【感想・ネタバレ】ケアの物語 フランケンシュタインからはじめるのレビュー

あらすじ

強者が押しつける「正しさ」と暴力や分断がはびこる現代社会.そこで置き去りにされているのは,尊厳を踏みにじられた人々が紡ぐ〈小さな物語〉――恐ろしい怪物の物語として知られる『フランケンシュタイン』を,10のテーマを通して多様な作品群と縫い合わせ,読む者をケアの本質へと誘う.想像力を解き放つ文学論.

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Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルからは看護が想定されるが全く異なるものであった。フランケンシュタインからはじめるという副題でも、怪物の話からは想定がつかない。目次を見て、戦争、親ガチャ、レイシズム、インターセクショナリティ、愛、エコロジー、ケアの倫理で「虎に翼」のテレビドラマがでてきてやっと分かる次第である。
 ケアの論理よりも現在の問題にピッタリ合うタイトルだと学生が読むと思う。「世界」に連載されたものをまとめた本であるが、連載とは思えないほど内容が一貫している。リニューアルした「世界」がこうした連載を掲載しているとは思わなかった。
 学生がジェンダーやレイシズムを知るにはいい本である。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

ケアとフェミニズムと排除しない志向から読み直すこと。789章が響いた。人間でないものとすら調子を合わせてしまうほど敏感な感性の持ち主。辛いだろうなあ。ケアすることと無私であることは等価ではないはず、個の権利とケア。最初から他者からの分離を選ぼうとするのではなくなんとか関係を維持し続けようとすること。どうやって他社に応答する形で 丁寧に関わるか。

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2025年08月13日

Posted by ブクログ

このところ岩波新書の赤い表紙に「ケア」の2文字が踊っています。この本棚に入っている岡野八代「ケアの倫理 フェミニズムの政治思想」にも揺さぶられたし、まだ未読ですが白石正明「ケアと編集」も早々に開かなきゃ。岩波に限らず時代が「ケア」という言葉を強く求めているように感じます。それはジェンダー問題のみならず、すべての抑圧、差別、偏見に対する異議申し立てをし、乗り越えていくためのキーワードなのだと思います。実は10月のNHK Eテレの「100分de名著」がブラム・ストーカー『ドラキュラ』を取り上げていて講師が著者の小川公代だったので『ドラキュラ』視聴と『フランケンシュタイン』読書を並行してみようと手に取りました。しかし自分の世代にとっては「怪物くん」の2大モンスターである彼らが「ケア」を語る時の梃子になるとは!しかしこの新書では『フランケンシュタイン』という作品がなぜ生まれたのか?誰によって書かれたのか?生まれた時代はどういう時代で、それが今にどう繋がるのか?を教えてくれました。作者であるメアリ・シェリーとその母親であるメアリ・ウルストンクラフトがなした社会との闘いを初めて知りました。それは「文学」がいかに「社会」の問題を問いかけるために必要なものか、ということも再認識しました。「文学」のみならず「映画」「ドラマ」「漫画」「アニメ」すべてがその影響下にあることも…。グルッと一周、回って映画『フランケンシュタイン』。ギレルモ・デル・トロの新作、急いで早く観に行かなくちゃ!

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

『批評理論入門』でのフランケンシュタインの扱い方の実践といった感じ。視点の多様性とともに、参照する作品も幅広くテーマに寄り添ったものとなっている。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

「フランケンシュタイン」をはじめとする書籍やドラマをベースに、
いろんなテーマに向き合っている。


1 戦 争
2 論破と対話
3 親ガチャ
4 マンスプレイニング
5 レイシズム
6 インターセクショナリティ
7 愛
8 エコロジー
9 ケアの倫理
10 アンチ・ヒーロー


ここに書かれているものはいずれもなんだか
強者の押し付け、圧を感じるものばかり。
マンスプレイニングなんて、聴きなれないが、
説教したがる男たち、ってな感じで、イメージがわかる。

