小川公代のレビュー一覧

  • ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

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    ネタバレ

    タイトルからは看護が想定されるが全く異なるものであった。フランケンシュタインからはじめるという副題でも、怪物の話からは想定がつかない。目次を見て、戦争、親ガチャ、レイシズム、インターセクショナリティ、愛、エコロジー、ケアの倫理で「虎に翼」のテレビドラマがでてきてやっと分かる次第である。
     ケアの論理よりも現在の問題にピッタリ合うタイトルだと学生が読むと思う。「世界」に連載されたものをまとめた本であるが、連載とは思えないほど内容が一貫している。リニューアルした「世界」がこうした連載を掲載しているとは思わなかった。
     学生がジェンダーやレイシズムを知るにはいい本である。

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    2025年10月18日
  • ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

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    ケアとフェミニズムと排除しない志向から読み直すこと。789章が響いた。人間でないものとすら調子を合わせてしまうほど敏感な感性の持ち主。辛いだろうなあ。ケアすることと無私であることは等価ではないはず、個の権利とケア。最初から他者からの分離を選ぼうとするのではなくなんとか関係を維持し続けようとすること。どうやって他社に応答する形で 丁寧に関わるか。

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    2025年08月13日
  • ケアする対話 この世界を自由にするポリフォニック・ダイアローグ

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    「ケアの倫理」「オープンダイアローグ」「当事者研究」
    最近のわたしのキーワードが満載された本ですごく面白かったけれども、自分のなかではまだ体系化できてないなと思ったら「体系を構築すると権力志向が生まれてくる」という中井久夫の思想が紹介されていて(p.125)、じゃあもうしばらくこのままあれこれ読んでいくか……となった。

    興味を広げてくれるハブのような本で、これのおかげで2年前に録画したままになっていた「100分de名著」の中井久夫特集を一気見したし(「S親和者」がわからなかったので見たけど、中井自身のものと思われるエピソードがめちゃくちゃおもしろかった。本の背表紙を見ていると読んだ内容がすべ

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    2024年09月28日
  • 世界文学をケアで読み解く

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    本書を読書中に、「訪問介護の基本報酬が下がり、人材不足や物価高で介護事業の倒産が相次ぐ」というニュースがとびこんできた。
    国防費には年々予算をあげて注ぎ込んでいるというのに。
    利益追求型の資本主義社会の構造のなかでは、こうした直接的に利益を生まない、生産性のないケア労働は軽んじられ、置いていかれる。

    社会が男性性を求めている構造はそのままに、女性の社会進出をうたっても、そこで生き残る女性は、男性性を身につけた女性だけになってしまう。
    物質的な幸福論ばかりが先行し、「自律的な個」であることが重視されて、所得が高いことで「自律的な個」の価値が判断される社会で、わたしたちは、他者と向き合い、他者と

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    2024年07月26日
  • 翔ぶ女たち

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    小川公代さんの「翔ぶ女たち」すごくおもしろかったし興味深かった。エブエブに水星の魔女にテイラー・スウィフト…。小川公代さんの射程範囲の広さに脱帽したし、そのなかでも「水星の魔女」に関する章では、アニメ自体も見ていたし最近ちょうど岩波新書の「魔女狩りのヨーロッパ史」を読んだところだったので、男性科学者たちによる自然の征服という意味での魔女狩りが発生した時代背景なども理解しやすかったし、テンペストと照らし合わせながらのプロスペラやエリクト、スレッタの立ち位置や物語内での役割、それによりエンパワメント作用は非常に頷けるところがあったしエコフェミニズムの文脈までをも汲んでいたという点については初めて知

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    2024年07月22日
  • ケアの倫理とエンパワメント

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    「ケアの倫理」について、文学の視点から考察したもの、
    一般的に浸透している外部的なケア(身体的なもの介護とか)だけでなく内部的なケア(心のケア)について、多くかかれている

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    2024年05月16日
  • ケアする対話 この世界を自由にするポリフォニック・ダイアローグ

