宮﨑真紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ〈アルゼンチンのホラー・プリンセス〉による12編の悪夢。幽霊や魔女、呪いといったガジェットが登場するゴシック調ホラーに描かれるのは、現実のアルゼンチンが抱える過去の傷と病理。本書全体に漂う倦怠感と閉塞感、絶望、そしてグロテスクなまでに生々しい生への渇望。
・小さな骨を庭から掘り出したことで赤子の幽霊に付き纏われる少女「ちっちゃな天使を掘り返す」。アンヘリータ(ちっちゃな天使)の望みとは一体何だったのか。
・少女たちの憧れと嫉妬が残酷な結果を招く「涌水地の聖母」。この"少女たち"というワードもエンリケス作品の重要な要素なのかも。
・住宅街に現れた酔いどれの老人はゴミを満載したショッピングカートを押していた「ショッピングカート」。呪い以上に怖いのは嫉妬……あるいはそれも呪いだったのか。
・家族旅行からの帰宅後6歳の少女は"恐怖"を知った「井戸」。異様なまでの恐怖心を抱えた少女が辿り着いた悍ましい真相。結末は収録作で最も惨い。
・5年ぶりにバルセロナを訪れた主人公が悪臭に付き纏われる「悲しみの大通り」。スペインも"陽光溢れる国"という顔だけではないということ。
・ホテルの展望塔に棲む"彼女"「展望塔」。正調ゴシック怪談を45度ずらして描いたーといった趣き。
・他人の心音に激しい興奮を覚える女性「どこにあるの、心臓」。フェティシズムの行き着く先。
・異様な自死を遂げたロックスター。熱狂的ファンの少女2人が彼の歌に従った行為とは「肉」。凄惨な聖餐。
・幻覚に苦しむ娘を撮影して欲しいとの依頼を受けた映像制作業の男が映したもの「誕生会でも洗礼式でもなく」。少女のいう"彼"とはエクソシスト的なものなのか、あるいは抑圧された精神によるヒステリーだったのか。
※正直、この3編はどうも好みでないw
・行方不明の子供たちの情報を管理する部署に勤めるメチは、ファイル中の美しい14歳の少女に強い関心を覚える「戻ってくる子供たち」。収録作中最も長い(といっても70㌻弱)作品。アルゼンチンの抱える闇と不条理が色濃く描かれ、現実の恐怖と超自然的要素が相俟って恐怖度は作中随一。
・自宅のベッドで煙草を吸い続ける女性のモノローグ「寝煙草の危険」。"倦み疲れる"という感覚が行間からじくじくと滲み出てくるような表題作は、超自然的要素はないが、本書で描かれた世界の肌触りと臭いを集約しているようにも―。
・友人宅でウィジャボードに興じ、行方不明者を呼び出そうとした少女たち「わたしたちが死者と話していたとき」。いわゆる"こっくりさん"テーマなので馴染みはあるが、半世紀前の軍事政権下で起きた大量の行方不明事件という史実が織り込まれることで、単なる怪談に留まらない怖さを帯びている。