そういったものに対し弱者がどう立ち向かうか、生きていくか、
ってことかなあ。ケアの視点。いま。ここ。
朝ドラ「虎に翼」も出てくる。確かにいろんなものと戦ってた。
ケアが必要だった。

どうしたって「差別」が印象的だ。
頑張れ弱者。

 はじめに

1 戦 争
 『進撃の巨人』『三ギニー』

 1 「壁」を乗り越えて――小さな物語へ
 2 アウトサイダーの女性たち
 3 『フランケンシュタイン』――生の平等を問う

2 論破と対話
 『もうひとつの声で』『バービー』『バタードウーマン』
 『バグダードのフランケンシュタイン』

 1 関係性を結んで対話する
 2 対話と共話
 3 ヴィクターがSNSを使えたなら
 4 『バグダードのフランケンシュタイン』

3 親ガチャ
 『親ガチャの哲学』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』『波』
 『山上徹也と日本の「失われた30 年 」 』 『SPY×FAMILY』『キン肉マン』

 1 共同体幻想を打ち砕く人間の流動性
 2 「これからの時間」を生きるために
 3 「無敵の人」としてのクリーチャー
 4 ジークの反出生主義とアーニャの反・反出生主義

4 マンスプレイニング
 『哀れなるものたち』『吸血鬼ドラキュラ』

 1 “声”とは何か
 2 エドワード・トレローニーの誹謗中傷
 3 『哀れなるものたち』と女性たちの声
 4 愛と自由について語る

5 レイシズム
 『ウォッチメン』「オジマンディアス」

 1 レイシズムとは何か
 2 『ウォッチメン』は何をケアするか
 3 タルサ暴動を語り直す
 4 『フランケンシュタイン』におけるレイシズム批判

6 インターセクショナリティ
 『カラーパープル』

 1 インターセクショナリティとは何か
 2 “声”を獲得していく物語
 3 『フランケンシュタイン』のインターセクショナリティ

7 愛
 『ワンダー・ウーマン』『もう一人、誰かを好きになったとき』
 『鬼滅の刃』『偽姉妹』

 1 ゼロサム的な恋愛に抗して
 2 ポリアモリーとは
 3 メアリ・シェリーの愛の実践

8 エコロジー
 『優しい語り手』『オーランドー』『センス・オブ・ワンダー』

 1 エコロジー運動の黎明期
 2 ワーズワスからウルフまで
 3 カーソンの『センス・オブ・ワンダー』

9 ケアの倫理
 『虎に翼』『ダロウェイ夫人』

 1 〈ケアの倫理〉とは何か――『虎に翼』とケア
 2 弱者の「声」に耳を澄ませる
 3 『フランケンシュタイン』に描かれるケアの倫理

10 アンチ・ヒーロー
 『僕のヒーローアカデミア』『外套』
 『「性格が悪い」とはどういうことか』『ベル・ジャー』

 1 アンチ・ヒーローとは
 2 “ギフテッド”の功罪
 3 なぜトガヒミコはヴィランになったのか
 4 ロマン主義時代の反逆者たち

 参考文献一覧
 あとがき

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2025年10月16日

Posted by ブクログ

ヒロアカが取り上げられているとのことで読んだ
小川公代さん、もちろんお仕事のためもあると思うが映画や文学だけではなくて「鬼滅の刃」や「僕らのヒーローアカデミア」とか少年漫画も論考に入れられるぐらい読み込んでるのすごいな…。射程範囲の広さよ…数巻だけじゃなくてかなりの巻数なんだけどな…
そして最後の10章「アンチ・ヒーロー」で「僕らのヒーローアカデミア」からトガヒミコと麗日お茶子の関係性に着目していて、これは二人のことが好きな人にはぜひ読んでほしいと思ってしまった
「僕らのヒーローアカデミア」の内容をすべて肯定するわけではないけれど、トガヒミコの帰結が麗日お茶子との友情からなる対話に帰結したところはとても好きなので、そのことをこうして論考として残してくれることはとてもうれしかったし、読んでいてトガヒミコの今までを考えると泣けてきてしょうがなかった
新書を読んで泣くというのは初めての経験かもしれない。
そして『虎に翼』!放送以降、小川さんのご著書で毎回見る気がするな…。でもそれだけ『ケア』や『ジェンダー』をはじめ、その社会で包摂されるべきマイノリティたちの話が展開できる作品だというわけでもある
私は『虎に翼』でケアの担い手であった花江ちゃんが大好きなので、ここでも取り上げられていてうれしい
主体的にケアを施すこととケアの役割を強いられることはまるで違うし、あたかも女性はケアが得意で好きでやっていることだといまだに思われることがある
様々な作品のなかにある『ケア』はどのように行われてきたか、それにより今を生きる私たちはこの社会を生きていくために不可欠な『ケア』をどう取り扱っていけばいいのか
そのヒントがたくさん盛り込まれている本だった

