中村哲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
中村哲さんが、アフガニスタンで用水路の建築にあたった30年を振り返った書。
用水路の仕組みや建築の技術、地学的な部分などは私の知識不足、理解力不足のためよく分からなかったが、中村さんがどのような思いでこの事業にあたっていたがが、強く伝わってきた。
中でも、報道されていることや、一般的な常識論がいかに表面的なことか、一時的に表面的に関わって、それが全てであるかのように語ることがいかに愚かしいことかを、現地の本当の声、姿、そこに生きる人々の事を知る中村さんの言葉から痛感した。対岸から見る第三者の、なんと身勝手なことか。
砂漠の地が緑豊かな地になっている写真が多数。これを成して更に自然への畏敬の念を新たにする中村さんの全てに敬服する。 -
Posted by ブクログ
中村さんについては、逝去された際のニュースを微かに覚えている程度でした。「アフガニスタンに国際協力で多大な功績を残された方が不幸なかたちでお亡くなりなった」その程度の認識しか持ち合わせていませんでした。
本当に大人物であったのだと本書を読んで認識を改めました。残された功績は言うに及ばず、異文化に対する深い理解、自然と人間の関係性に対する堅固な思想、困難を乗り越える忍耐力、自身の知識を常に更新する柔軟性、これらを持ち合わせて変化を生み出す為の行動を起こせる稀有な方だったのだと思います。
一点最後まで分からなかったのは、何が中村さんをここまで突き動かしたのかです。哲学にも造詣が深い方のようなので、芯になる考え方が何かあったのでしょう。内村鑑三の著作など、本書で述べられた幾つかの本にヒントがあるかもしれない為、読んでみようと思います。
改めてご冥福をお祈りすると共に、中村さんが持たれていた気概の一端でも自身が持てるように努めます。 -
Posted by ブクログ
ガンジーといい中村医師と言い、尊い人がなぜ同じ人間の手で殺されてしまうのだろう。
先生のことを知ってから、ずっとその疑問が頭の中にあります。答えは出ません。善悪や道徳で世界は回っていないということを突きつけられる心地です。
そして、私はそんな正しくない世界に生かされているんだな、としみじみ思います。蛇口をひねれば水は飲めるし、近くの川が涸れることはない。職や家を失っても、いきなり死ぬことはありません。何より、生活の中で爆弾が落ちてくる危険はほぼ皆無。
私は前世で何か偉大な功績でも残したのでしょうか?アフガニスタンの人は、何を対価に支払ったらこの生活ができるのでしょう?
誰がどう見ても不公平なのに、これが現実です。
不公平すぎて、“中村医師が殺されてしまうような歪んだ世界だからこそ、私は生きていられるのかもしれない…自分は世界の歪みの一部なのかも知れない…”そんな罪悪感のようなものが、じわりと胸に滲みます。
(だからといって“日々の行いを正そう”的な話に帰結してしまうのは浅薄な気もしますし、アフガニスタンに生きる人々が不幸と言いたいわけではありません)
(日本に生まれたせいで、物質的な欲望をずっと刺激され、当たり前の幸福感を奪われている…という見方もできるので)
とりあえず、全くもって正しくはない世界ですが、私はなんの因果か今日も生かされています。
生かされている以上、冒頭の問の答えを探し続けたいと思いました。
おそらくそれが幸福に繋がると信じています。
※何気に『セロ弾きのゴーシュ』が収録されているので、再読したらゴーシュの不器用な人柄がいっそう好きになりました。華々しく評価される人よりも、隅っこを照らす人の灯りに気づける人でありたい。 -
Posted by ブクログ
アフガニスタンという言葉はよく耳にしてきたのに、その国のこともそこに住む人たちのことも何も知らなかったんだと痛感した。
女性の解放も民主主義も大切なことで、アフガニスタンでそれらを実現することはアフタにスタンの人々にとっても重要なことだと思っていた。
でもそれは日本に生まれ育った中での私の価値観であって、そのままアフガニスタンの人々にとって当てはまるわけではない。
本当に何か助けるのだとすれば、そこでの「普通の生活」が明日もあさっても続いていくように手伝いをするということなんだ、というようなことを中村さんは言っていた。
私は大きく勘違いしていた。
中村さんやペシャワール会の人たちがしている活動は偉大だと思う。
それと同時に現地の人々の生活の中に入って、そこでの文化、習慣を十分に理解し尊重し必要なことを淡々と行うという思想に学ばされるものが多かった。
それともう一つ中村さんが言っていたことで大切なことだと思ったのは、流れてくる情報を鋭い目で見極めるということ。
私たちの情報は欧米から見た世界。すべてを鵜呑みにせず本当のことは何なのか自分で確かめることの大切さ。
それを改めて実感させられた。
年会費3,000円からペシャワール会の会員となれるそう。その9割以上が現地での活動費として使われているんだとか。
私にできるとしたら、それくらい。
あとは今を懸命に生きること。アフガニスタンの人々のように。 -
Posted by ブクログ
アフガニスタンでの医療活動や灌漑作りと緑化活動に人生を捧げた中村哲さんが、2013年までの30年を振り返り記した本。
私は2019年に大きく報じられた中村哲さん死亡のニュースを見るまで彼のことを知らなかった。当時、気になって調べれば調べるほど、ニュースに深い悲しみと憤りを感じたのを覚えている。今回は彼自身の言葉でさらに彼のことを知ることができた。
武力増強は本当の平和のためにはならないという言葉は、何より30年以上の現地での彼の経験が裏付けている。9.11の後、アフガニスタンへの自衛隊の派遣に際して、哲さんは参考人として国会で答弁した。丁寧な言葉で必死に伝える哲さんの姿を、そしてそれを厄介がって時には野次を飛ばし、冷ややかに笑う他の多くの議員達を、もし当時私が見ていたら何を感じたのだろうか。果たして世論や冷笑に流されずに彼の言葉を受け止められただろうか。メディアによって誇張されたアフガニスタン=悪という偏ったイメージを払拭できたのか。それを想像するのは少し怖くもある。
先代から代々築いてきた絆を信じて暴力の恐怖に決して屈せずに、アフガニスタンの人々と共に何十万人という人や村を救ってきた哲さん。もし彼が今も生きていたら、変わらず平和への闘いを続けていただろう。空虚を追うだけの理想主義ではなく、徹底した現実主義、そして優しくて強い人だ。