小川公代のレビュー一覧
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試し読み
Posted by ブクログ
「戦争」「論破と対話」「親ガチャ」「マンスプレイニング
」「レイシズム」「インターセクショナリティ」「愛」「エコロジー」「ケアの倫理」「アンチ・ヒーロー」という10のテーマを映画やアニメなどわかりやすいれから説明し、そして英国人作家メアリー・シェリーとその作である「フランケンシュタイン」を通じて、ケアの精神、つまり他者と心をどのように通わせるかを論じた書。「ケアの倫理」もテーマにあるが、基本には「ケアの倫理」に通底する流れで書かれているものである。最近のアニメなども例に出されているので、シンているものは理解が進むが、知らないものは進みにくく、改めて見直そうと思った。 -
Posted by ブクログ
子どもの頃「フランケンシュタイン」の映画を観て震え上がった記憶があるが、フランケンシュタインを“暴力的で不安定な”怪物にしたのは、彼を作った博士の“ネグレクト(育児放棄)と質の悪い教育、それから退廃した社会”との見方にはハッとさせられたし、現代社会にもそのまま通じるのではないだろうか。
訳者の小川公代さんのことはポリタスや『虎に翼』関連で脚本家と対談するイベント等で何度かお見かけして、その情熱的なトークが印象的だったが、本書での学術的な語り口の端々に、熱い語りが垣間見えるのも楽しい。メアリ・シェリーが誰か知らずに気になっていた映画『哀れなるものたち』もぜひ観ることにする。
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Posted by ブクログ
本の紹介が多い本は、やっぱり読んでみたいと思える本が載っていると価値が上がります。本書にも、そう思えるものが数冊ありました。
光あたる道を歩んでいる人から見ると、主張せず自ら損をしているだけと思える弱い立場の人たち、そういう人たちによるケアという活動が、世の中を維持し回している、という事実。
分かっていても無視して生きている人でも、病気になったり自分もちょっと弱い立場になるだけで痛感するはずです。
どんどんストレスが増す時代に弱者やケアの活動がどういう扱いになるのか全然分かりません。人生なんて様々で、幸、不幸を測る画一的なモノサシはこの先も存在しないと思いますが、自分が生まれてきた価値は -
Posted by ブクログ
『ケアの倫理とエンパワメント』で注目され、その後も話題作を発表し続ける小川公代さんの著書。基本的には『ケアの倫理とエンパワメント』、『ケアする惑星』と同じ流れではあるが、新自由主義的な社会のあり方を批判的に考察し、ケア思想を世界文学の中に見いだそうとする試みがなされる。
小川さんの専門は英米文学だが、それに限らず、さまざまなジャンルの作品が紹介される。「世界文学」と銘打っておきながら、映画にも手が伸ばされている。ざっと挙げると、以下のような著者の作品が紹介されている。
・ヴァージニア・ウルフ
・ハン・ガン
・柳田國男
・マーガレット・アトウッド
・大江健三郎
・オスカー・ワイルド
・平野啓一 -
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この数十年、国が推し進めてきた新自由主義的な競争社会に疲弊している国民は多い。世の中がどんどん便利になってきた一方で、「生きづらさ」が増していた。しかし、ここにきて、コロナ禍を経て、変化の兆しは見え始めている。福祉やケアへの注目が俄かに高まっているのだ。
本書は前作『ケアの倫理とエンパワメント』が注目された小川公代さんの待望の新刊である。文学を通してケアの精神を学ぶという趣旨は前作と同じだが、主に小川さんのメインフィールドである英文学から題材が採られ、前作以上に深く作品の読み込みがなされる。特にヴァージニア・ウルフ作品については、本書を読んだ後に読み直すと、まるで違う味わい方ができるだろう。 -
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いま「ケア」という言葉に注目が集まっている。反射的に職業としてのケアワーカーやケアギバーが連想されるが、この言葉の持つ意味は広く、ケアは誰もが日常的に行っている。世界はケアで成り立っている。ところが世の中には、ケアは女性が従事すべきものとする(特に男性を中心とした)見方が根強くある。
本書のタイトルにある「ケアの倫理」は著者の造語ではない。ローレンス・コールバーグのいわゆる「正義の倫理」やジョン・ロールズの「正義論」へのカウンターとして、倫理学者のキャロル・ギリガンによって提唱されたもので、ケアを他者への共感という視点で語るものだ。本書はその「ケアの倫理」を、文芸評論を通して論ずる興味深い内 -
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試し読み
Posted by ブクログ
本書は、メアリ・シェリーや彼女の書いた「フランケンシュタイン」を起点に、ケアの視点から現実を組み替える「実験」なのだという。
メアリ自身や、見捨てられた存在であるフランケンシュタイン(人造人間の方)のような、生きづらさを抱えた脆弱な存在の紡ぐ、「小さな物語」を掬い上げ、それがいかに軽視されてきたかを、様々な作品の中に見出だしていく試みとのことである。
また、物語の中に、他者への配慮や対話・「共話」的な関係を見出だしていくようでもある。
率直に言えばちょっと読みづらい。
「戦争」「親ガチャ」「マンスプレイニング」「レイシズム」などのダークなキーワードが続く前半は、どうしても糾弾調になりがち、と -
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メアリ・シェリー。初めて聞く名前。
あの有名なフランケンシュタインの著者だそうな。それも18歳で書いたとか!
この女性の一生を描いたのがこの本。
生まれてすぐ母親に死なれたり、17歳で妊娠、死産だったり、
作家の夫もどうのこうの、、、波乱万丈の人生を送ったようだが、、
あまり興味を惹かれなかった。
謝辞
第1章 遺産
第2章 ゴシックの叛逆
第3章 『フランケンシュタイン』
第4章 初期の女性の語り手──『フランス、スイス、ドイツ、オランダの一地域をめぐる六週間の旅行記』、『マチルダ』(一八一七〜一八二一年)
第5章 『ヴァルパーガ』、『最後のひとり』、『パーキン・ウォーベックの運命』、