アニーエルノーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「場所」や「ある女」、「シンプルな情熱」より、前半部分は少し読みにくかった。
日本と同じく、フランスの男尊女卑が当たり前のことだったということがわかったが、アニーエルノーが、自分の両親よりも大分前に生まれている世代なのだということに驚く。今でこそ日本でも認められつつある男尊女卑だが、その世代の人が、結婚当初には既におかしいと感じていて、1981年に本にしているという現実が、日本の遅れを感じさせられた。
現代のフランスは、どうなのか?日本と同じように、性による役割分担が、未だに染み付いているのだろうか。知りたくなった。
『女の場合、やる気はどれもこれもひとりでに、必然的に失せていく。』とは、まさ -
Posted by ブクログ
エルノー二冊目。母の記憶をつづった一冊。『シンプルな情熱』の時同様、淡々とした語り口が好きなので、作品も好きだった。
印象的な(視覚的に)冒頭のシーンも、母を冷静に見て、彼女が苦労したこと、階級を超えるために努力したこと、超えられなかったことも、淡々とつづられている。
フランスは(?)こんなにも階級がかっつりしているんだなあと思いつつ、このような小説は果たして今の世代に当てはまるのだろうか、将来もこういった”階級”の小説、階級を超えようとする営みはあるのだろうか、なんてふと思った。この本で描かれているような、工場勤めの労働者階級と、大学を出て知識人と、という形はもう少し違う形で、存在するのだろ -
Posted by ブクログ
ノーベル文学賞つながりで、川端康成を本屋で買ったついでに平積みされているのをなんとなく購入。
私生活を書く人だと言うことくらいしか知らずに読む。
率直な感想は「私にはもはや遠い思い出」という感じ。
誰かを熱烈に想ったり待ち侘びたりする季節は過ぎ去ってしまった。
描写は簡潔でそっけないほどだ。
自己と対話するような語り口が同じフランス人作家のマルグリッド=デュラスを思い起こさせるが、例えば「ラマン(愛人)」や「太平洋の防波堤」のようにフランス領インドシナを舞台にした異国情緒による風景の拡がりみたいなものは感じられない。アニー=エルノーの描く世界は閉じた狭い街と部屋の中という感じがする。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ2022年 ノーベル文学賞受賞者アニーエルノーの1984年発行でルノードー賞受賞作。
シンプルな情熱は1991年発行。
物語は著者の父親の生涯を描いたようなもの。しかし、編年体で何をした何がおこったということよりも、フランス社会の階層、貧困、そのなかでの幸せ、人間関係、暮らしをその地域特有の問題としてではなく、人間の普遍的な問題として捉えている。そして著者であるエルノーは大学にすすみ、文学で大学に職を得ることで、父親との精神的距離が遠くなる。父の操る言葉は決して上流階級のそれでも、文学的レベルが高級なものでもないが、それがなんだというのだろうか。生活にねざした言葉であり、劣等感に起因するおかし -
Posted by ブクログ
どなたか知識人の女性がテレビでお勧めしていた1冊。
『ストレートに女の性を描いて話題騒然の書』と帯に書いてありますが性でびっくりしたのはプロローグだけ。
読み進むうちに片思いの切なさ、待つこと以外何もしたくない時間、恋の終わりの予感の妄想や苦しみ、など本気で人を好きになったら勝手に訪れてしまう感情たちがありありと甦って来ました。あの時のあの感情を冷静に文章にしようとしたら、この本が一字一句違わない表現してくれているはず。
自分ではどうにもできない苦しくて時間。アニー・エルノーは今の私位の年齢でこんな経験をしたんだなぁと思うとさっさと経験しておいて良かったかなと。今なら耐えられないよ、きっと私( -
Posted by ブクログ
赤裸々な体験、激しい情熱、衝撃の問題作…、カバーや帯にそんな言葉が踊る本作。
それほどにこれは特殊な内容だろうか。激しく重いのだろうか。
それを淡々と内に秘めている私は、そしてきっといるはずの、たくさんのあなた達は。
極めて主観的な主題も、客観性をもって綴られることで普遍的な物語へと昇華する。
情熱は至ってシンプルだ。単純で、時には愚かな受難でさえある。
どんな危険なものであってもいいから、痕跡を認めたいというような。
静かに静かに、それは発酵する。
山田詠美氏が大絶賛した、というのも納得。
どこか彼女の著作にも通ずる、とろりとした蜂蜜や、甘いバターの香りが漂う。
-
Posted by ブクログ
「私はよく、ひとつの願望と、自分が引き起こすか犠牲になるかする事故、病気など、多少とも痛ましい何かとを天秤にかけてみる。私が自分の願望の強さを計測しようとする!そしてたぶん運命に挑戦しようともするとき、イメージを喚起して、自らの心にその願望の代償を支払う覚悟を問うてみるのは、かなり信頼できるやり方なのだ。たとえば、「いま書き進めているこれを首尾よく書き上げられるのなら、自分の家が焼失してもかまわない」というように」
「いわば私は、旧い痛みによって現在の痛みを和らげることができると、漠然としながら期待しているかのようだった」
という言葉に共感できた。
もっと大人になってから共感できる部分が増え -
Posted by ブクログ
恋のパッションが、客観的に叙述されている。情動を描くのに情動的な文章でないのが新鮮だった。あとがき非常によき。
105 彼が戻ってきたのは現実ではなかったという気がしている。あの夜のことは、私たち二人の物語の時間の内のどこにも存在しない。ただ一月二十日という日付だけが、残っている。あの夜帰ってきた男も、彼がいた一年間、そしてそのあとの執筆期間、私が自分の内にずっと抱き続けていた男性ではない。ほかでもないその男性には、私は絶対に再会することがないだろう。が、それにもかかわらず、あの非現実的で、ほとんど無に等しかったあの夜のことこそが、自分の情熱の意味をまるごと明示してくれる。いわゆる意味がない -
Posted by ブクログ
ネタバレある女
著者:アニー・エルノー
訳者:堀茂樹
発行:1993年7月31日
早川書房
2022年ノーベル文学賞、アニー・エルノーの小説。日本で出版された最初の3冊である『シンプルな情熱』『場所』『ある女』のうち、今週は『場所』と『ある女』を続けて読んだ。『シンプルな情熱』は2年前に読んだ。『場所』は死んだ父親について書いた本だったが、この作品は母親について書いた本。前者を読んで著者の父親像を知っていくにつれ、その時に母親(妻)はどうしていたのだろう、どう受け答えし、対応していたのだろう、と何回も思った。この作品でその答えが出るのかと思っていたら、違っていた。父親(夫)との絡みは殆どなかった。