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    横道氏の書をはさみ、斎藤環氏とケア倫理を絡めた小川公代氏の対談を中心に当事者研究とオープンダイアログ、そしてケア倫理の関係を対談なので、わかりやすく、縦横無尽に語り尽くす。最後に頭木弘樹氏、村上靖彦氏の対談でしめるなんとも贅沢な対話集であった。印象に残った言葉を二、三。倫理的であることが治療的である。人間の尊厳、自由や権利を尊重していくことで結果的に回復が起こる。知は権力で、権力が生まれると上下関係が生まれる。ケアラーが弱さを共有していないとケアはせいりあしない。中井久夫氏とケアの倫理の親和性についての論考も面白かった。

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    2024年03月17日
  • 世界文学をケアで読み解く

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    古今の世界文学を「ケア」を軸に縦横に読み解く。
    文学の世界でも様々に「ケア」を訴えてきた。
    またそれが排除されたディストピアが語られてきた。
    それを受けた我々は何を思うか。
    社会は如何に変容に今に至るか。

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    2023年09月24日
  • ケアの倫理とエンパワメント

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    ケア、ネガティブケイパビリティ、クィア、ダイバーシティ、カイロス的時間、多孔的な自己、情動的転回、そしてホモソーシャリテイを背骨とした文芸批評である。一見とっつきにくそうだが、とても読みやすくヨーロッパや日本の文学作品を俎上にあげている。三島由紀夫文学から多様性の系譜を探る平野啓一郎の姿にシビれた。なお、本作で取り上げられる作品群の多くを私は未読なのだが、十分楽しめた。

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    2023年03月29日
  • ケアの倫理とエンパワメント

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    雑誌 美術手帖でこの書籍を知り、手に取った。素晴らしい出会いだった。

    文学研究者から見た、ケアの視点。全てにおいてリスペクトが感じられた。この書籍から、読んでみたいと思う本にたくさん出会えたのもよかった。2023年の幕開けにふさわしい。そして、私自身ネガティブ・ケイパビリティを持ち世界を見つめていきたいと思った。出会えてよかった!これからの私のベースになると思う。

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    2023年01月30日
  • ケアの倫理とエンパワメント

    購入済み

    全く新しい文学評論

    「ケア」の考えは近年さまざまな分野で応用されていますが、文学評論にもケアの考えを取り入れているのが大変興味深く思いました。男性中心だった文学のあり方に一石を投じています。著名な文学作品の新しい読みを提示しているだけでなく、文学を社会に開く、新しい文学研究のあり方も示していると思いました。そういう意味で、読書好きだけでなく、文学研究を志す学生にもぜひ読んでいただきたい一冊です。

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    2022年06月26日
  • 別冊NHK100分de名著 パンデミックを超えて

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    この本の内容や感想・意見を、自分なりにどうにか要領よくまとめてみようと試みたが、諦めた。あまりに重く大きい投げかけだから。

    ただ、冷笑主義に陥らず、目を瞑らず、口を閉じず、自身を含む「悪」に向き合って、生きていきたい。生きていけるだろうか。

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    2022年06月07日
  • ケアの倫理とエンパワメント

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    ケアされたいと思った人が、ケアを求めるものであり、ケアする側が気づいて察するものでも無い。
    また女性がすべきことでもなく、男性の中にもケアのエンパワメントは存在している。

    男性、女性ではなく、両性具有的に捉えることで、ケアについての倫理観が変わるのかなと。

    また人との関わりは水平的であり、平行でも交錯でもない。水平的にずっと続いて行くもので、ケアする人、ケアされる人との距離間はしっかり考慮する。

    オーランドーはちょっと読んでみたいな。

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    2022年01月16日
  • ケアの倫理とエンパワメント

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    キャロル・ギリガンが提唱した「ケアの倫理」を岡野先生の講演で初めて聞いて、まだ十分に咀嚼しきれてないために読んでみた。残念ながら、この概念は人口に膾炙しておらず、私自身も十分に血肉にはならないのは、これまでの価値観に左右されているからだろう。本書の価値は、ケアの価値の視点で文学を読み直し、「ケアの倫理」の再構築を試みたことで、今後の議論の短調にもなることではないかと思う。本書に取り上げられた著者の本はあまり読んだことはなく、十分な理解には至らなかったが、この概念は、今後の世界を変えていく概念の一つであることは間違いないだろう。

