土井隆義のレビュー一覧
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■生きづらさの果てにあるもの、その究極形態の一つが自殺といえる。
自殺した本人の遺書や遺族らへの聴き取りをもとに厚生労働省が集計した過去10年間の自殺原因・動機別の統計がある。それを見ると成人の場合、ずっと「健康問題」が第1位であるが、20歳未満ではその割合が年々減少し代わって「学校問題」が第1位となっている。また、小中学生を中心に「家庭問題」も増えている。
近年の日本では経済格差の拡大が大きな社会問題となっているが、それとともに「経済・生活問題」も自殺原因としてよく指摘されるようになった。事実、成人の場合ではそれが全体の2~3割を占めるようになっている。しかし20歳未満ではそれほど多くは -
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キャラ論を調べると学校教室の例がよく出てくるので気になり、60ページ程度のブックレットなら軽く読めるだろうと、本当に気楽に手にとって読んでしまった。後戻りなどできなかった。
本書は2004年刊行で佐世保の女児同級生殺傷事件を取り上げている。そして彼女たちが事件に関わったのは僕と同じ年齢の時だ。だからこそ慎重に読まなければならなかった。当時の僕達の関係を支配する構造がここまで見破られるとは思ってもいなかった。クラスメイトとの「優しい関係」、触れてはいけない「ダイヤモンドの原石のように秘められた個性」、教室空間の外部社会における「他者の不在」。ほぼ全てが当時の感触と一致していたと言っていい。と -
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若者の人間関係に関する本。
「若者は自分に好ましい物と人間だけを選択し、彼/彼女らの経験世界は狭小化の一途をたどっている(手に入る機会と情報は増加しているにも関わらず…)」ことを喝破した1冊。
現代は個人の「個性」が重視される社会である。そこでは、共通の価値観による序列化が意味をなさない。もはや、出自や学歴の違いは彼/彼女らにとって関係ない。というのも、それは自分とは完全に異なる世界の人々の話で自分達には関係ない話なのだ。世界は自分の周りの集団・トライブで完結する。
このような社会では、社会からの拘束は働かない(『春の雪』『ロミオとジュリエット』のような)。自分が所属する仲間の間での人間関係 -
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[ 内容 ]
価値観が多元化した社会で感じる閉塞感。
気遺いに満ちた「優しい人間関係」のなかで圏外化におびえる恐怖感。
ケータイやネット、家庭から学校といった日常は、過剰な関係依存と排除で成り立っている。
子どもたちにとって、現実を生き抜くための羅針盤、自己の拠り所である「キャラ」。
この言葉をキーワードに現代社会の光と影を読み解き、「不気味な自分」と向きあうための処方箋を示す。
[ 目次 ]
第1章 コミュニケーション偏重の時代(格差化する人間関係のなかで;コミュニケーション至上主義)
第2章 アイデンティティからキャラへ(外キャラという対人関係の技法;内キャラという絶対的な拠り所)
第3 -
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薄い冊子だが、中身は濃い!
現代日本の価値観多様化、人間関係複雑化の中で、我々はどうやって生き抜いていけばよいか、みたいな話。
・価値観の多元化によって流動化した人間関係の中で各々の対人場面に適合した外キャラを意図的に演じて複雑になった関係を乗り切っていこうとする。
→組織毎に相手に応じて、色々なキャラを使い分けるのはひとつの技術みたいなものと。
・現在は場の空気に流されない一貫的な自己では生きづらい時代。どんな場面でも自分らしさを貫く、大変な世の中。
→この生き方はカッコ良く思えるけど、複雑化した世界では難しいみたい。自分らしさを常に出すって大変なんだね。
・(価値観が多様化する中で -
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意外と結構よかった。
2009年発行の薄いブックレット。ケータイとか圏外とか、ところどころ今の時代とはずれるが、SNSで同質的な相手と簡単に繋がれる時代、という点では全く問題ない。
自分のキャラを強くアピールしてくる子は、そうすることで、自分を守ろうとしているのかもな、という考えに至れた本。
今は、多様性が多様過ぎて、価値観の基盤が無くなっている。ある視点での良いも、違う視点ではだめになる。
基盤が無いと、自分も何をよしとして、どう軸を作ればよいのか、子どもも分からなくなる。
昭和ならガチガチな校則や、圧倒的な権威主義に、ある者は反抗し、ある者は持論を唱え、自己を確立できるが、今はそういう -
