【感想・ネタバレ】天、共に在り アフガニスタン三十年の闘いのレビュー

あらすじ

困っている人がいたら手を差し伸べる
――それは普通のことです。

1984年よりパキスタン、アフガニスタンで支援活動を続ける医師・中村哲。治療のために現地へ赴いた日本人の医者が、なぜ1600本もの井戸を掘り、25.5キロにもおよぶ用水路を拓くに至ったのか?「天」(自然)と「縁」(人間)をキーワードに、その数奇な半生をつづった著者初の自伝。

〈目次〉
はじめに――「縁」という共通の恵み
序章 アフガニスタン2009年

◆第1部 出会いの記憶1946~1985
第1章 天、共に在り
第2章 ペシャワールへの道

◆第2部 命の水を求めて1986~2001
第3章 内戦下の診療所開設
第4章 大旱魃と空爆のはざまで

◆第3部 緑の大地をつくる2002~2008
第5章 農村の復活を目指して
第6章 真珠の水―用水路の建設
第7章 基地病院撤収と邦人引き揚げ
第8章 ガンベリ沙漠を目指せ

◆第4部 沙漠に訪れた奇跡2009~
第9章 大地の恵み――用水路の開通
第10章 天、一切を流す――大洪水の教訓

終章 日本の人々へ
アフガニスタン・中村哲 関連年表

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Posted by ブクログ

著者の中村さんは、天に呼ばれてアフガンに行ったと言うことなんだろうか?
とても頭がいい人なのだなと文章や行動で感じる
人としての格があるとはこういうことなのだろうか。
中村さんのはじめたこの事が、引き継がれていって欲しいと切に願う。

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2025年09月26日

Posted by ブクログ

中村哲さんによる、アフガニスタンの活動を主にした回顧録。

中村さんは「必要なのはカネや薬よりもまず水だ」という信念の元に、アフガニスタンに水をもたらすことを目指した。
そして試行錯誤しながら井戸や用水路を作り、凶弾に倒れるまで現地の人のために人生を捧げた。

なぜこんなに尊い生き方ができるのか。
医者だから、という言葉だけでは到底説明がつかない。
日々自分のことばかりで一杯一杯な自分とは大違いだ。

中村さんの言葉には心揺さぶられるものが数多くある。
それは現場に立ち、実際に汗を流して体を動かしていたからだと思う。

安全な地位から批判ばかりする評論家や、金のために薄っぺらい美麗辞句を繰り返す政治家…。
そういった人たちとは異なる、無骨だけど地に足のついた真実の響きがある。

今や人々の話題はカネのことばかりになり、世界の情勢は危うい。
そして手軽な刺激や情報に振り回されるばかりだ。

そんな時代だからこそ、中村さんの人生から学ぶことは多い。

『人にとって本当に必要なものは、そう多くない。少なくとも私は「カネさえあれば何でもできて幸せになる」という迷信と、「武力さえあれば身が守られる」というのは妄信から自由である』

これを心から言えるような人生は、とても尊いものだと私は思う。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

この人は宮沢賢治の「雨ニモマケズ」をそのまま体現していると感じた。医学や語学に堪能でありながら、それをひとつも自分のために使っていない。自分のことばかり考えている自分が恥ずかしくなった。狭い(セコい)考え方だからストレスが溜まるわけで、自分の世界も広く捉えることの大切さも学ぶことができた。
平和な日本からすれば地獄のような土地で、見ず知らずの人のために何故ここまでできるのか。本書の中でも説明はされているが、理屈ではないものを感じる。
亡くなったことは本当に残念に思うが、自分の仕事を見つけられたことは幸せだったように思えた。本当に惜しい人を亡くしてしまった。

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2025年07月31日

Posted by ブクログ

やはり現地でしか分からない空気感が有るということを覚えておかなければならない、と改めて感じた。
 日本古来の技術には修正を加えてきた歴史がある。過去に学ぶことは今の時代に大切にしなければならない。
 終章は一見の価値あり。

