今や飛ぶ鳥落とす勢いの、百人一首漫画の最新刊。
それまでよく知らなかった競技世界にぐいぐい引き込まれていく感覚は、かつて『ヒカルの碁』によって囲碁が突然の大ブームを起こした頃のことを思い出す。
百人一首(とその先に君臨する新)にひたむきなあまり、猪突猛進で周りが見えなくなってしまう千早の性格には正直イライラとさせられるところも時にはあるけれど、その未熟さがいかにも若さゆえの勢いという感じで頼もしい。彼女を取り巻くキャラクターたちも皆魅力的で、太一のいじらしさときたら本当に涙が出るほどだし(この8巻ではそれが特に極まれりという印象を受ける)現代の女子高生にあるまじき奥ゆかしさを備えたかなちゃん、仲間との結束を通じて元の熱血を取り戻した肉まんくん、そして人と繋がることの楽しさを知った机くんと、互いにライバルとして、また互いに盟友として一心不乱に頂点を目指す五人の絆が眩しい。ただただ純粋に、青春って素晴らしいなぁ、「悔しい」って恥ずかしいことじゃない、こんなに尊い感情だったんだ、と思わず目頭が熱くなる。
今巻では白熱の東日本予選が終わり、東西決戦により選び抜かれた二人が現王者へ挑む名人&クイーン戦へと舞台は移る。個人的に好きだった場面は、かるた会の練習に来なくなってしまった村尾さんを、新が意を決して説得に行くシーン。「おれはもうそのレベルでやれん 遊びでやるとき声かけて」とすげなくあしらわれ、一瞬肩を落としかけた新が、それでも千早と太一の顔を思い出して今一度奮起する。肩を並べて頑張れる仲間がいること、競い合う友情の素晴らしさが際立って表れている名シーンだと思う。何より、憧れの祖父を失って以来無気力だった新にかつての熱が戻ってきた。千早がどちらとくっつくのかというのも、もちろん少女漫画としては忘れてはいけない関心事だけれど、この三人が共にどこまで成長していくのかを追いかけたい、そう思わせてくれるこの漫画は、やはり少女漫画という以前に一つの名作青春漫画なのだと思う。