あらすじ
一九八四年に医療援助活動を開始してから二〇一九年に凶弾に倒れるまで,戦乱と劣悪な自然環境に苦しむアフガンの地で,人々の命を救うべく身命を賭して活動を続けた中村哲医師.良き聞き手を得て,自らの個人史的背景とともに,熱い思いを語った肉声の記録,待望の文庫化.遺志を受け継ぐ現地スタッフのメッセージを収録.
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VIVANTを見ていて、ノゴーン・ベキから中村哲さんのことを連想しまして、本書を読みました。このような立派な方が実在したということを、忘れないようにしたいと思います。
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中村医師へのインタビューの記録だが、澤地久枝がその素顔に肉薄していて夢中になって読んだ。中村氏が医師から何故水路工事に転身したかだけでなく、硬く口を閉ざしていた家族のこと、自分の出自や思想形成のこと、果ては体重まで聞かれて、医師も「これほどのことは警察の調書でもないだろう」と苦笑するほどだ。ドキュメンタリー作家の底力を感じると共に、本当に惜しい方を無くした、この痛みは時間が経っても癒えることことはない、だからこそ平和に向かって少しずつ歩み続けなければならないと思わされた。
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中村哲(1946~2019年)氏は、九州大医学部を卒業後、1984年にパキスタンのペシャワールに赴任し、ハンセン病の治療やアフガニスタン難民の診療に従事、その後、長年、戦乱と旱魃に苦しむアフガニスタンで、井戸・水路建設などの復興事業を行ってきた医師。NGO「ペシャワール会」現地代表。2003年にマグサイサイ賞、2018年にアフガニスタンの国家勲章を受章。2019年10月7日には、アフガニスタンでの長年の活動が認められ、同国の名誉市民権を授与された。2019年12月4日、アフガニスタン東部のジャララバードにおいて、車で移動中に何者かに銃撃され、亡くなった。享年73歳。
本書は、戦争や国家を問う作品を多数手掛けてきたノンフィクション作家・澤地久枝(1930年~)が、2008~09年に行ったインタビューをまとめ、2010年に出版、2021年に文庫化されたもの。
私は、2010年に本書の単行本を読み、その後、中村医師の自伝である『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』(2013年)、西日本新聞社が、生前の中村医師本人の寄稿などをまとめた『希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉』(2020年)なども読んだが、今般文庫版を改めて購入し、再読した(文庫版には、遺志を受け継ぐ現地スタッフのメッセージが新たに加えられている)。
中村医師は、パキスタン・アフガニスタンに赴任当初、医師として患者の治療にあたっていたが、医学の恩沢から完全に見捨てられている現地の村々を歩き、わが目でその惨状を確かめるに至り、遂には白衣と聴診器を手放し、「百の診療所より一本の水路を」と現場で井戸掘り、水路建設の陣頭指揮をとることになる。以来現地人と協力して、1,000本を超える井戸を掘り、27㎞に及ぶ用水路を建設し、それらは1万6,500ヘクタールの農地を潤した。そうした中村医師だからこそ、現地の人びとに心から信頼されると同時に深く愛され、その存在は、日本よりもアフガニスタンでより多くの人びとに知られ、その死は、より多くの人びとに悼まれたのだ。。。
本書は、インタビューだからこそ聞き出せた、現地の自然や日常の様子などがとても興味を惹いたし、また、中村医師の、あの訥々としながらも、信念に満ちた声が聞こえてくるようで、改めて胸が熱くなる思いがした。
この夏、米国は20年に亘り駐留したアフガニスタンから撤退したが、米国軍のヘリが飛び交う下で、現地の人々はどのような日々を送っていたのか。。。文庫版あとがきで澤地氏は、本書単行本ができたときにオバマ大統領に送付したと明かしている。(予想通り反応はなかったそうだが)
真の平和のためには何が必要なのかを考えさせてくれる、中村医師からのメッセージである。
(2021年9月了)
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アフガニスタンの診療所からに続き。
先に概要を知ってから対談を読んだ方が、
理解が進むかなと思っての順番でした。
私には想像もできない活動をされている方、
どんな方なのかと思っていましたが、
応援せずにはいられない方でした。
冒頭は家族や両親など、
中村さんの生まれから始まりました。
祖父にそっくりな中村さん。
そこからアフガニスタンの話に入っていくのですが。
文面の中から、
目の前のことをコツコツと進めていくことの大切さ、
相手の未来を想いながら行う現在の活動、
さらにアメリカや日本、他国の干渉、
それらに振り回されるアフガニスタンについて。
現地を見ているからこそ重みのある言葉で、
力があり、怒りがあり、悲しみがあって。
それでも前を向いてアフガニスタンを思う。
今世界中で戦争が起こっていますが、
本書を読んで欲しいと思いました。
文庫は先日読んだものと、本作だけですが、
また折を見て他のハードカバーも読んでみたいと思います。
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岩波現代文庫
中村哲 「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」
インタビュー形式で アフガニスタンの現実や自身のことを語った本。
アフガニスタンのエピソードだけでなく、幼少期や家族の思い出や死、影響を受けた本や宗教などのインタビュー。自伝に近い
自衛隊のアフガニスタン派遣について、対米追随により現地の日本人を危険に晒していると批判。国会に呼びつけといて、批判を取り消させる国会議員の態度は 残念
「人間とは関係である〜その人とある対象との響き合いの中で自分というのは成り立っている」
「組織というのは、ある事業を遂行するためのもの〜事業が成し遂げられれば、組織が続くか続かないかは二の次のこと」
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アフガニスタンやイスラム、タリバンというものをニュース以外の視点から知れる本。
アフガニスタンという地理的にも世情的にも日本から遠く離れた国、その国で暮らす人々について、その一端を中村哲医師の視点を通して知れたのがよかった。
凶弾によって亡くなられたことが残念でならない。
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書名に惹かれて、思わず手に取った。
亡くなったニュースだけ聞いて“日本のお医者さんが異国の地で大変な仕事をなさった”と漠然と思っていたが、異国の地も、大変さも、何ひとつ自分はわかっていないことを知った。
これを読み、私に今すぐ何かをしろと先生は別におっしゃらないだろうけど、人類だの国際協力だの環境問題だのといった空虚な哲学より、まず自分と家族と隣人へ何ができるかから考えていこうと思った。
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中村哲さんって思っていたよりもざっくばらんな方だな。驕らずにその辺のおっちゃんをやってたなんて!
医師の上、水路まで作られた(実際に重機に乗って)、男性版マザーテレサみたいな方なのに。
ということはわかる本でした。
惜しむらくは、聞き手の澤地久枝さんが自分の意見を話しすぎだったこと。作家としての自我が出過ぎですわ。
インタビューって難しいんだなと改めて思った。
Posted by ブクログ
僕は中村哲さんを極めて尊敬している。彼の成したこと、成そうとしたこと、成し得なかったこと。その全てに、私たちが体得すべきものがある。
本書は、哲さんの実際の活動というより彼の個人史、どういう人間なのかというのがよくわかる稀有な書籍だ。そしてご自身おっしゃるように案外保守的で、必ずしも自分と考え方が近い方ではないと気がついた。
そのギャップに少し面食い、しばらく感想が書けなかったが、そのギャップこそ面白いし大事だと今は思う。