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自己と他者の関係性としての〈ケア〉とは何か。
強さと弱さ、理性と共感、自立する自己と依存する自己……、二項対立ではなく、そのあいだに見出しうるもの。ヴァージニア・ウルフ、ジョン・キーツ、トーマス・マン、オスカー・ワイルド、三島由紀夫、多和田葉子、温又柔、平野啓一郎などの作品をふまえ、〈ケアすること〉の意味を新たな文脈で探る画期的な論考。
本書は、キャロル・ギリガンが初めて提唱し、それを受け継いで、政治学、社会学、倫理学、臨床医学の研究者たちが数十年にわたって擁護してきた「ケアの倫理」について、文学研究者の立場から考察するという試みである。(中略)この倫理は、これまでも人文学、とりわけ文学の領域で論じられてきた自己や主体のイメージ、あるいは自己と他者の関係性をどう捉えるかという問題に結びついている。より具体的には、「ネガティブ・ケイパビリティ」「カイロス的時間」「多孔的自己」といった潜在的にケアを孕む諸概念と深いところで通じている。本書は、これらの概念を結束点としながら、海外文学、日本文学の分析を通して「ケアの倫理」をより多元的なものとして捉え返そうという試みである。(本書「あとがき」より)
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Posted by ブクログ
「ケア」ということ、「道徳(モラル)」(そこに並列される法と社会)と「倫理」の違い、ケアの担い手となる弱者(多くの場合女性)、さらにこの男女の二元論から脱した「多様性」としてのケア、これらを軸にこれまでの文学作品を参考に紐解いていく本書は、現在の社会で消化されている「ケア」とは違うあり方を提示してくれる。
「(目的や必要などの)条件なしに、あなたがいるからという理由で享けるケア」にはジレンマや揺らぎが生じるが、それが本書で言うところの「倫理」である。
私はジェンダーに関心があるので、特に多様性としてのケアの倫理(2章)を興味深く読んだ。男女という閉じられた関係性(家族やコミュニティなど)に薄気味悪さを感じてしまい、その閉じた共同体にいる自己をむしろ問い直す視点が生まれるというのがすごく興味深くて、社会が目に見えない圧のような型を追求する姿勢を求められた時に、少しそこから離れる、若しくは抜けることが真の自己、そして他者を「共感」するケアのスタート地点にやっと立てたということだと思った。私も他者を理解する際、「わかった気にならない」宙ずりの状態にいながら、閉じた共同体に問いを投げかけ、多様性を含めた「ケア」を少しずつ実践して行きたい。
全く新しい文学評論
「ケア」の考えは近年さまざまな分野で応用されていますが、文学評論にもケアの考えを取り入れているのが大変興味深く思いました。男性中心だった文学のあり方に一石を投じています。著名な文学作品の新しい読みを提示しているだけでなく、文学を社会に開く、新しい文学研究のあり方も示していると思いました。そういう意味で、読書好きだけでなく、文学研究を志す学生にもぜひ読んでいただきたい一冊です。
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