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2025年07月25日

Posted by ブクログ

 章立ての「術語」の選択に興味を持っててにした。各章とも、概括的な前書き的な部分―まとめになる部分の間に、色々な作品について言及しながら分析する部分が挟み込まれている。
 大きな社会から押しつけられる物語ではなく、個々人の小さな話を聞いていくというスタイル。
 直線的なものではなく、円錐的に深化していくというものでもない。行ったり来たりしながら、「ケア」について考えるという感じか。
 おせっかいとケアの境界線とは。 

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2025年07月20日

Posted by ブクログ

「戦争」「論破と対話」「親ガチャ」「マンスプレイニング
 」「レイシズム」「インターセクショナリティ」「愛」「エコロジー」「ケアの倫理」「アンチ・ヒーロー」という10のテーマを映画やアニメなどわかりやすいれから説明し、そして英国人作家メアリー・シェリーとその作である「フランケンシュタイン」を通じて、ケアの精神、つまり他者と心をどのように通わせるかを論じた書。「ケアの倫理」もテーマにあるが、基本には「ケアの倫理」に通底する流れで書かれているものである。最近のアニメなども例に出されているので、シンているものは理解が進むが、知らないものは進みにくく、改めて見直そうと思った。

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2025年07月18日

Posted by ブクログ

本書は、メアリ・シェリーや彼女の書いた「フランケンシュタイン」を起点に、ケアの視点から現実を組み替える「実験」なのだという。
メアリ自身や、見捨てられた存在であるフランケンシュタイン(人造人間の方)のような、生きづらさを抱えた脆弱な存在の紡ぐ、「小さな物語」を掬い上げ、それがいかに軽視されてきたかを、様々な作品の中に見出だしていく試みとのことである。
また、物語の中に、他者への配慮や対話・「共話」的な関係を見出だしていくようでもある。

率直に言えばちょっと読みづらい。
「戦争」「親ガチャ」「マンスプレイニング」「レイシズム」などのダークなキーワードが続く前半は、どうしても糾弾調になりがち、という、こちらの気持ちの上のことだけではない。
時代も国も異なる作品や、事件が接続され、それぞれの内容を把握するのも一苦労する。
いろいろな思想家、研究者などの、他の人のアイディアも差し込まれてくる。
そして、これは筆者が意図的にしていることだろうけれど、単一の大きな物語に回収されないようにしているために、論旨がわかりやすくはない。

本書の後半の章は「インターセクショナリティ」「愛」「エコロジー」「ケアの倫理」「アンチ・ヒーロー」。
主に他者への配慮、ケアの関係性を見る部分であろうか。

ポリアモリー(複数愛)を扱った「愛」は、自分にとって衝撃的だった。
ここでは「愛」を、いわゆる性愛を伴う関係に限らず、親密な関係にまで拡張されている。
著者は荻上チキの文章をひきながら、モノガミスト(単数愛)が愛を「資源不足にもなる有限」なものと捉えるのに対し、ポリアモリーは「他者と共有してもゆるぎない」関係と捉えると整理していた。
愛を枯渇する資源と捉える感覚は、モノガミストにも生きづらさを生んでいる可能性があると思いいたった。
この1章が読めただけでも、本書を投げ出さずに読んでよかったと思う。

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2025年10月26日

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