あらすじ
沙に覆われてしまった世界。人々は何よりも安定を目指すようになっていた。
安定した仕事で稼いで、機械で娯楽を享受して、どこに遠出することもなく、安全で、快適な、この街で、ささやかな幸せが至上。
それでも音楽が好きな少女・ロピは第9オアシスでパパと二人で暮らしている。親友のエーナや周りの大人に反対されながら、自分の音楽を追い求める。
特にやりたいこともない少年・ルウシュは、母と同じ気象予報士になるため日々勉強していた。いっぽうで好きなことに一生懸命な友人に劣等感は強まり、夢中になれることを探しはじめ……
青春小説の旗手が将来に悩むZ世代に捧ぐ、傑作のディストピア長編。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
①私は、芸術が関わる作品を読むことが好きなので、「世界が砂嵐に覆われ、芸術は機械が創るものになった__」という帯に興味を惹かれ、読んだ1冊。
私自身、芸術を機械が創るということには、反対の立場を立っており、本作ではどう描かれるのかを楽しみに読んでみた。
②「やりたいこと」に突き進むか。
「やるべきこと」を全うするか。
これは、本当に悩んでいるも多い問題でもあり、どちらの主人公にも共感できることがあって、Z世代である私には、かなり刺さる話だった。
Posted by ブクログ
2024年の新刊本はコロナが出てくる本がとても多かったのですが、この本には出てこなかったこと、
コロナ禍を通して音楽や芸術が『不急でも必要な物である』と感じた時に出会った作品であったことから、2024年で最も印象に残った本となりました。
沙で埋まっていく世界で、人々は現実的な仕事に就くようになり、音楽や芸術作品はAIが作るようになった世界。
そんな世界でも自分で作曲をし、音楽を仕事にしたいと思う少女。
気象予報士を目指す少年。
沙害にも負けずに生きていく姿に感動しました。
Posted by ブクログ
沙に世界が埋る終末的な世界で音楽を愛する少女と、やりたいことがある人たちを羨ましく思う少年が時空を超えて芸術で繋がるディストピアな物語。 独特な文章が少し読みづらいけど、それが物語の世界観にぴったりと嵌まっていて必要なパーツだと思う。 SFに学習能力の障害と誰もが悩む進路問題を絡めているように感じた。 AIが開発されスマホがあれば便利になったけれど、いつまでも紙で本を読みたいし、美術館へ足を運んで遺された芸術を見て感じたいと思う。 便利さと不便さを上手く自分の中で共存させたいと強く思った。
Posted by ブクログ
一気に通読。芸術やエンタメが、既存のもの、機械が作るものばかりになった世界で、それでも新しく自ら作り続ける人たちの物語。今年のベスト本は「水車小屋のネネ」だったけれど、これも甲乙つけ難い。皆さんもよければ、手に取ってみてください。
Posted by ブクログ
沙で覆われた世界。一つの音楽が一つの肺魚が繋がっていく。語り口も綺麗で情景も浮かびやすく読みやすい内容になっている。登場人物はみな悲観せず夢や希望を持っていた。楽しめましたよ。
Posted by ブクログ
沙(砂)に埋もれていく先々が危うい国の中で「やりたいこと」「やるべきこと」について考えて成長していく人々の物語りだったと思います。主人公はもちろん、登場人物それぞれの心情描写が丁寧になされていると感じ好印象でした。
二部構成でしたが第一部途中に読み疲れて断念しようと思ったのですが、通読してみて良かったと感じます。星4つです。
Posted by ブクログ
やりたい事があって、選べる自由がある。
だからこそ、選択する難しさがある。
自由なような、不自由やような、そんな社会は、どんな時代にも共通なんだろうな。
地球の終わりが見えたなら、やりたい道を進めるだろうか。
Posted by ブクログ
地球には沙(すな)が降り積もるようになり、嵐に巻き込まれると遭難することもある。人々は小さく残ったエリアに集中して住み、地域を電車が繋ぐ。天候荒れなければエリアの外を歩いたりすることも可能。そんな世界では音楽など想像する芸術を生み出す能力が衰退し、AIがかなでる昔の音楽やAIの創作に頼りきっていた。
世界観に浸り混むのが少し難しく、世界観の答えもあまりない、設定がフワッとしていた。でも、この中で作り出された2人の生き方には引き込まれていった。1人は音楽に生きたくて、1人は詩を紡ぎたい。2人の世界は同じ場所やある音楽で繋がっていく。純粋な生き方に同調させられながら世界に入り込んでいく小説だった。
基本は中学校から。特に問題となる内容ないので、読めるなら小学生でも大丈夫。
Posted by ブクログ
砂が埋め尽くす世界、人々は安定を求めて生きるようになった。終わりが来るいつかまで、静かに、安全に暮らしたいと。
やりたいことに生きるか、やるべきことを全うするか、二人の青春を2部構成で追う。
終末世界になっても、やりたいことばかりできるわけではないのが切ない。
Posted by ブクログ
お気に入りの作家、鯨井あめさんの4冊目の著作。
世界が“沙”に呑み込まれようとしている未来が舞台だ。その状況に打つ手はなく、世界はゆるやかに終末へと向かっているが、人々は日常の暮らしを続けている。特筆すべきは“クリエイター”と呼ばれる機械の存在だ。過去のデータを基に、AIがあらゆる分野で好みの作品を提供してくれる。
そんな世界で音楽を創りたいと願う少女と、詩作の才能を持つ少年が主人公の2篇が収録されている。
終末世界と日常生活のイメージがなかなかうまく噛み合わず難儀したが、ある瞬間にふっと入り込めた。よかった。
Posted by ブクログ
ディストピア小説とは近未来に沙に埋まってしまった地球に生きる2人の主人公、演奏家、気象予報士をめざす2人、沙の驚異にもめげず2人の挑戦が素晴らしい。レコードとギターが物語のアクセントとなり大傑作の誕生です。あなたも読んで異世界物語を堪能して下さい。
Posted by ブクログ
世界が沙(砂)で埋まりゆく、2部構成の物語
あと20年しか世界が存在しないなら、自分はどうするだろう
今の延長線のような生活を続けるだろうか
助かる道を必死に探すだろうか
それは自分のためにか、大切な人のためにか
物語の1つ目は遠い未来へ音楽を残すことが、主人公の存在証明
人の身体は水を湛える器であり、その身体に魚を泳がせる
水がなければ、魚は死ぬ
音楽は魚に似ていて、この瞬間の刹那的産物
2つ目はやりたいことがない、主人公の葛藤
自分が選択したことに意味があり、それに自信をもつこと
いつの時代も同じような悩みをかかえる人たちがいるて、ひとりではないのだと
人は不完全だからつながり、対話し、助け合い、気にかける
とても考えさせられる内容でした。