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2025年02月27日

Posted by ブクログ

どこまでも透明で、限りなく研ぎ澄まされた言葉の数々。

理不尽や苦しみ、悲しみを幾度も乗り越えてこられたからこその悲壮な決意を秘めた言葉。

今できること、すべきことを見据えて、希望を失わずひたむきに行動していく精神力と静かな力強さに、励まされるような思いで読み進めました。

自分がニュースとして与えられている情報が、いかに脆いものなのかを痛感せずにはいれませんでした。

「物騒な電力に頼り、不安と動揺が行き交う日本の世情を思うとき、他人事とはおもえない。だが、暴力と虚偽で目先の利を守る時代は自滅しようとしている。今ほど切実に、自然と人間との関係が根底から問い直された時はなかった。決して希望なき時代ではない。大地を離れた人為の業に欺かれず、与えられた恵みを見いだす努力が必要な時なのだ。それは、生存をかけた無限のフロンティアでもある」(p.240)

「しかし、変わらぬものは変わらない。江戸時代も、縄文の昔もそうであったろう。いたずらに時流に流されて大切なものを見失い、進歩という名の呪文に束縛され、生命を粗末にしてはならない。今大人たちが唱える「改革」や「進歩」の実態は、宙に縄をかけてそれをよじ登ろうとする魔術師に似ている。だまされてはいけない。「王様は裸だ」と叫んだ者は、見栄や先入観、利害関係から自由な子供であった。それを次世代に期待する。
「天、共に在り」
本書を貫くこの縦糸は、我々を根底から支える不動の事実である。やがて、自然から遊離するバベルの塔は倒れる。人も自然の一部である。それは人間内部にもあって生命の営みを律する厳然たる摂理であり、恵みである。科学や経済、医学や農業、あらゆる人の営みが、自然と人、人と人の和解を探る以外、我々が生き延びる道はないであろう。それがまっとうな文明だと信じている。その声は今小さくとも、やがて現在が裁かれ、大きな潮流とならざるを得ないだろう。
これが、三十年間の現地活動を通して得た平凡な結論とメッセージである。」

自分は中村哲医師が期待する次世代となりうるであろうか。
自問しつつ、反省しつつ、人として、社会人として、親として、自分にできる一歩を探しながら、歩を進めたいと思います。

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2024年12月27日

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『アフガニスタンの診療所から』では中村医師がアフガニスタンで診療を始めたきっかけや現地の医療活動について語られていましたが、今作の『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』は上の本紹介にありますように、干ばつに襲われたアフガンに井戸を掘り、用水路を建設する中村医師の活動を知ることができます。

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2024年08月19日

Posted by ブクログ

中村哲さんの壮絶なアフガニスタンでの活動の記録。生半可な決意ではここまでのことはなし得ない。
アフガニスタンは、ソ連の侵攻、大旱魃、米国の攻撃など、相次ぐ災厄に巻き込まれていく。こうした中、中村哲さんは、日本の昔の治水技術を独自に調べ、アフガニスタンに適合するよう、上手く工夫し、大規模な灌漑を実現させていった。怯むことなく、淡々とおこなっていった。私もこのように生きていきたい。

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2024年03月31日

Posted by ブクログ

ものすごく内容の濃い本である。徹底的に現場主義であり、用水路の土木工事の話は専門的で難しい。が、ここには何がしかの真実があると思われる。
素晴らしい人がいたものである。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

中村さんの努力がすごい。
また、米国のアフガニスタン侵攻に対する批判、メディアの歪んだ報道、日本政府の無能さを明らかにしていて面白い。
信念に脱帽。

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2024年01月14日

Posted by ブクログ

自分自身が河川技術者であり、灌漑施設更新の施工監理の経験があるから、肝が河川からの取水部であり、あの施工の難しさを思い出しながら読み進めた。

そもそもは、キルギスに行くにあたり、中央アジアの本を読もうと、積読になってた中から選んだ。近い地域で、集中して読みたいと。

大正解。気候変動の影響はキルギスでもあり、山頂の万年雪が完全に解けるようになったらしい。アフガンの旱魃も同じ気候変動による。

世界のメディアや政治家達が、タリバン対世界という単純な図式で自分達の勝手な正義を吹聴している下、現実の世界では生きていくための様々な闘いが個人レベル、血族や地縁、渓谷レベルであったのだ。事実は自分から取りに行かねば、知ることはできなくなっている。

