アニーエルノーのレビュー一覧

  • 凍りついた女
    アニー・エルノー『嫉妬/事件』の次にこれを読んでみる。

    ひとりの女性の幼少から大人まで。
    独り言をまくしたててるような、短い分の連なり。

    特に少女から大人に移行していく十代後半の脳内は、特有の悩みが充満する。比較、否定、肯定…繰り返し。

    この十代の気持ちが必死に一つに、自分のアイデンティティに...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    縁あって読む事になった小説。「嫉妬」「事件」の2作収録につき別々に感想を書く。

    「嫉妬」
    嫉妬に駆られている自分を冷静に見つめようとしながらもそれを失念し、ふと気付くと嫉妬が原動力になって色んな事をやらかしている、やらかそうとしていた事を冷静になった自分が書き記している、という作りになっていて面白...続きを読む
  • 嫉妬/事件
     映画「あのこと」を先に観てから原作読みました。映像が何せ衝撃だったので、小説はそれに比べると淡々と書かれていた印象。それでも、主人公の苦悩、女性だけが受ける苦痛はひしひしと伝わってきました。
     人工中絶が合法化されたのは日本の方が早かったことを解説を読んで知り、とても意外でした。未だ日本では経口妊...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    2023.1.14

    喉の奥に胸の奥に、後味がざらりと残る。

    追体験とはこのようなことを言うのか、
    と考えさせられるくらい、とめどない感情の波に呑み込まれ揺さぶられてしまう。
    読者の想像力や思考力を試しているかのような、畳み掛けるような筆致が続く。

    これは、遠い昔の話ではないのではなかろうか。
    ...続きを読む
  • シンプルな情熱
    フランスらしい愛と性の話。24時間が不倫相手の男のためだけに使われている。男はそうではないけど。発展することはもちろんなく、肉体だけで繋がっている、ただそれだけの話。小説自体があっという間に終わるので、あとがきの長さに驚きました。
  • 凍りついた女
    日本は海外と比べて開けていないと思い込んでいたけど、どこの国でも立場や性別で差別されていた時代があったし、今もあるのだろうと思った。
  • 嫉妬/事件
    短編集2篇
    自伝風の小説。簡潔に隅々まで詳しく内なる感情をその流れるままに記録して、その時の心情が余すところなく再現される。思わず引き込まれ感情の海にどっぷり浸かって追体験した気になった。中絶場面の恐ろしさに気分が悪くなった。
  • 嫉妬/事件
    ノーベル文学賞受賞者による。
    筆者の体験したことかのように書かれている。
    事件は、中絶が禁止されていた時代のフランスで妊娠してしまった学生が中絶を果たすまでの体験。
  • 嫉妬/事件
    本作は、ノーベル文学賞受賞者のアニーエルノ著の作品で、映画化もされているみたいです。
    本作品は、一人称で書かれており、実体験をもとにしたストーリー展開で、主人公の内面の葛藤を生なましく描き、とてもリアルでした。
    著者の作品は、心に内在する熱い情熱が吹き出してくるような作品が多く、火傷したような読後感...続きを読む
  • 凍りついた女
    「場所」や「ある女」、「シンプルな情熱」より、前半部分は少し読みにくかった。
    日本と同じく、フランスの男尊女卑が当たり前のことだったということがわかったが、アニーエルノーが、自分の両親よりも大分前に生まれている世代なのだということに驚く。今でこそ日本でも認められつつある男尊女卑だが、その世代の人が、...続きを読む
  • ある女
    2022ノーベル文学賞受賞のアニーエルノーの作品。
    母親の死を契機に、母の人生を咀嚼するように、振り返るために書かれたかのような本。
     文を書くことで、母の人生を、母の価値観を、母の生活苦をそして母の心配を母の希望を母の喜びを追いかける。そうやって母の人生を文章で綴ることが唯一の追悼でああるかのよう...続きを読む
  • ある女
    母親のことが書かれている。私自身も、母親と四六時中一緒にいると息が詰まるため、一定の距離を置いている。大学に入って実家を出たときにはホッとした。ある時、実家、母親のやり方に、ふと疑問を感じ、否定する気持ちが出てきたのだ。
    晩年の母親のシーンで、自分自身と母親、また、子ども達と母親としての自分を思って...続きを読む
  • ある女
    エルノー二冊目。母の記憶をつづった一冊。『シンプルな情熱』の時同様、淡々とした語り口が好きなので、作品も好きだった。
    印象的な(視覚的に)冒頭のシーンも、母を冷静に見て、彼女が苦労したこと、階級を超えるために努力したこと、超えられなかったことも、淡々とつづられている。
    フランスは(?)こんなにも階級...続きを読む
  • シンプルな情熱
    〇〇してから何日たった、あと〇〇時間後には…など、時間を意識せざるを得ない苦しさを思い出すとともに、時間を細切れにせず漠然と過ごせている日々はある意味幸せだと思った。
    著者の他の作品も読んでみたい。
  • シンプルな情熱
    ノーベル文学賞つながりで、川端康成を本屋で買ったついでに平積みされているのをなんとなく購入。
    私生活を書く人だと言うことくらいしか知らずに読む。

    率直な感想は「私にはもはや遠い思い出」という感じ。
    誰かを熱烈に想ったり待ち侘びたりする季節は過ぎ去ってしまった。

    描写は簡潔でそっけないほどだ。

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  • 嫉妬/事件
    2022年〈ノーベル文学賞〉受賞のアニー・エルノーさんの「嫉妬」「事件」を合わせて文庫にした本。

    「嫉妬」は、別れた年下の男が、他の女と暮らすことを知り、嫉妬に苦しむ話である。
    嫉妬とは、目に見えない醜いものだと思っている。
    できるなら嫉妬は、したくない。
    嫉妬に狂うとなにも見えなくなる。
    穏やか...続きを読む
  • シンプルな情熱
    "passion"
    元々の"受難"という意味もあり、
    恋、情熱に生きるということは
    自分の魂を奪われて、
    意志が強く見える一方で、ある意味
    主体性をなくしてしまっていることなのかも、なんて。

    欲することの限界を向かえたいような、
    向かえたくないような。
    終わりを意識しながら
    美しき時を化粧しながら...続きを読む
  • シンプルな情熱
    最後の終わり方が素晴らしかった。恋することにも、いろいろなランクがあるのだと知る。パッション、情熱、受難。フランスの大人の女。憧れるけど、全てがマネすらできない、今の私。
  • 凍りついた女
    フランス女性作家として邦訳、これが4冊目というが・・全く 知らなかった。刊行は1981、当作の邦訳は30年弱前。
    ありきたりの言い方ながら、さすがフランス女性としか・・言いようもない。
    フランス女性と一括りにするのは大嫌い・・日本女性だって、同年代でもピンキリ、多種多様。ただ言えるのはフランス女性の...続きを読む
  • 場所
    2022年 ノーベル文学賞受賞者アニーエルノーの1984年発行でルノードー賞受賞作。
    シンプルな情熱は1991年発行。
    物語は著者の父親の生涯を描いたようなもの。しかし、編年体で何をした何がおこったということよりも、フランス社会の階層、貧困、そのなかでの幸せ、人間関係、暮らしをその地域特有の問題とし...続きを読む