熱」は、まさしく「シンプル」な「情熱」であった。(繰り返してる笑)
「シンプル」であることの剥き出しの「情熱」。(再び繰り返してるだけ笑)
そう、私(たち)はこのシンプルさにこそ感動し共感する。
近代人はこのシンプルさを捨てて生きてきた。人生は複雑だ。複雑であることは人間にとって重要で、シンプルさを追い求めることは「人間性」の否定でもあり、近代人である我々は複雑さをそのまま受け止めてきた。それ -
Posted by ブクログ
著者が過去の自分の手紙を読み返しながら、この小説を書いているようで、オートフィクションという特殊なこのタイプは、はじめて読みました。読みづらかったです。
嫉妬では、心の中での私と、もう一人の私と、さらにもう一人のわたしで会話しているかのようで、自走、仮想、妄想とずっと一人で、狭い部屋にいる感じです。
事件では、街の通行人とのすれ違いやカフェで隣りにいる会話などが常に主人公の孤独感を煽り、クライマックスでは、短い時間が長く感じるシーンが生々しく、罪悪感というか開放感というか複雑な場面が、R指定的です。
男性が読むほうがフェミニズムの存在が理解しやすいと思いました。
やはり事件の方が印象に残り -
Posted by ブクログ
ネタバレ全体的にかなり読みやすい。描写や表現はノーベル賞受賞するくらいだからやっぱり凄い、と納得した。
「嫉妬」は主人公が別れた後、男性が他の女性と暮らしていることを知り、激しい嫉妬に駆られる心情が描かれた作品。女性心理を凄く強烈に描いていて、失恋後だったらちょっとは共感できるのかもしれない。嫉妬によって妄執に取り憑かれる様子がこんなに上手く言語化できるのが凄くて、読んでいて面白かった。でも女って恋人に執着している時間が過ぎ去ると結構あっさり忘れられるもので、それが良いのか虚しいのか、そこも上手く描かれていた
「事件」の方は個人的にはあまり好きではなかった
中絶という題材に加えて、描写がかなり苦しくて -
Posted by ブクログ
ネタバレ劇薬みたいな小説エッセイだった。
40歳にもなって年下男の今カノを特定しようとする様はほぼホラーなのだが、その辺りの葛藤描写が精神病にも近い妄執となっており楽しめた。
ここまで言語化できるという点が面白い。
20代前半で望まぬ妊娠した主人公が3ヶ月間で如何にして堕胎したのかを書いた『事件』はよりショッキングな内容だった。
宗教的に堕胎が許されない場合、闇医者に任せるしかなかったり、堕胎後の出血多量で行った先の病院での扱いも悪いという所がまぁ胸糞。
何より主人公から胎児への愛情が一切無く、生と死と困難としか思っていない所はなかなか日本の小説では味わえない部分だなと思った。 -
Posted by ブクログ
仏映画 あのこと
この原作が事件。エルノーの自伝的小説。それだけに生々しく、想像することを拒絶しそうになる。
60年代フランスはIVG 人工妊娠中絶が違法。
この時代背景でもって、彼女は苦しむ。
果たして中絶することとは、権利であるのか。
それとも。。。
あとがきが秀逸であり、本当に考えさせられた。後にフランスにおいても合法となる中絶。
実存主義的に考えるなら、人は無限に将来に向けて自分を発展させていく、まさに己が主体。そこで妊娠するとは、他者に主体を移すこと。
ボーヴォアールによれば、
子を持つことが女性にとって重荷だとすれば、
それは風習が女性に子を持つ時期の選択を許さないから。
マ -
Posted by ブクログ
ネタバレ2022年 ノーベル文学賞受賞者アニーエルノーの代表作といってもよい作品。自身の不倫の経験を冷徹に観察することによって成立した作品。不倫相手を待つ苦しみ、不倫相手の離別との苦しみが主に描かれる。そして、情事の絶頂も少し触れる。情事の最中の肉体的な快感や葛藤には触れない。不倫という関係で得られる感情の起伏に人間の心理の真理があるのではないかとエルノーは考えているようだ。これは「場所」や「ある女」で自身の両親の心理に迫った手法で、自身の心理に迫ることで、人間の本質を捨象しより高い位置で理解したいと考えているようである。
作品の前半、恋愛の苦しさにどうしようもなくなっている著者に日本なら和歌や短歌 -
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とても短い小説なのですぐに読める。
内容もただ「恋」の話だから難しくもない。
文章もシンプル。
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原題は『Passion simple』
passionはもともと外部から被害を受けたときに生じる「苦しみ」「苦難」「苦悩」を意味する語であり、Passionとpを大文字で書くとイエス・キリストの「受難」の意味になるとあとがきで初めて知った。
この作品は正しくPassionで、その様が簡潔な文章で綴られている。
じっくり向かうとノーベル文学賞で、表面的に流すとただの不倫話。
本場フランスでは賛否両論だったらしいが、それもよく分かる。
否定的な批評は"平板な文体"と言い、支持派は"平板なのではな -
Posted by ブクログ
2022年にノーベル文学賞を受賞したフランスの作家アニー・エルノーの短編集。『嫉妬』(堀茂樹訳)と『事件』(菊地よしみ訳)所収。
自伝的フィクション(オートフィクション、autofiction)の作家だそうで、自身の経験をもとにしたフィクション。社会問題はさておき、そしてそのことと個人の経験が切り離せるかどうかもさておき、正直エルノーの人生に興味はないし、今回ノーベル文学賞を受賞したということと、そのために文学カフェで取り上げるようになったこと(私が提案したわけだけど)がなければ、わざわざ読むことはなかっただろうなと思う。ナルシシズムのかおりがするものを基本的に受けつけないというのもある -
Posted by ブクログ
今年のノーベル文学賞受賞したアニー・エルノーの文庫本が平積みされていたので衝動買いしました。
妻子ある外国人男性との不倫体験を回想し、まるで独り言のような脳内妄想をそのまま書き起こしたような印象。
この体験記が人の目に晒されることにも自覚的で、
恋に翻弄される女心を赤裸々に包み隠さず描写している。
しかしそこにはまるで艶かしさは感じられない。
なぜならそれは過ぎ去ったことで、今の自分は空虚だからと言わんばかりだ。
しかし、ノーベル文学賞とのつながりは今ひとつ分からなかった。
映画化もされているそうだけど、
なんとなくエリック・ロメールの映画のイメージに近い気がした。