中村哲のレビュー一覧
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前半はページの上半分に現地活動の写真、下半分に文章という構成で、写真が大きいので現地の雰囲気がよくわかります。
後半は講演会場でのq&Aと、井上ひさし氏、福元満治氏を交えての対談です。
「私は日本の若い人たちに、何かアドバイスを、と求められると近頃は必ず、大人たちの言うことを、そのまま信じないように、鵜呑みにしないように、と答えていますね。あまりにも間違ったアフガン情報の氾濫に少々立腹しているからですが、さらに、私たち年寄りはやがて死んでいく、いなくなります、あとはよろしく、と半ば脅しをかけて締めくくることにしています。
アフガニスタンの山村で出会った、この子供たちに、同じことを言えるだろう -
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アフガニスタンの診療所からに続き。
先に概要を知ってから対談を読んだ方が、
理解が進むかなと思っての順番でした。
私には想像もできない活動をされている方、
どんな方なのかと思っていましたが、
応援せずにはいられない方でした。
冒頭は家族や両親など、
中村さんの生まれから始まりました。
祖父にそっくりな中村さん。
そこからアフガニスタンの話に入っていくのですが。
文面の中から、
目の前のことをコツコツと進めていくことの大切さ、
相手の未来を想いながら行う現在の活動、
さらにアメリカや日本、他国の干渉、
それらに振り回されるアフガニスタンについて。
現地を見ているからこそ重みのある言葉で -
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今月初旬に、Xで中村哲さんが話題に上っていたのを目にしました。
お医者さんで、砂漠に森を作って、最期は武装勢力の凶弾に倒れてしまった方だというくらいの認識しかありませんでした。
そこでもう少し詳しく知りたいと思い、手にした本です。
「農村の回復なくしてアフガニスタンの再生なし」
この信念から、「緑の大地計画」が開始されました。灌漑用水事業には、江戸時代に作られた、福岡県の山田堰という取水口が参考にされたとのことです。
数100年前の事例に着目して、用水路を現代に作るという発想に驚かされました。
また、中村さんが繰り返し述べておられますが、これらの事業は日本にいる支援者・現地住民など、 -
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■評価
★★★✬☆
■感想
◯初めから強い志があってなにかに熱中する人も素敵だが、中村さんのように成り行きのような縁に導かれて力を尽くす人の姿も素敵だなと思った。
◯本書は治水工事に対してかなり詳しく書いてある。現在のアフガンの人に思いを馳せるのもいいのだが、参考にした日本の治水技術を試行錯誤でしていった江戸、それより前の人達に思いを馳せるのも面白いと思った。
◯アフガンを苦しめている最大の原因が、戦争や貧困ではなく「大旱魃」ということを初めて知った。それの原因をたどると環境問題に行き着き、それに加担している先進国の一人間として、申し訳ない気持ちになった。 -
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NHK「ラジオ深夜便」番組内での、中村哲さんへのインタビューの肉声を忠実に再現したものです。
おそらく、自分には想像もつかないような苦労や理不尽、恐怖などもあったのではないかと思うのですが、それでも、現地の人々に希望を見、ひたむきにご自身にできることを積み重ねてこられた姿があるからこそ、この言葉があるのだなと感じずにはいられません。
とてつもなく大きな問題や目標を前にしても、長い目でコツコツやるしかない、という精神力はどこから生まれるのだろう、と思いました。
また、中村哲さんが日本に一時帰国されたときに感じた、「みんな不満に溢れている。……景気がいいときには、困っている人のことなんかあま -
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わたしはセロ弾きのゴーシュって、どういう意味だろう。そもそもセロ弾きのゴーシュって昔、教科書かなにかで読んだ気はするけど、どんな話だっけ?と思いながら読んだ。
まぁぜんぶが、セロ弾きのゴーシュがらみじゃないんだけどさ。具体的な活動を、会話の中で、わかりやすく読ませてくれた。
紛争地帯での活動は、よほどの使命感がなければできないと思う。どれほど立派な人か、と思うところだ。もちろん、立派な人だと思う。そのうえで、そこに至る道には外からの働きかけがあったということを、セロ弾きのゴーシュというのは、なかなか秀逸なたとえに思えた。とはいえ、呼ばれたからって、なかなか応えられないよね、そこはやっ -
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2年前、「荒野に希望の灯をともす」を映画館で観た。泣いて泣いて、今でも、何故もうこの世界に先生はいないのか、と思って泣きそうになる。
自分が知っている人間のなかで、本当に心から尊敬している人。
映画の内容をより詳しく、先生の心情も交えて描写されており、特に書籍ならではだと感じたのは、ガンベリ砂漠(死の谷と呼ばれ、旅人を葬り去ることで有名な砂漠)を開拓、全長25メートルに及ぶ灌漑用水路を建設したときの話。
図解が豊富に示され、旱魃の原因、水の流れをどうやって作るか、洪水にも耐える設計、使う資材(現地で調達できて、壊れたら直せるようにする)、防砂林として植生する木の種類(固有植生の考え)などなど、 -
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岩波現代文庫
中村哲 「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」
インタビュー形式で アフガニスタンの現実や自身のことを語った本。
アフガニスタンのエピソードだけでなく、幼少期や家族の思い出や死、影響を受けた本や宗教などのインタビュー。自伝に近い
自衛隊のアフガニスタン派遣について、対米追随により現地の日本人を危険に晒していると批判。国会に呼びつけといて、批判を取り消させる国会議員の態度は 残念
「人間とは関係である〜その人とある対象との響き合いの中で自分というのは成り立っている」
「組織というのは、ある事業を遂行するためのもの〜事業が成し遂げられれば、組織が続くか続かな -
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中村哲さんが、アフガニスタンで用水路の建築にあたった30年を振り返った書。
用水路の仕組みや建築の技術、地学的な部分などは私の知識不足、理解力不足のためよく分からなかったが、中村さんがどのような思いでこの事業にあたっていたがが、強く伝わってきた。
中でも、報道されていることや、一般的な常識論がいかに表面的なことか、一時的に表面的に関わって、それが全てであるかのように語ることがいかに愚かしいことかを、現地の本当の声、姿、そこに生きる人々の事を知る中村さんの言葉から痛感した。対岸から見る第三者の、なんと身勝手なことか。
砂漠の地が緑豊かな地になっている写真が多数。これを成して更に自然への畏敬 -
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中村さんについては、逝去された際のニュースを微かに覚えている程度でした。「アフガニスタンに国際協力で多大な功績を残された方が不幸なかたちでお亡くなりなった」その程度の認識しか持ち合わせていませんでした。
本当に大人物であったのだと本書を読んで認識を改めました。残された功績は言うに及ばず、異文化に対する深い理解、自然と人間の関係性に対する堅固な思想、困難を乗り越える忍耐力、自身の知識を常に更新する柔軟性、これらを持ち合わせて変化を生み出す為の行動を起こせる稀有な方だったのだと思います。
一点最後まで分からなかったのは、何が中村さんをここまで突き動かしたのかです。哲学にも造詣が深い方のようなの