【感想・ネタバレ】天、共に在り アフガニスタン三十年の闘いのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

今まで中村さんの本を地道に読んできたけど、この本は中村さんの軌跡が知れるから、中村哲さんという人が知りたいなら、この本がベストチョイスだと思う。
それで、もっと中村さんのことが知りたくなったらほかの本も読んでみる みたいなチョイスはありかもしれません。


最後のほうのページにある、過去と現在の対比写真がすごかった。過去にそこが砂漠だったことなんて分からない、完全な緑の大地になっていて、感動した。
今までいろんな中村さんの本を読んできて、実際に中村さんがなさってきたことを文字とモノクロ写真だけでは知っていたけど、カラーで見ると感動が全然違う。
過去には何人もの人間が死に絶えた砂漠を、緑の大地にしてしまう力。
ほんとすごいな。ただただ感嘆の声が漏れる。
元々は医師として派遣され、現地でハンセン病をはじめとする感染症の治療を始めて、団体を立ち上げて、無医地区に病院を作り、井戸を掘り、用水路を造る…。
中村さんの本を読めば、流れとしてそうなっていくのは理解できるけど、実際にその場にいたときに、咄嗟に「無医地区に病院を作る」だとか「井戸を掘る」だとか、そういう判断ができるのがすごいなと思う。


にしても、戦争って、いわゆる先進国って、ほんとに勝手だよなあ。
誰のせいでアフガニスタンがこんな目に遭わないといけないんだろう。

捏造と錯覚で成り立つ世界。これを読んだわたしですら、生きるのがつらくなってしまうのに、中村さんはずっとどんな気持ちで頑張ってこれたんだろう。
けど、日本よりずっと人間らしいアフガニスタンにいるほうが、もしかしたら心地よく過ごせていたんじゃないかな。
中村さんの生きることに対する姿勢に、ちょっとでも近づいていきたい。
だから、生き物はすべて等しい命だと思っているわたしは、人間の勝手で辛い目に遭ってしまう動物たちのために活動している団体に毎月募金と物資を送ることにした。
すべての生命が等しく幸せになってほしい。
最終章はわたしたちに向けたメッセージ。心に刻みます。金と経済発展がイコール幸せではない。人間に必要なものは、そう多くない。

1
2022年01月17日

Posted by ブクログ

中村哲さんの壮絶なアフガニスタンでの活動の記録。生半可な決意ではここまでのことはなし得ない。
アフガニスタンは、ソ連の侵攻、大旱魃、米国の攻撃など、相次ぐ災厄に巻き込まれていく。こうした中、中村哲さんは、日本の昔の治水技術を独自に調べ、アフガニスタンに適合するよう、上手く工夫し、大規模な灌漑を実現させていった。怯むことなく、淡々とおこなっていった。私もこのように生きていきたい。

0
2024年03月31日

Posted by ブクログ

ものすごく内容の濃い本である。徹底的に現場主義であり、用水路の土木工事の話は専門的で難しい。が、ここには何がしかの真実があると思われる。
素晴らしい人がいたものである。

0
2024年02月11日

Posted by ブクログ

中村さんの努力がすごい。
また、米国のアフガニスタン侵攻に対する批判、メディアの歪んだ報道、日本政府の無能さを明らかにしていて面白い。
信念に脱帽。

0
2024年01月14日

Posted by ブクログ

自分自身が河川技術者であり、灌漑施設更新の施工監理の経験があるから、肝が河川からの取水部であり、あの施工の難しさを思い出しながら読み進めた。

そもそもは、キルギスに行くにあたり、中央アジアの本を読もうと、積読になってた中から選んだ。近い地域で、集中して読みたいと。

大正解。気候変動の影響はキルギスでもあり、山頂の万年雪が完全に解けるようになったらしい。アフガンの旱魃も同じ気候変動による。

世界のメディアや政治家達が、タリバン対世界という単純な図式で自分達の勝手な正義を吹聴している下、現実の世界では生きていくための様々な闘いが個人レベル、血族や地縁、渓谷レベルであったのだ。事実は自分から取りに行かねば、知ることはできなくなっている。