河川技術・灌漑技術に最新は無い。その地域に合わせて、最適化されていく。各地で先人から今に至るまで各地で工夫されているそれら土木施設をいま一度、ただある物ではなく、学ぶ施設という視点で見つめてみよう。

常に様々な事に神経を尖らせながら最期を迎えてしまわれて…思いを知る皆に託されたのだろう。

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2023年05月04日

Posted by ブクログ

戦争と旱魃で住む場所を追われた人々が故郷に戻り生活できるよう、井戸・用水路を掘り続けた医師・中村哲先生。別の著書でハンセン病患者の支援をされていた時の話も読んだが、中村先生は一貫して「現場主義」。見返りを求めず、本当に人々のために活動されていたことがわかる。だからこそ現地の人々も自然と参加するようになったのだと思う。

用水路の設計などについてはかなり技術的な記述が多く難解であったが、用水路ができ、灌漑農業ができるようになったことで、荒れ果てた砂漠の大地が緑地に変わっていく様子には感動を覚えた。

中村先生に起きたことは本当に残念で悲しいが、先生が残したものや意思は、これからもきっと残るはず。それがせめてもの救いだ。

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2023年01月01日

Posted by ブクログ

かれこれ30年前に福岡に赴任していた頃、ペシャワール会によく足を運んでいた知人が、中村哲さんのことを話してくれたことがあった。私自身は何の関りも持てなかったが、彼の名前を聞く度に一方的な親近感と畏敬の念を抱いていた。

彼の幼い頃の思い出は、当然だが火野葦平が書いた玉井組の世界と重なる。「花と龍」の、懐かしい読後の空気が戻ってきた。ペシャワールで医療に、アフガニスタンではさらに「水」という生きるための最低限ともいえるインフラを整えるべく灌漑工事に奔走するその一途な姿は、やはり玉井組の、金五郎の血筋だと思わせる気迫がある。

911後、テロ特措法ができ、難民キャンプで救援活動するNGOなどを守るために、自衛隊派遣の議論をしていた衆院特別委員会で、著者は「不確かな情報に基づいて軍隊が日本から送られるとなれば、住民は軍服を着た集団を見て異様に感じる。自衛隊派遣は有害無益、飢餓状態の解消こそが最大の問題」と話した。当時、議員たちをざわめかせたこの話は、新聞で読んで「哲さんらしい」と思った記憶があるが、「観念の戦いは不毛、平和は戦争以上に積極的な力でなければならない」という言葉は本当に重い。長引くロシアのウクライナ侵攻を見ながら、この言葉は今も生々しく感じられる。

アフガニスタンという言葉も文化も違う土地の懐深くに飛び込み、人との絆を大切にしながら、人々の命と平和を第一に行動してきた著者。自然の理を知る、ということは「人間の技術の過信を去ることから始まる。人為と自然の危うい接点で知恵と祈りを尽くす。その祈り抜きに技術を語るのは、画竜点睛を欠く」と書く。環境問題に苦悩する今の世界にとっても金言。さまざまな意味で、あらゆる分野に共通する言葉が多く詰まった一冊だった。

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2022年11月10日

Posted by ブクログ

映画「荒野に希望の光を灯す」を観てから読んだから、情景が映像とともに読めて良かった(むしろ映画を観ないで読んだらあまり理解できていなかったかも)。途上国の中でも情勢の中で翻弄される国で本当に凄いことをやってのけた人物だと思うし、やはり途上国で何かを行うには現地の人との信頼関係と共に、誰と組むかも大事だよなぁと改めて。

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2022年10月05日

Posted by ブクログ

中村先生はどうしてアフガニスタンの農村回復に心血を注げたのだろう。冒頭で医者になろうとしたのは決して高尚な理由だけではないと述べられているので、中村先生が生来公益のために身を捧げられる性質があった訳では無いと思う。どこからこの偉業を成し遂げようとする意志が来るのか。

この本を手にしたのはきっかけも覚えていないくらい偶然である。中村先生の名前すら知らなかった。しかし、本を読み進めるうちにこんな名もなき偉人がいるのかと心から驚いた。偶々本を読まない限り全く知らなかったであろう人なのだ。恐らく自分の友達10人に聞いても知ってる人は1人くらいだろう。世の中は中村先生のような影の立役者によって支えられているに違いない。