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    2022年01月02日
  • ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

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    このところ岩波新書の赤い表紙に「ケア」の2文字が踊っています。この本棚に入っている岡野八代「ケアの倫理 フェミニズムの政治思想」にも揺さぶられたし、まだ未読ですが白石正明「ケアと編集」も早々に開かなきゃ。岩波に限らず時代が「ケア」という言葉を強く求めているように感じます。それはジェンダー問題のみならず、すべての抑圧、差別、偏見に対する異議申し立てをし、乗り越えていくためのキーワードなのだと思います。実は10月のNHK Eテレの「100分de名著」がブラム・ストーカー『ドラキュラ』を取り上げていて講師が著者の小川公代だったので『ドラキュラ』視聴と『フランケンシュタイン』読書を並行してみようと手に

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    2025年11月18日
  • ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

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    『批評理論入門』でのフランケンシュタインの扱い方の実践といった感じ。視点の多様性とともに、参照する作品も幅広くテーマに寄り添ったものとなっている。

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    2025年10月18日
  • ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

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    「フランケンシュタイン」をはじめとする書籍やドラマをベースに、
    いろんなテーマに向き合っている。


    1 戦 争
    2 論破と対話
    3 親ガチャ
    4 マンスプレイニング
    5 レイシズム
    6 インターセクショナリティ
    7 愛
    8 エコロジー
    9 ケアの倫理
    10 アンチ・ヒーロー


    ここに書かれているものはいずれもなんだか
    強者の押し付け、圧を感じるものばかり。
    マンスプレイニングなんて、聴きなれないが、
    説教したがる男たち、ってな感じで、イメージがわかる。

    そういったものに対し弱者がどう立ち向かうか、生きていくか、
    ってことかなあ。ケアの視点。いま。ここ。
    朝ドラ「虎に翼」も出てくる。確かに

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    2025年10月16日
  • メアリ・シェリー:『フランケンシュタイン』から〈共感の共同体〉へ

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    子どもの頃に読んだ『フランケンシュタイン』の作者は、確か”シェリー夫人”となっていた。思春期にシェリー詩集を読んで、へーこのシェリーとフランケンのシェリー夫人…となったが、知らなかったことがなんとたくさん。
    というか、彼女についてほとんど知らなかったんだな。

    実の父がウィリアム・ゴドウィンであることにも驚いた。そして彼女の母。彼女の人生。それらがこうして明るみに出ているのも、ここ数十年の研究の成果であること。
    フランケン以外にこんなにたくさんの作品を書いていることも知らなかった。

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    2025年08月12日
  • ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

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    ヒロアカが取り上げられているとのことで読んだ
    小川公代さん、もちろんお仕事のためもあると思うが映画や文学だけではなくて「鬼滅の刃」や「僕らのヒーローアカデミア」とか少年漫画も論考に入れられるぐらい読み込んでるのすごいな…。射程範囲の広さよ…数巻だけじゃなくてかなりの巻数なんだけどな…
    そして最後の10章「アンチ・ヒーロー」で「僕らのヒーローアカデミア」からトガヒミコと麗日お茶子の関係性に着目していて、これは二人のことが好きな人にはぜひ読んでほしいと思ってしまった
    「僕らのヒーローアカデミア」の内容をすべて肯定するわけではないけれど、トガヒミコの帰結が麗日お茶子との友情からなる対話に帰結したとこ

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    2025年07月25日
  • ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる

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     章立ての「術語」の選択に興味を持っててにした。各章とも、概括的な前書き的な部分―まとめになる部分の間に、色々な作品について言及しながら分析する部分が挟み込まれている。
     大きな社会から押しつけられる物語ではなく、個々人の小さな話を聞いていくというスタイル。
     直線的なものではなく、円錐的に深化していくというものでもない。行ったり来たりしながら、「ケア」について考えるという感じか。
     おせっかいとケアの境界線とは。 

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    2025年07月20日