河川技術・灌漑技術に最新は無い。その地域に合わせて、最適化されていく。各地で先人から今に至るまで各地で工夫されているそれら土木施設をいま一度、ただある物ではなく、学ぶ施設という視点で見つめてみよう。

常に様々な事に神経を尖らせながら最期を迎えてしまわれて…思いを知る皆に託されたのだろう。

0
2023年05月04日

Posted by ブクログ

戦争と旱魃で住む場所を追われた人々が故郷に戻り生活できるよう、井戸・用水路を掘り続けた医師・中村哲先生。別の著書でハンセン病患者の支援をされていた時の話も読んだが、中村先生は一貫して「現場主義」。見返りを求めず、本当に人々のために活動されていたことがわかる。だからこそ現地の人々も自然と参加するようになったのだと思う。

用水路の設計などについてはかなり技術的な記述が多く難解であったが、用水路ができ、灌漑農業ができるようになったことで、荒れ果てた砂漠の大地が緑地に変わっていく様子には感動を覚えた。

中村先生に起きたことは本当に残念で悲しいが、先生が残したものや意思は、これからもきっと残るはず。それがせめてもの救いだ。

0
2023年01月01日

Posted by ブクログ

かれこれ30年前に福岡に赴任していた頃、ペシャワール会によく足を運んでいた知人が、中村哲さんのことを話してくれたことがあった。私自身は何の関りも持てなかったが、彼の名前を聞く度に一方的な親近感と畏敬の念を抱いていた。

彼の幼い頃の思い出は、当然だが火野葦平が書いた玉井組の世界と重なる。「花と龍」の、懐かしい読後の空気が戻ってきた。ペシャワールで医療に、アフガニスタンではさらに「水」という生きるための最低限ともいえるインフラを整えるべく灌漑工事に奔走するその一途な姿は、やはり玉井組の、金五郎の血筋だと思わせる気迫がある。

911後、テロ特措法ができ、難民キャンプで救援活動するNGOなどを守るために、自衛隊派遣の議論をしていた衆院特別委員会で、著者は「不確かな情報に基づいて軍隊が日本から送られるとなれば、住民は軍服を着た集団を見て異様に感じる。自衛隊派遣は有害無益、飢餓状態の解消こそが最大の問題」と話した。当時、議員たちをざわめかせたこの話は、新聞で読んで「哲さんらしい」と思った記憶があるが、「観念の戦いは不毛、平和は戦争以上に積極的な力でなければならない」という言葉は本当に重い。長引くロシアのウクライナ侵攻を見ながら、この言葉は今も生々しく感じられる。

アフガニスタンという言葉も文化も違う土地の懐深くに飛び込み、人との絆を大切にしながら、人々の命と平和を第一に行動してきた著者。自然の理を知る、ということは「人間の技術の過信を去ることから始まる。人為と自然の危うい接点で知恵と祈りを尽くす。その祈り抜きに技術を語るのは、画竜点睛を欠く」と書く。環境問題に苦悩する今の世界にとっても金言。さまざまな意味で、あらゆる分野に共通する言葉が多く詰まった一冊だった。

0
2022年11月10日

Posted by ブクログ

映画「荒野に希望の光を灯す」を観てから読んだから、情景が映像とともに読めて良かった(むしろ映画を観ないで読んだらあまり理解できていなかったかも)。途上国の中でも情勢の中で翻弄される国で本当に凄いことをやってのけた人物だと思うし、やはり途上国で何かを行うには現地の人との信頼関係と共に、誰と組むかも大事だよなぁと改めて。

0
2022年10月05日

Posted by ブクログ

中村先生はどうしてアフガニスタンの農村回復に心血を注げたのだろう。冒頭で医者になろうとしたのは決して高尚な理由だけではないと述べられているので、中村先生が生来公益のために身を捧げられる性質があった訳では無いと思う。どこからこの偉業を成し遂げようとする意志が来るのか。