最後の日本の人々へ向けたメッセージは日頃自分が思っていることと似通っていて、中村先生のような、世界を、飢餓を、死を見てきたような人と意見が同じで嬉しかった。私が普段感じていることは間違いではないのだ。

ほんの少しでいいから中村先生のような生き方をしてみたい。勇気と信念を貰える一冊でした。

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2022年09月12日

Posted by ブクログ

他人がやらないから自分がやるしかない、というそんな言葉では信じられないほどの苦難の連続だったに違いないのに、その功績をさらっと書いている。ホント、偉人だ。

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2022年09月04日

Posted by ブクログ

中村先生の強い意志を感じる。
用水路の作成の話がメイン。
何かを成し遂げるということの偉大さを感じた。

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2025年08月26日

Posted by ブクログ

今月初旬に、Xで中村哲さんが話題に上っていたのを目にしました。

お医者さんで、砂漠に森を作って、最期は武装勢力の凶弾に倒れてしまった方だというくらいの認識しかありませんでした。

そこでもう少し詳しく知りたいと思い、手にした本です。

「農村の回復なくしてアフガニスタンの再生なし」
この信念から、「緑の大地計画」が開始されました。灌漑用水事業には、江戸時代に作られた、福岡県の山田堰という取水口が参考にされたとのことです。

数100年前の事例に着目して、用水路を現代に作るという発想に驚かされました。

また、中村さんが繰り返し述べておられますが、これらの事業は日本にいる支援者・現地住民など、非常に多くの人々の尽力で成功したのだということがとても心に残りました。

たくさんの写真が掲載されていますが、中でもカラー写真は圧巻です。緑の大地が本当に美しいです。

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2025年05月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1人で成り立つ自分は無い。自分を見つめるだけの人間は滅ぶ。他者との関係において自分が成り立っている
人間にとって本当に必要なものは、そう多くは無い。少なくとも私は金さえあれば何でもできて幸せになると言う迷信、武力さえあれば身が守られると言う迷信から自由である
「天、共にあり」
本章を貫くこの縦糸は、我々を根底から支える不動の事実である。やがて、自然から遊離するバベルの塔は倒れる。人も自然の一部である。それは人間内部にもあって生命の営みはする厳然たる摂理であり、恵みである

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2025年02月21日

Posted by ブクログ

■評価
★★★✬☆

■感想
◯初めから強い志があってなにかに熱中する人も素敵だが、中村さんのように成り行きのような縁に導かれて力を尽くす人の姿も素敵だなと思った。
◯本書は治水工事に対してかなり詳しく書いてある。現在のアフガンの人に思いを馳せるのもいいのだが、参考にした日本の治水技術を試行錯誤でしていった江戸、それより前の人達に思いを馳せるのも面白いと思った。
◯アフガンを苦しめている最大の原因が、戦争や貧困ではなく「大旱魃」ということを初めて知った。それの原因をたどると環境問題に行き着き、それに加担している先進国の一人間として、申し訳ない気持ちになった。

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2025年01月21日

Posted by ブクログ

人から勧めていただき読んだ本。30年に渡り多くの人を助け駆け抜けた人生はただただ素晴らしいの一言に尽きます。皮肉な最期が悔やまれます。

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2024年02月12日

Posted by ブクログ

2年前、「荒野に希望の灯をともす」を映画館で観た。泣いて泣いて、今でも、何故もうこの世界に先生はいないのか、と思って泣きそうになる。
自分が知っている人間のなかで、本当に心から尊敬している人。
映画の内容をより詳しく、先生の心情も交えて描写されており、特に書籍ならではだと感じたのは、ガンベリ砂漠(死の谷と呼ばれ、旅人を葬り去ることで有名な砂漠)を開拓、全長25メートルに及ぶ灌漑用水路を建設したときの話。
図解が豊富に示され、旱魃の原因、水の流れをどうやって作るか、洪水にも耐える設計、使う資材(現地で調達できて、壊れたら直せるようにする)、防砂林として植生する木の種類(固有植生の考え)などなど、本当に細かく書いてある。そういう資料集としても面白いくらいに!

