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他者なるものを慈しむ、惑星的な視座。
『アンネの日記』、『おいしいごはんが食べられますように』、ヴァージニア・ウルフ、オスカー・ワイルド、ジェイン・オースティン、ルイス・キャロル、チャールズ・ディケンズ……。
『ケアの倫理とエンパワメント』で注目された英文学者が、ケアをめぐる現代の事象を文学と自在に切り結び語る論考。
目次
1章 ”ケアする人”を擁護する――『アンネの日記』再読
2章 エゴイズムに抗するーーヴァージニア・ウルフの『波』
3章 オリンピックと性規範――ウルフの『船出』
4章 ウルフとフロイトのケア思想 1――『ダロウェイ夫人』における喪とメランコリー
5章 ウルフとフロイトのケア思想 2ーー『存在の瞬間』におけるトラウマ
6章 ネガティヴ・ケイパビリティーー編み物をするウルフ
7章 多孔的な自己ーーアートと「語りの複数性」
8章 ダーウィニズムとケア 1 ー―『約束のネバーランド』と高瀬隼子作品
9章 ダーウィニズムとケア 2ーーウルフの『幕間』
10章 ピアグループとケアーーオスカー・ワイルドの『つまらぬ女』
11章 カーニヴァル文化とケアーールイス・キャロルの『不思議の国のアリス』
12章 格差社会における「利他」を考える――チャールズ・ディケンズの『ニコラス・ニクルビー』
13章 戦争に抗してケアを考えるーースコットの『ウェイバリー』とドラマ『アウトランダー』
14章 ケアの倫理とレジスタンスーーオースティンの『レイディ・スーザン』と映画の『ロスト・ドーター』
あとがきーーケアと惑星的思考
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Posted by ブクログ
この数十年、国が推し進めてきた新自由主義的な競争社会に疲弊している国民は多い。世の中がどんどん便利になってきた一方で、「生きづらさ」が増していた。しかし、ここにきて、コロナ禍を経て、変化の兆しは見え始めている。福祉やケアへの注目が俄かに高まっているのだ。
本書は前作『ケアの倫理とエンパワメント』が注目された小川公代さんの待望の新刊である。文学を通してケアの精神を学ぶという趣旨は前作と同じだが、主に小川さんのメインフィールドである英文学から題材が採られ、前作以上に深く作品の読み込みがなされる。特にヴァージニア・ウルフ作品については、本書を読んだ後に読み直すと、まるで違う味わい方ができるだろう。
ケアの倫理を唱えたのはキャロル・ギリガンだが、当然ギリガン以前にもケアはあった。正義の倫理、ケアの倫理、どちらも大切だが、長らくケアの倫理は不当に貶められてきた。しかし、見えていない、気がついていないだけで、本来この惑星はケアに満ちているのだ。一冊の本が世の中の見え方を変えることはある。本書はそうした一冊になり得ると思う。
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