この本を手にしたのはきっかけも覚えていないくらい偶然である。中村先生の名前すら知らなかった。しかし、本を読み進めるうちにこんな名もなき偉人がいるのかと心から驚いた。偶々本を読まない限り全く知らなかったであろう人なのだ。恐らく自分の友達10人に聞いても知ってる人は1人くらいだろう。世の中は中村先生のような影の立役者によって支えられているに違いない。

最後の日本の人々へ向けたメッセージは日頃自分が思っていることと似通っていて、中村先生のような、世界を、飢餓を、死を見てきたような人と意見が同じで嬉しかった。私が普段感じていることは間違いではないのだ。

ほんの少しでいいから中村先生のような生き方をしてみたい。勇気と信念を貰える一冊でした。

0
2022年09月12日

Posted by ブクログ

他人がやらないから自分がやるしかない、というそんな言葉では信じられないほどの苦難の連続だったに違いないのに、その功績をさらっと書いている。ホント、偉人だ。

0
2022年09月04日

Posted by ブクログ

私たちがテレビを通してみるものとは違う現実がここにはある。人として仕事をするうえで大切な本質に気付かされる。

0
2022年04月02日

Posted by ブクログ

現在のアフガニスタンで起きている飢餓や人権侵害問題についてのテレビ報道を見て、いてもたってもいられなくなって読んだ。

環境的要因の視点は知らなかったので、新たな発見だった。
そこに追い打ちをかけるように、国際社会が貿易を停止したことで市民が生命の危機に陥っている。

他人事じゃないと思った。

動した人の文章は、説得力が格段に違う。

0
2021年12月31日

Posted by ブクログ

縁がつながって井戸を掘ったり用水路を作ったり。医療以前に水とそこで暮らせる基盤作りが大切。誰かのために何かを成し遂げる。

0
2021年12月26日

Posted by ブクログ

現代社会において日本人が失いつつある「良識」ある行動や考え方が随所に見られます。
『「王様は裸だ」と叫んだ者は、見栄や先入観、利害関係から自由な子供であった。それを次世代に期待する。』と中村医師は述べられた。やがて人々が大切なものを失うのではないかと警鐘を鳴らす。
彼の死は残念でならないが、彼の精神や良識ある行動が我々に伝えるメッセージをしかと受け止め、大切にしたい。

0
2021年09月20日

Posted by ブクログ

米軍アフガン撤退を機に積んであった本
をよんで見た。クリスチャンで医者である中村先生のアフガンへの愛を用水路旁を通して描いている。アフガニスタンは大干ばつに見舞われ地球の気候変動が原因だと言っている。アフガンのことは外国軍ではなくアフガン人によってだけしか解決できない。最終章の「日本の人々へ」は日本人への遺言になってしまった。

0
2021年09月11日

Posted by ブクログ

まずは、中村哲さん、素晴らしい方です。
最近、何かと話題になるアフガニスタン。当然中村哲さんの話も出、では一冊読んでみようとこちら手に取りました。
ところどころに写真挿入があり、何もない砂漠が緑化していく様は目を見張るものがあります。また、アフガニスタンの風習や、人柄にも言及。用水路建設では現地での人間関係や根回し、関係機関や日本サイドのやり取り等、想像を超える苦労があったことが伺えます。
用水路建設の詳しい説明は、こちらの知識がなく、難解な部分が多少ありました。
単なるお金の援助や型だけのものより、現地の人と手を取り合い、共に成長していくことこそが本当の意味での人道支援のあり方だと。
また、いかに日本の報道がアメリカよりなのか。ワールドトレードセンターが崩壊したとき、悲惨な状況に自分自身洗脳されていた気がします。でもアフガニスタンの多くの人は私達と同じ日常があり、普通の生活を送っています。その人たちのことも忘れてはなりません。各個人がしっかり情報収集をし、真実を自分で見極めて、判断することが大切です。
これは教科書に採用されて、全国民に読んでほしい本の一つです。
 

