鯨井あめのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「ラブじゃなくてライクだぜ!」
この一言だけで、八条と白山という最強コンビの関係性が伝わってくる。
笑いあり、ハラハラあり。
漫才を軸にしながら、サスペンスの緊張感まで味わえる、ページをめくる手が止まらない一冊でした。
読み進めるほどに、「誰が味方で、誰が敵なのか」が分からなくなり、予測不能な展開に夢中に。
そして何より魅力なのは、八条と白山のコンビ。
テンポのいい掛け合いと、互いを信頼し合う絶妙な距離感に、思わずニヤリとしてしまいます。
仕事のお昼休みに少しだけ読むつもりが、気づけば、仕事後、時間を忘れて没頭していました。
漫才が好きな人はもちろん、笑いだけでは終わらない物語を読みたい人にもおすすめ。
読み終えた頃には、きっとあなたもこの最強コンビ〈ノット・サウスポー〉の虜になっているはず。 -
Posted by ブクログ
わたしたちは日々迷惑をかけたりかけられたりして生きています。ただ一口に迷惑と言っても、色々な種類(あるいは背景)があり、様々な形式、レベルでの「許し」「償い」が必要とされます。本書の主人公は、迷惑が何かが分からなくなり、すべての迷惑を同質な「迷惑」で片付けようとし、それを単に「かけるべきではないもの」「かけられたくないから避けるもの」として退ける生活を送っています。一見クールで合理的に見えますが、そのことによって他人への興味を失っている状態となっており、本書によれば、それはすなわち「優しさ」を欠いた状態ということに他なりません。この背景には幼い頃に売れない小説家の父が最期の病床で「迷惑かけてごめん」という一言を放ったことに起因しています。この迷惑の意味がわからないまま、より正確に言えば、迷惑の意味がわからないという事態が何かがわからない、という中でもがき苦しむ主人公の青春に読者は寄り添うことになります。本書はその対応する許し・償いを探す物語です。
この死は幼い主人公にとっては突発的であり理不尽ですが、世の中には、様々な迷惑に対応する様々な理不尽が転がっています。理不尽が起きると、それに抵抗する形で迷惑が生じる。読者は主人公とともに、世の中に転がる様々な理不尽とそれに対する抵抗に直面し、迷惑の意味について考えていくことになります。
※ ※ ※
例えばトランスジェンダーに生まれるということは、誰が自分をそうしたとかではなく、相手のいない「迷惑」を受けていることです。わたしたちはそれに苦しむ。理不尽だ。したがってそこには抵抗が生まれる。相手がいないので、仕返しをすることもできないし、苦しみを屈曲させて犯罪を犯すことも許されません。それは迷惑の連鎖を生むからです。そこで、主体が非局在化した形で(誰がやったのかわからない形で)、客体も非局在化した形で(すべての人にあまねく)迷惑をかける行為を想定しなければなりません。著者がそこでテーマに選んだことが「クラゲ乞いをして空からクラゲを降らせる」ことだった。現実世界ではなんにあたるでしょうか。それは、本書で図書委員である登場人物からたくさんの小説が紹介されていることから示唆されているように、「書く」ということなのかも知れません。
-
匿名
ネタバレ 購入済み収録してる時期に工夫が見られる
メインとなる作品の時期の、さらにその前後の物語を描いたスピンオフ作品です。「きらめきを落としても」にて登場する重要なキャラクターの原作以前の経歴や背景、そして一方の原作後日談も収録しているというのが新たな試みかと思います。内容としては心が少し温まる感じがします。
-
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルに惹かれて手に取ったら、大好きなディストピア作品で期待を大きく上回る一冊だった。
沙に侵食されて70年が経った世界で、芸術が不要とされる中で音楽に魅了され、葛藤しながら道を進む少女の物語(前半)。
さらに70年後、娯楽が全て機械で供給される時代に、気象予報士を目指す少年が劇団と出会い、自分の在り方を問い直しながら成長する物語(後半)。
二つの時代がしっかり繋がっていて、読後感がとても心地よい、、、
残酷で美しい沙の世界の中で、自分の生き方や「人間らしさ」を必死に模索する少年少女たちが、とても煌めいて見えた。