そういった仕組みを考えるにあたってのもとになっているのが、1700年代に作られた筑後川の「山田堰」。映画で、実際に足を運んで(先生は福岡の方)、川の流れを凝視する姿を見たのを思い出す。
少ない材料で、何十年何百年と、洪水にも渇水にも耐える堰を200年以上前の人々が作っていた。
それを参考にしながら、アフガニスタンにあるもので、先生達がいなくなっても現地の人々で永続的に管理していけるものを作るために、医師である先生は思考を巡りに巡らせ、その手でユンボを操縦し、米英軍からの止まない砲撃のなか、作り上げた。

もちろん、先生を中心とする邦人メンバーや、現地で雇用したスタッフ、自分達の生活全てをかけて作業する農民の方々、ペシャワール会に寄せられたら募金(約16億円)、、どれが欠けても成功しなかった。作業中事故で怪我をしたり亡くなった人もいて(誘拐されて殺害された人も)、それでもやり抜き、結果現地の方の生活まるごとを救ったのだ。

印象的だったのは、9.11の約1ヶ月後、国会での参考人招致。日本政府は米英にならって、自衛隊派遣をしようという段階。
先生が「自衛隊派遣は有害無益。アフガン難民の飢餓解消を!」と訴えるも、代議士に発言取り消しを要求された場面。
憲法第9条に守られていた、と先生はよく言っていた。武器を持たない、戦わないことが、平和を維持するにあたってどれほど大切か。

「独裁体制から民主主義へ」(ジーン・シャープ)の、逆をいくような今の世界。

「平和とは理念ではなく現実の力なのだ」

Wikipediaで中村哲先生を調べると、自民党の空虚なコメントに対して、共産党の前代表、志井和夫さんだけが、先述した参考人招致の際の出来事に触れていた。
聞き慣れた「テロに屈するな」という言説に屈してはいけないよな、と改めて思う。

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2024年02月08日

Posted by ブクログ

いつか読んでみたいと思っていた中村哲さんの著作にようやく触れる機会が得られた。
灌漑事業に関する専門的な説明は理解が追いつかないところが多かったが、本書の核はそこではない。
縁に導かれてとしか言いようのない経緯でアフガニスタンでの治水事業に当たられた中村さんの行動の数々。そこに込められた思い。
至誠にして動かざるものなし。
この言葉が真実なのだなぁと実感する。

我が身を振り返って、恥ずかしい限りではあるが、少しでもこういう無私・至誠の境地に近づきたい。

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2023年09月08日

Posted by ブクログ

中村哲さんが、アフガニスタンで用水路の建築にあたった30年を振り返った書。

用水路の仕組みや建築の技術、地学的な部分などは私の知識不足、理解力不足のためよく分からなかったが、中村さんがどのような思いでこの事業にあたっていたがが、強く伝わってきた。

中でも、報道されていることや、一般的な常識論がいかに表面的なことか、一時的に表面的に関わって、それが全てであるかのように語ることがいかに愚かしいことかを、現地の本当の声、姿、そこに生きる人々の事を知る中村さんの言葉から痛感した。対岸から見る第三者の、なんと身勝手なことか。

砂漠の地が緑豊かな地になっている写真が多数。これを成して更に自然への畏敬の念を新たにする中村さんの全てに敬服する。

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2023年05月25日

Posted by ブクログ

中村さんについては、逝去された際のニュースを微かに覚えている程度でした。「アフガニスタンに国際協力で多大な功績を残された方が不幸なかたちでお亡くなりなった」その程度の認識しか持ち合わせていませんでした。

本当に大人物であったのだと本書を読んで認識を改めました。残された功績は言うに及ばず、異文化に対する深い理解、自然と人間の関係性に対する堅固な思想、困難を乗り越える忍耐力、自身の知識を常に更新する柔軟性、これらを持ち合わせて変化を生み出す為の行動を起こせる稀有な方だったのだと思います。

一点最後まで分からなかったのは、何が中村さんをここまで突き動かしたのかです。哲学にも造詣が深い方のようなので、芯になる考え方が何かあったのでしょう。内村鑑三の著作など、本書で述べられた幾つかの本にヒントがあるかもしれない為、読んでみようと思います。

