鯨井あめのレビュー一覧
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学校 ★★★ 大人 ★★☆
陸上選手だった両親をもつ高校2年の定本風香。自身もスポーツ科に所属しインターハイ出場経験がある長距離ランナーである。しかし膝の故障で無心に続けてきた走る意味を見失ってしまった定本は『走れメロス』を読んで、走る理由を見つけようとする。ただ今まで本と無縁で読み始めると眠たくなり、なかなか読み進めることができない。
そんなとき司書室で出会った小説家を目指す明戸類に小説のモデルにさせてほしいと頼まれ、明戸の家のブックカフェに誘われる。
一方、明戸はモデルを頼んだ以上ハッピーエンドを書いて定本の理由になると意気込むが、実は明戸はすべてバッドエンドで終わってしまう小説しか書け -
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怪我をきっかけに走ることの理由を探す陸上部のエース定本風香と物語は人を救うと信じている小説家志望の明戸類の2人の友情物語。
読書好きというよりも小説家になるという強い志しを持っている類は、強気でズバズバと言いたいことを言うタイプで、風香はマイペースで真面目なタイプで全く正反対で交わることのないままかと思っていたが、類が風香をモデルに小説を書くということから2人の距離が近くなる。
類と関わる人たちやその交流からも人生とは何かを深く考えることになる。
悩ましい年代だからこそ思いはいろんな方向に触れたりするが、結局は「自分と陸上」「自分と小説」に真剣になれたのだろう。
出会えてなければ気づかなか -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界が沙(砂)で埋まりゆく、2部構成の物語
あと20年しか世界が存在しないなら、自分はどうするだろう
今の延長線のような生活を続けるだろうか
助かる道を必死に探すだろうか
それは自分のためにか、大切な人のためにか
物語の1つ目は遠い未来へ音楽を残すことが、主人公の存在証明
人の身体は水を湛える器であり、その身体に魚を泳がせる
水がなければ、魚は死ぬ
音楽は魚に似ていて、この瞬間の刹那的産物
2つ目はやりたいことがない、主人公の葛藤
自分が選択したことに意味があり、それに自信をもつこと
いつの時代も同じような悩みをかかえる人たちがいるて、ひとりではないのだと
人は不完全だからつながり、対話 -
Posted by ブクログ
大好きな『四畳半神話大系』(以下、四畳半)が出てくると知り、ウキウキで手に取った本。似たような文体なのかな、同じようなストーリーなのかな、と淡い期待に胸を躍らせ読み進めていくと、アラ不思議。
汚い汁を汚い汁で洗う、不満ばかりで閉塞感のてんこ盛り、けれども憎めない〈私〉の姿がどこにもない!そこにいるのは、孤独で達観し(た気になっている)、斜に構えた男子高校生だった!!
どうしてか彼に共感めいた感情を抱いてしまう。それはきっと、僕も彼と同じように生意気な高校生だったからに違いない。自分が正しいと信じて疑わず、猪突猛進、叩かねば渡れない石橋を駆け抜けてきた。
若さゆえに何とかなった部分もあっ