刹那的で、胸に深く刺さる青春ディストピア。
今を不自由なく生きられている私にとって、ディストピア作品は「自由が奪われた中で、いかに自分らしく生きるか」「自分とは何なのか」を真剣に問いかけてくれる。
夢と希望に溢れた、青春ディストピアとして本当に素敵な一冊だった。 -
Posted by ブクログ
小説とクラゲと反抗のYA
この物語には、いろんな要素が含まれていると感じた。
総じて、気持ちの良いYAだと思う。
1.小説
登場人物の多くが読書家だ。実在する作家や作品の名前が多数登場し、それらに対する愛が語られる。
明治の文豪から、現代の作家まで。ジャンルを問わず、様々な作家や作品が紹介される。
もしここで気になる作品に出合えたなら、ぜひ実際に読んでみるといいだろう。
2.高校生がクラゲを降らせる
ここだけちょっとファンタジー。中盤から終盤にかけて、クラゲ乞いへの情熱が加速していく。
やっていることは奇妙だけど、仲間を増やしながらクラゲ乞いに取り組む姿は、まさに青春の1ページ。
3.主人公の成長
父親との過去の因縁がきっかけで、斜に構えて周囲の人との距離を取っている亨。
でも、いろんな出来事を経て、人とのかかわり方を見つめなおしていく。
特に、図書委員の矢延先輩は、さっぱりしていてかっこよく、亨を導いてくれる。好きなキャラだ。
4.反抗
本作では、世界・環境・大人などへの反抗が描かれる。
そして、それがクラゲの話題に直結するのだ。うーん、やっぱり奇妙かも笑 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「ひとりは、最も近くにいる、気軽にやってくる地獄」
「無関心であることは、人に優しくできないということだ。自分勝手であることは、感情の矛先を間違えるということだ。優しさの本質は他者への興味だ」
タイトルに惹かれて買った本だが、読後何とも言えないふわふわした感覚に陥り自分の心の中にもクラゲが降っているように感じた。登場人物がみんな優しい。主人公の亨は最初こそ他人にも自分にも無関心なタイプだったが、過去の父とのやりとりから人を傷つけたくないから無関心になっただけで、ずっと優しい。小崎ちゃんはクラゲを呼んでる不思議ちゃんかと思いきや、理由が余命わずかな親友との約束で世界に反抗するためだったのが切なかった。遠藤も関岡さんも真逆に見えて、実はとっても似てる2人だなと思った。そして、矢延先輩…こんな人が身近にいたらもっと本を読むのが楽しいしぜひ友達になりたい。
クラゲを降らせるのなんて突拍子もないと思ったけどそういった現象はちゃんとあって(ファフロツキーズ現象)、ファンタジー要素もありつつ実際にクラゲを降らすこと(しかも2回も!)あったのは結構グッと来た。こういうのは小説の中でも"起こらない"が多いと思うけど、小説はフィクションなんだから、起こり絵なさそうなすごいことが起きてもいいじゃないか!世界への反抗がクラゲを一日中降らせるなら、みんなが綺麗だと、少しでも空を見上げて今日はもう休もうか、と思えるような反抗なら、いくらでもあっていい。最高だ。
そして、この小説の中で知ってる本がたくさん出てきて、自分も語りたくなったし、知らなかった本は読んでみたいなと興味が湧いた!読書家の方ほど読むのが楽しい小説! -
Posted by ブクログ
小晴(こはれ)は小6。近くにある難しい私立中の受験のために塾に通っている。成績は良く、模試は常にA判定。満点の教科も多い。それ以外の日も英会話、水泳、ピアノと、習い事に忙しい。でも、自分の気持ちを表現することはおろか、気持ちを汲み上げることすら苦手。友だちは話が合わないし、携帯も持っていないので、いない。でも、この前たまたま見つけたクッキー缶に入っていたふしぎの街の地図で、本当にふしぎの街に行けて、そこには管理人を名乗るラッタッタだけがいた。ラッタッタには少し素直に気持ちを話せる。
これは、イマジナリーフレンドと自己表現の発現を組み合わせたふしぎで優しいお話。
ふしぎの街に行く過程で、なんでそんなことおこるのって波に乗れないかと思いきや、小晴のあまりの自分迷子の様子、そして、現世で超優等生ないいこっていうのにつられて、するりと読めました。小6で話が終わるのですが、ラッタッタと今後どうなっていくかという収束も良かったです。
ルビは4年から。191ページあるので、高学年以上向け。