0
2021年09月06日

Posted by ブクログ

 人として何を大切にすべきか考えさせられる良書。この本に出会えたことに感謝。
 以下、心に響く2文。

『平等や権利を主張することは悪いことではない。しかし、それ以前に存在する「人としての倫理」の普遍性を信じる。そこには善悪を超える神聖な何かがある。』
『「信頼」は一朝にして築かれるものではない。利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。』

0
2021年07月15日

Posted by ブクログ

人から勧めていただき読んだ本。30年に渡り多くの人を助け駆け抜けた人生はただただ素晴らしいの一言に尽きます。皮肉な最期が悔やまれます。

0
2024年02月12日

Posted by ブクログ

2年前、「荒野に希望の灯をともす」を映画館で観た。泣いて泣いて、今でも、何故もうこの世界に先生はいないのか、と思って泣きそうになる。
自分が知っている人間のなかで、本当に心から尊敬している人。
映画の内容をより詳しく、先生の心情も交えて描写されており、特に書籍ならではだと感じたのは、ガンベリ砂漠(死の谷と呼ばれ、旅人を葬り去ることで有名な砂漠)を開拓、全長25メートルに及ぶ灌漑用水路を建設したときの話。
図解が豊富に示され、旱魃の原因、水の流れをどうやって作るか、洪水にも耐える設計、使う資材(現地で調達できて、壊れたら直せるようにする)、防砂林として植生する木の種類(固有植生の考え)などなど、本当に細かく書いてある。そういう資料集としても面白いくらいに!

そういった仕組みを考えるにあたってのもとになっているのが、1700年代に作られた筑後川の「山田堰」。映画で、実際に足を運んで(先生は福岡の方)、川の流れを凝視する姿を見たのを思い出す。
少ない材料で、何十年何百年と、洪水にも渇水にも耐える堰を200年以上前の人々が作っていた。
それを参考にしながら、アフガニスタンにあるもので、先生達がいなくなっても現地の人々で永続的に管理していけるものを作るために、医師である先生は思考を巡りに巡らせ、その手でユンボを操縦し、米英軍からの止まない砲撃のなか、作り上げた。

もちろん、先生を中心とする邦人メンバーや、現地で雇用したスタッフ、自分達の生活全てをかけて作業する農民の方々、ペシャワール会に寄せられたら募金(約16億円)、、どれが欠けても成功しなかった。作業中事故で怪我をしたり亡くなった人もいて(誘拐されて殺害された人も)、それでもやり抜き、結果現地の方の生活まるごとを救ったのだ。

印象的だったのは、9.11の約1ヶ月後、国会での参考人招致。日本政府は米英にならって、自衛隊派遣をしようという段階。
先生が「自衛隊派遣は有害無益。アフガン難民の飢餓解消を!」と訴えるも、代議士に発言取り消しを要求された場面。
憲法第9条に守られていた、と先生はよく言っていた。武器を持たない、戦わないことが、平和を維持するにあたってどれほど大切か。

「独裁体制から民主主義へ」(ジーン・シャープ)の、逆をいくような今の世界。

「平和とは理念ではなく現実の力なのだ」

Wikipediaで中村哲先生を調べると、自民党の空虚なコメントに対して、共産党の前代表、志井和夫さんだけが、先述した参考人招致の際の出来事に触れていた。
聞き慣れた「テロに屈するな」という言説に屈してはいけないよな、と改めて思う。

0
2024年02月08日

Posted by ブクログ

いつか読んでみたいと思っていた中村哲さんの著作にようやく触れる機会が得られた。
灌漑事業に関する専門的な説明は理解が追いつかないところが多かったが、本書の核はそこではない。
縁に導かれてとしか言いようのない経緯でアフガニスタンでの治水事業に当たられた中村さんの行動の数々。そこに込められた思い。
至誠にして動かざるものなし。
この言葉が真実なのだなぁと実感する。