改めてご冥福をお祈りすると共に、中村さんが持たれていた気概の一端でも自身が持てるように努めます。

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2023年05月05日

Posted by ブクログ

中村さんのアフガニスタンでの活動がよくわかった。義理堅い人だったのだろう。
彼の生き方は尊敬に値する。医者でありながら、飢餓は救えないため、用水路を作り、自給自足の生活を支えた。筑後川の山田堰を参考にしたのは驚きだった。

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2023年04月04日

Posted by ブクログ

文章は決して上手くなく、後半の井戸掘り関連は専門的でもあって読みにくいが、現地に根付いた支援活動をベースにした鋭い視点とコメントが素晴らしい。写真も多く使われていて、砂漠を緑化して農耕地にしていった実績も圧巻の一言。
見習う、学ぶことの多い書。

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2022年10月29日

Posted by ブクログ

読書する良さを改めて感じられた一冊。
生涯行くことのない場所での、することのできない経験を少しでも知るために私にとって読書は欠かせないものです。

これまでアフガニスタン情勢については、テレビのニュースで部分的に見聞きする程度でした。
でもやはり、与えられる情報だけで知った気になるのは大変恐ろしいことだと思いました。
この本に記されている中村氏の視点が全てではないでしょう。
違う国籍、立場から見たらまた異なるアフガニスタンが見えてくるのかもしれません。

この本では主に用水路の作り方が記されています。
しかしながら、その行程を読み進めるとアフガニスタンの自然環境だけでなく政治的状況、人々の考え方も垣間見ることができます。
中村氏は自然に対しても、人に対しても決して力業で事を進めることなく相手を理解し、尊重していく姿勢を貫きます。
これは普通の生活を送る私達にとっても基本的、かつとても大切なこと。その理由がこの本を読むことで心から理解できると思いました。

「世の中は相変わらず『経済成長』を語り、それが唯一の解決法であるかのような錯覚をすりこみ続けている。経済力さえつけば被災者が救われ、それを守るため国是たる平和の理想も見直すのだという。これは戦を図上でしか知らぬ者の危険な空想だ」

「知識が増せば利口になるとは限らない。情報伝達や交通手段が発達すればするほど、どうでもよいことに振り回され、不自然な動きが増すように思われて仕方がない」

「戦場に身をさらした兵士なら、発砲しない方が勇気の要ることを知っている」

「経済的利権を求めて和を損ない、『非民主的で遅れた国家』や寸土の領有に目を吊り上げ、不況を回復すれば幸せが訪れると信ずるのは愚かである。人の幸せは別の次元にある」

レビューを書くのが難しいので、終章の中で特に心に残った文章を抜粋します。
中村氏は物書きではないので、いささか読みにくさを感じるのは事実ですが、それ以上に読む価値がある一冊でした。

ご冥福をお祈りします。

2020年6冊目。

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2022年09月10日

Posted by ブクログ

本当にすごい人すぎる。心から尊敬、中村哲先生。
日本からでは、現地の声や状況はわからない。
マスコミの報道は偏っているんだなと改めて感じる。
綺麗な水が、いかに大切か。医療よりもさきにやることがあるからと、
医者であるのに自ら井戸掘りに用水路をひくことに率先して行動。
その様子を淡々と綴られているのだけど、並大抵のことではない。
これらの事業に人生を捧げた中村哲先生だけど、ご家族はどんな気持ちだったのかと心配になる。
中村先生みたいには生きられないけど、自分のできる範囲でアフガニスタンを支援したいと思った。

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2021年11月05日

Posted by ブクログ

「FACTFULNESS」を読み終えた後に手にした本なだけに、互いの距離感にギャップを感じ世界を見渡す視線の測り方、遠近感を養えた一冊。中村さんはじめ一人ひとりの命をかけたひとつひとつの積み重ねが世界を形ずくっているんだ・・・と考えさせられた。人類が文化の枠組みを超えて他の生物と本当の意味で共存し合える生命体になれる日はくるのだろうかと考えさせられた。この世に生を受けたひとつの人間としてこれまで巡り合った本から何を学び、何を育めるのだろうかと思いめぐらした。

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2023年07月25日

Posted by ブクログ

立派な方であることはよくわかる。著者の経験は素晴らしいものであるゆえ、工夫すればもっとドラマティックにかけるとも思う。

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2023年01月21日

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