中村哲のレビュー一覧
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中村哲さんによる、アフガニスタンの活動を主にした回顧録。
中村さんは「必要なのはカネや薬よりもまず水だ」という信念の元に、アフガニスタンに水をもたらすことを目指した。
そして試行錯誤しながら井戸や用水路を作り、凶弾に倒れるまで現地の人のために人生を捧げた。
なぜこんなに尊い生き方ができるのか。
医者だから、という言葉だけでは到底説明がつかない。
日々自分のことばかりで一杯一杯な自分とは大違いだ。
中村さんの言葉には心揺さぶられるものが数多くある。
それは現場に立ち、実際に汗を流して体を動かしていたからだと思う。
安全な地位から批判ばかりする評論家や、金のために薄っぺらい美麗辞句を繰り返 -
Posted by ブクログ
この人は宮沢賢治の「雨ニモマケズ」をそのまま体現していると感じた。医学や語学に堪能でありながら、それをひとつも自分のために使っていない。自分のことばかり考えている自分が恥ずかしくなった。狭い(セコい)考え方だからストレスが溜まるわけで、自分の世界も広く捉えることの大切さも学ぶことができた。
平和な日本からすれば地獄のような土地で、見ず知らずの人のために何故ここまでできるのか。本書の中でも説明はされているが、理屈ではないものを感じる。
亡くなったことは本当に残念に思うが、自分の仕事を見つけられたことは幸せだったように思えた。本当に惜しい人を亡くしてしまった。 -
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ネタバレ井戸を作っていたということぐらいしか知らない……。初めて読む中村医師の本。
第一章 ハンセン病根絶を目指して
最初は、ハンセン病撲滅のために活動していたという話。ハンセン病。病状が徐々に悪化していく病気と言う事と、見た目が悪くなることで昔は恐れられていて隔離されていたという話ぐらいしか分からない。ただ、この本を読むと靴……サンダルで病状が抑えられるという事が書かれていた。足。足からダメになるから、足を大切にということらしい。
第六章 開通した命の用水路
用水路が開通した話。利権のあれこれには苦労したという苦労話も。でも、こういう『水路』の話は上流側が有利で下流に行くほど不利になって、格差み -
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どこまでも透明で、限りなく研ぎ澄まされた言葉の数々。
理不尽や苦しみ、悲しみを幾度も乗り越えてこられたからこその悲壮な決意を秘めた言葉。
今できること、すべきことを見据えて、希望を失わずひたむきに行動していく精神力と静かな力強さに、励まされるような思いで読み進めました。
自分がニュースとして与えられている情報が、いかに脆いものなのかを痛感せずにはいれませんでした。
「物騒な電力に頼り、不安と動揺が行き交う日本の世情を思うとき、他人事とはおもえない。だが、暴力と虚偽で目先の利を守る時代は自滅しようとしている。今ほど切実に、自然と人間との関係が根底から問い直された時はなかった。決して希望な -
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セロ弾きのゴーシュ⁈読んで納得。
中村医師はアフガニスタン、パキスタンの根本的な生きるための手段をいち早く見抜いて行動した。まずは生きるために必要なことは何か、医療から水問題に取り組むことを誰が考えるか。教育や女子問題は生きてこそ取り組めること。
先進国での死生観ー長く命を繋ぐことー。生きること死ぬことを自然の流れとして受け入れることは日本人にできるだろうか。
海外支援は外国から来た、と言うだけで警戒されるという。その壁を少しずつ年月かけて無くしていったはずなのに、中村医師は殺されてしまったのか。
この先も中村医師の遺志がつながっていけばよいのだが。 -
Posted by ブクログ
自分自身が河川技術者であり、灌漑施設更新の施工監理の経験があるから、肝が河川からの取水部であり、あの施工の難しさを思い出しながら読み進めた。
そもそもは、キルギスに行くにあたり、中央アジアの本を読もうと、積読になってた中から選んだ。近い地域で、集中して読みたいと。
大正解。気候変動の影響はキルギスでもあり、山頂の万年雪が完全に解けるようになったらしい。アフガンの旱魃も同じ気候変動による。
世界のメディアや政治家達が、タリバン対世界という単純な図式で自分達の勝手な正義を吹聴している下、現実の世界では生きていくための様々な闘いが個人レベル、血族や地縁、渓谷レベルであったのだ。事実は自分から取