我が身を振り返って、恥ずかしい限りではあるが、少しでもこういう無私・至誠の境地に近づきたい。

0
2023年09月08日

Posted by ブクログ

中村哲さんが、アフガニスタンで用水路の建築にあたった30年を振り返った書。

用水路の仕組みや建築の技術、地学的な部分などは私の知識不足、理解力不足のためよく分からなかったが、中村さんがどのような思いでこの事業にあたっていたがが、強く伝わってきた。

中でも、報道されていることや、一般的な常識論がいかに表面的なことか、一時的に表面的に関わって、それが全てであるかのように語ることがいかに愚かしいことかを、現地の本当の声、姿、そこに生きる人々の事を知る中村さんの言葉から痛感した。対岸から見る第三者の、なんと身勝手なことか。

砂漠の地が緑豊かな地になっている写真が多数。これを成して更に自然への畏敬の念を新たにする中村さんの全てに敬服する。

0
2023年05月25日

Posted by ブクログ

中村さんについては、逝去された際のニュースを微かに覚えている程度でした。「アフガニスタンに国際協力で多大な功績を残された方が不幸なかたちでお亡くなりなった」その程度の認識しか持ち合わせていませんでした。

本当に大人物であったのだと本書を読んで認識を改めました。残された功績は言うに及ばず、異文化に対する深い理解、自然と人間の関係性に対する堅固な思想、困難を乗り越える忍耐力、自身の知識を常に更新する柔軟性、これらを持ち合わせて変化を生み出す為の行動を起こせる稀有な方だったのだと思います。

一点最後まで分からなかったのは、何が中村さんをここまで突き動かしたのかです。哲学にも造詣が深い方のようなので、芯になる考え方が何かあったのでしょう。内村鑑三の著作など、本書で述べられた幾つかの本にヒントがあるかもしれない為、読んでみようと思います。

改めてご冥福をお祈りすると共に、中村さんが持たれていた気概の一端でも自身が持てるように努めます。

0
2023年05月05日

Posted by ブクログ

中村さんのアフガニスタンでの活動がよくわかった。義理堅い人だったのだろう。
彼の生き方は尊敬に値する。医者でありながら、飢餓は救えないため、用水路を作り、自給自足の生活を支えた。筑後川の山田堰を参考にしたのは驚きだった。

0
2023年04月04日

Posted by ブクログ

文章は決して上手くなく、後半の井戸掘り関連は専門的でもあって読みにくいが、現地に根付いた支援活動をベースにした鋭い視点とコメントが素晴らしい。写真も多く使われていて、砂漠を緑化して農耕地にしていった実績も圧巻の一言。
見習う、学ぶことの多い書。

0
2022年10月29日

Posted by ブクログ

読書する良さを改めて感じられた一冊。
生涯行くことのない場所での、することのできない経験を少しでも知るために私にとって読書は欠かせないものです。

これまでアフガニスタン情勢については、テレビのニュースで部分的に見聞きする程度でした。
でもやはり、与えられる情報だけで知った気になるのは大変恐ろしいことだと思いました。
この本に記されている中村氏の視点が全てではないでしょう。
違う国籍、立場から見たらまた異なるアフガニスタンが見えてくるのかもしれません。

この本では主に用水路の作り方が記されています。
しかしながら、その行程を読み進めるとアフガニスタンの自然環境だけでなく政治的状況、人々の考え方も垣間見ることができます。
中村氏は自然に対しても、人に対しても決して力業で事を進めることなく相手を理解し、尊重していく姿勢を貫きます。
これは普通の生活を送る私達にとっても基本的、かつとても大切なこと。その理由がこの本を読むことで心から理解できると思いました。

「世の中は相変わらず『経済成長』を語り、それが唯一の解決法であるかのような錯覚をすりこみ続けている。経済力さえつけば被災者が救われ、それを守るため国是たる平和の理想も見直すのだという。これは戦を図上でしか知らぬ者の危険な空想だ」