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ネタバレ一貫したアイデンティティとは違う「外キャラ・内キャラ」で説明されていたので腑に落ちた
生徒に好かれようとする教師に気味の悪さを覚えていたけど、イマイチ自分では説明がつかなかったので、この本の説明に納得して、スッキリした。
・教師が子供と対等の関係になろうとする
・評価は自分より上の存在からされるものではなく、たくさんの同等な人々からされるものへと変化した
・内キャラは所与のものだから一生変わらないという意識
→生徒からの支持を得ることで揺らぎがちな自尊感情を補填しようとする
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わかる。
たまたま大学受験勉強中の模試の問題で出会った文章だけど、面白かった。
誰もが抱える「異質な自分」との向 -
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トレンディなキーワードを切り口に有識者が語る。親ガチャ、無敵の人、ルッキズム、キャンセルカルチャー、反出生主義など。読めばバランスの取れた意見が多く、一つ一つはあっさりとした内容だが、考えさせられる。
室井佑月が、性的搾取という言葉に対し、同性間でも意見が分かれる事を書いている。グラビアやホステスみたいな職業の是非を問うもので、女性にも賛成派と反対派がいるという事だ。こうした設問に対し、いちいち決着をつける必要はない。世の中に、両方の意見があって良いのだ。にも関わらず、正義バカと池田清彦が言うような、ポリコレの名を借りた、匿名のルサンチマンが奇妙な正義感と責任感で世直しを演じ、どちらに絞ろう -
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一元的な価値観の下で生きることを強制される点において、近代以前は良くも悪くも安定した「静的な社会」であったののにたいし、現在の日本には様々な価値観が併存し、互いに競合しあっている。どんな判断も、別の観点からすぐに相対化されてしまう不安定で「動的な社会」である。
特定の生き方をだれも強制されなくなったという点では、現在の日本は「ユートピア」であるが、しかしそれゆえ、相手が何者か分からないまま不透明な相手と常に向き合って生きなければならない点では、また、自分が何者であるかも根本的にはわからないまま、不透明な自分と常に向き合って生きなければならい点で、現在は同時に「ディストピア」なのである。。
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若年層の生活満足度が上昇しているのは何故かを、様々なデータを駆使して解き明かすことを試みた好著だ."一般に私たちは、自分の生きる目標について考えをめぐらすときも、身の回りの人間関係のなかでそれを確認し、自己の存在意義を得ようとする"、また"私たちの期待水準は、一般に自分を誰と比較するかによって変わってくる"(p104)のだが、人間関係の内閉化が進んだことで、他者と定義される範囲が非常に限定されてきて、生活満足度が高くなっていると結論付けている.納得できる議論だ.このような社会制度を作ってきた現代の高齢層の責任論も議論すべきだが、状況打破のアプローチも大事
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今の時代の価値観の変わりようがとても鮮明に説明されていて、読み応えがありました。
社会が限られた価値観を押し付けていた時代と違って、これっていう価値観の基盤がない分、自分の確かさが揺らいでしまう、そのことに不安を覚える若者たちが、周りの人たちから表面的な承認を得るための方法が、キャラ化。
人間関係格差とか、ハッとする言葉が多くて、今の時代の子供達が、学びに向かわないのもわかるなぁとしみじみと思いました。
周りの友達が認めてくれればいい、生まれた時から自分の本質は決まっている、こんなふうに思っていれば、勉強で自分をよくしていこうとは思わないだろうなぁと。
ページ数は薄いけれど、今を捉えるた -
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「宿命」と「努力」という言葉をキーワードに、習熟期へと移行した日本社会をポジティブな側面とネガティブな側面から見ることで、この時代精神の変化とその背景にあるものを学びました。
P30 増加する高齢者犯罪
→万引き犯と一般の高齢者とで規範意識に差はないが、
人間関係の貧困により、自分を心配してくれる
家族や友人が不在となり、万引きと言う非日常的な
行為に伴う精神的な高揚感や達成感が、
日々の寂しさや虚しさを一時的にでも忘れさせてくれる。
孤立感の余り声を掛けられることを期待して
犯行に走ってしまう人も。
P49 未来に期待できない、と、未来に期待していない
未来に期待できない