「知識が増せば利口になるとは限らない。情報伝達や交通手段が発達すればするほど、どうでもよいことに振り回され、不自然な動きが増すように思われて仕方がない」

「戦場に身をさらした兵士なら、発砲しない方が勇気の要ることを知っている」

「経済的利権を求めて和を損ない、『非民主的で遅れた国家』や寸土の領有に目を吊り上げ、不況を回復すれば幸せが訪れると信ずるのは愚かである。人の幸せは別の次元にある」

レビューを書くのが難しいので、終章の中で特に心に残った文章を抜粋します。
中村氏は物書きではないので、いささか読みにくさを感じるのは事実ですが、それ以上に読む価値がある一冊でした。

ご冥福をお祈りします。

2020年6冊目。

0
2022年09月10日

Posted by ブクログ

本当にすごい人すぎる。心から尊敬、中村哲先生。
日本からでは、現地の声や状況はわからない。
マスコミの報道は偏っているんだなと改めて感じる。
綺麗な水が、いかに大切か。医療よりもさきにやることがあるからと、
医者であるのに自ら井戸掘りに用水路をひくことに率先して行動。
その様子を淡々と綴られているのだけど、並大抵のことではない。
これらの事業に人生を捧げた中村哲先生だけど、ご家族はどんな気持ちだったのかと心配になる。
中村先生みたいには生きられないけど、自分のできる範囲でアフガニスタンを支援したいと思った。

0
2021年11月05日

Posted by ブクログ

中村哲さんは現代の偉人だ。

人間と自然に対する絶望を一心に引き受けながら、
人間と自然を裏切らず信頼し続けた人。

アフガニスタンの医療支援する医師でありながら、広大な砂漠地帯に、農業用水路や堰などを建設するなど、途方もなく壮大な人生だ。

氏はそれを英雄気取りせず、淡々と事実だけを書き記されている。
9.11すら日常の一コマのように思えた。

アフガニスタンでの飢えや貧困は、アフガン戦争、テロ報復戦争による被害だけでなく、地球温暖化による旱魃被害が大きな要因であるとはなんとも無慈悲だ。

「己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人のまごころは信頼に足る」

なぜここまで自分を捧げることが出来たのか?と思うけれど、氏のこの言葉が全てを物語っている。

0
2021年09月26日

Posted by ブクログ

■ まさに偉業!
-------------------------------
アフガニスタンでの活動がどういったもので、偉業を成し遂げた物語に純粋に感動した。

■ なぜそうなるに至ったのか?
-------------------------------
中村哲という方が、何故そこまで情熱を燃やし活動するに至ったのか?それは、ふとしたきっかけで現地の人々の苦しみに触れたからだと思う。
本当の意味で人を動かすのは、何かを達成するために行動をしようという打算的なものではなく、
そうせざるを得ない、感情の起伏や衝撃を元にしたモチベーションなのだと思った。

■ まず行動ありき
-------------------------------
現場に行き、行動をおこなさいと見えてこない情報や理屈がある。

0
2021年09月19日

Posted by ブクログ

「FACTFULNESS」を読み終えた後に手にした本なだけに、互いの距離感にギャップを感じ世界を見渡す視線の測り方、遠近感を養えた一冊。中村さんはじめ一人ひとりの命をかけたひとつひとつの積み重ねが世界を形ずくっているんだ・・・と考えさせられた。人類が文化の枠組みを超えて他の生物と本当の意味で共存し合える生命体になれる日はくるのだろうかと考えさせられた。この世に生を受けたひとつの人間としてこれまで巡り合った本から何を学び、何を育めるのだろうかと思いめぐらした。

0
2023年07月25日

Posted by ブクログ

立派な方であることはよくわかる。著者の経験は素晴らしいものであるゆえ、工夫すればもっとドラマティックにかけるとも思う。

0
2023年01月21日

「ノンフィクション」ランキング